第23話
「なんでこんなことにいるんだ騎士サマ。探していた人は見つかったのか?」
「まだだね」
「じゃあなんでこんなとこにいるんだよ、猶更。さっさとここから離れて探しに行った方がいいんじゃないか?」
「ま、そうだね。でも、任務だから」
「ふぅん」
バラガルーザは死に体でもう敵対することは無いだろうが、まさか立て続けに戦う羽目になるとは。
……外の奴らはどうしたんだろう。ふと、それが脳裏に浮かび上がってきた。
一先ずこいつを何とかしないといけないな。
「任務って、裏切り者の始末に来たのか?」
「裏切り者……あぁ、バラガルーザさんのこと?確かにそれもあるけど」
そう言って彼は鍔迫り合いをやめて後ろに下がった。出入り口をふさぐようにして。
そして再度剣を構えなおした。
「やっぱり邪魔なんだよ。ミヤビ組は」
「へえ」
どこからカチコミのことが漏れたのか。メイカもその疑問に至ったのか、険しい表情で騎士サマを睨んだまま、静かに剣を鞘から抜いた。
このまま彼を殺すつもりなんだろうが……メイカの今の実力じゃあ無理だ。今の数合の打ち合いで分かってしまった。
奴との戦闘を避けることを優先しないといけない。だがここから逃げられたとして、こいつ以外に騎士がいないとも限らない。現にこいつとは別の気配が部屋の外から感じるのだ。
そうなると第三王子が失踪したってのも嘘なのかもしれないな。あえてミヤビ組にその情報を掴ませて、更に忘我団に葉っぱを流す。
多少の違和感は残るが、騎士共が裏で動いていたのだとしたら。面倒の事この上ない。
─────騎士サマがいきなり距離を詰めてきた。
「っ」
「やっぱ無理か」
だがずっと動きを警戒していた俺は、十分に対応できた。即座に剣を彼の剣にぶつける。火花をいくつも散らしながら、俺たちはいくつも斬り結んだ。
奴が攻めの剣筋だとしたら、俺は守りの剣筋だろう。何を守ってるのかはもちろん俺の命だ。一瞬の油断も隙も無い、ただただ力強く、愚直な剣筋。
バラガルーザの時とはまた違う緊張感。奴と戦っている時以上に感じる命が握られていると錯覚するほどの圧。
「こんな時に笑うなんて、相当狂ってるね」
「お前が言うか」
「確かに」
まるで数年来の友人のように互いに笑い合うが、やってることは殺伐としている。部屋中を走り回って機会を伺いつつ斬り合っているが、この部屋、少し狭いな。
場を移すか。
「メイカ!」
「……何!?」
「一旦戻って伝えて来てくれ!」
「私も一緒に─────」
「こいつは俺一人で何とか出来る!」
「……分かった!」
俺の意図を察した彼女はすぐにこの場を離れる。それを騎士サマは阻止しようとしたが、俺がそれを阻止した。
「おや、舐められたもんだね。僕がバラガルーザよりも弱いなんて」
「いや、舐めてないさ」
「その心は?」
「竜眼が開いている今だったら、バラガルーザは20秒で殺せた」
「そうか。それほど、その目に信を置いてるんだね。邪竜の子」
「もうこの国にはいられないな。それがバレちゃあ」
「仮面を外してるからだろ?」
「違いない」
ふとバラガルーザがどこか気になって辺りを軽く見回したが彼の姿はもうなかった。既にここから避難したらしい。まだその分の体力が残ってたのか。しぶといジジイだ。
それを騎士サマも気づいたらしく、舌打ちを打っていた。
「逃がしたか」
「あ、やっぱバラガルーザが狙いか」
「そうだね。もうこの際だし色々話しちゃうけど、僕の目的は奴の殺害だ。あいつは手を出してはいけないものに手を出してしまったからね。そのツケを貰いに来たんだ。そしたらなんかカチコミ喰らってるし、しかもそれをしてるのがミヤビ組だろ?両方潰せるチャンスじゃないか」
「へぇ。ってことはお前のお仲間は今」
「そう。予想通りだよ」
最悪だ。今頃メイカは他の騎士と殺し合いをしてんだろうな。あと組長も。
こうなると、彼らが助かる可能性は少なそうだ。
これでミヤビ組の壊滅、か。呆気なかったな。
「……はぁ。だったらますますこの国から出ないといけないようだな」
「させるとでも?君は今この国では極悪人で有名なんだよ?」
「邪竜の子として、だろ?」
「そうだね」
「俺がこの国にはいない方がいいんじゃないか?」
「そうだね」
「だったら他国に行くのだって別にいいじゃないか?」
「駄目だね。君は死なないといけない。どこか別の土地で生きている事すら許されてないだよ」
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