第2話 燃え上がる日
焔が魔獣の首を切って倒した。
すると、魔獣から、紫の揺らぎが立ち上り、普通のクマに戻った。
皆が、焔の勝利に歓声を上げる中、ドン・ガマラが魔獣に近づき、観察する。
「こいつはツキノワグマだ。」
焔も熊の方を見る
「ただのツキノワグマなの?」
「ああ、ただの熊だ。」
「魔獣は初めて見ますか?」
一人の王国騎士が、聞いてきた。
「ああ。この町に魔獣が出たことは一度もない。それにしてもこいつはどういうことだ。魔獣がただの熊になっちまったぞ。」
「魔獣は、先ほども申し上げた通り、獣に負のエレルギーが蓄積して生まれたものです。倒してしまえば、負のエネルギーが体から抜け、元の動物に戻ります。」
ドン・ガマラは頭を抱える。
「しかし、焔の嬢ちゃんがいたから何とかなったものの。この村に魔獣が出るとなると、嬢ちゃんがいなくなるのは不安になるな。」
「ご心配なく!このことはすぐに王女様にご報告し、魔獣用の武器を支給してもらいます。おそらく、猟師の皆様も魔獣用の武器が手に入れられるよう支援してくださるはずです。」
「そう。なら、私がいなくても安心だな。あそこの王女様の仕事は早いからね。」
焔は、先ほどまで魔獣と一人で戦たとは思えぬほど冷静だった。
「それはそうと、騎士さん。この熊は食べれるの?」
「おい、焔の嬢ちゃん!よくさっきまで、負のエレルギーをため込んでた獣を食べようとできるな!」
「だって、せっかくこんなに大きい熊が捕れたんだから。楽しまなきゃ損でしょ。」
この村では確かに熊は貴重な食糧だった。しかし、魔獣が現れたことのない村では、その勝手がわからなかった。
ドンからすれば、そんなゲテモノ同然の物を、いきなり口にしようとする年頃の女が目の前にいる者だから呆れてしまう。
「問題ありませんよ、焔殿。魔獣は死んでしまえば負のエレルギーは完全に抜けます。我が国の王国騎士も遠征などで魔獣を運良く倒せれば、食料にしています。」
「だってさ。どうする?ドン・マガラ?」
ドンは、ため息を漏らす。
「はぁ・・・お前ら!熊の解体だ!今日の宴の飯にでもしてしまえ!」
ドンは村のみんなに向かってそう叫ぶと、歓声が起こり、猟師全員であっという間に解体してしまった。
その日の夜
村の中心で、宴が開かれた。
もちろん、私、焔の誕生日&お見送り会。
小さな村だが、村人やさらに王国騎士団のみんなが盛大に祝ってくれた。
私は、もともとよそ者だが、この賑わいようを見ると、村の人たちにちゃんと貢献できて、信頼されたのだと実感する。
酒や、豪華な料理、昼間に倒した熊がたくさん並んでた。
大人も子供もどんちゃん騒ぎ そんな中、私は猟師のおじちゃんたちに絡まれていた。
すると、村長が声を上げる。
「みなさん!お話良いですか!」
村長は穏やかそうな顔の白髭がトレードマークのおじいちゃん
皆に慕われ、仕事ができる。
口が悪いドン・マガラも頭が上がらない人物だ。
そのため、どんなにどんちゃん騒ぎが起こっていてもみんな一瞬で静かになる。
「今日は宮本焔さんの20歳の誕生日だ。この村に来てくれてから、この村には欠かせない存在になった。しかし、彼女は明日大きな目標に向かって旅立つ。とても寂しいが盛大に祝おうじゃないか!」
村の男どもが雄たけびを上げる。始まってまだそんなにたってないのにもう出来上がってるのか?
私はついついクスリと笑ってしまう。
「なんと、焔さんのために、王国の王女様から祝いの酒も届いている。」
そう言うと、木のジョッキには似合わない高そうできれいなお酒が配られた。
「では、ここで主役に乾杯の音頭を取ってもらおう。」
村長は私に、ウインクをして音頭を促す。
なんともお茶目なおじいちゃんだ。
私はゆっくり立ち上がり皆の顔をゆっくり見渡した。
「みんな、ここまで私を育ててくれてありがとう。ほんとに感謝してる。」
そういうと、村の男の一人がガヤを飛ばす。
「ほんとだよ。始めは目が怖くて殺されるかと思ったぜ!」
するとみんなが吹き出し、大笑いする。
あぁ、ホントに私は愛されてるな。
「ゴラァ!おまえら!嬢ちゃんの話を聞かんか!」
ドンは酔っているのかいつもより、語気が強い。しかしその様子にさらにみんな大笑いする。
「私は明日、旅立つ。」私の大切な場所を奪った男に復讐をするために
「だけど、必ず戻ってくる。」生きていれば
「だから、それを祈っててください。乾杯」
次の日の朝
私はライダーズパンツに、上は白色の和服といういつもの服装に、エンジン剣をもって、村の入り口に立っていた。始めはセラとセラのお母さんだけが見送りに来るはずが、だんだん人が集まってきて、結局全員が見送りに来てくれた。
「みんな大丈夫?こんな朝早くに見送りに来てくれるのはうれしいけど」
「嬢ちゃんが旅立つのに二日酔いだなんだと言ってられんだろ。」
ドン・マガラが呆れたように言う。
すると村長もいつものにこにこした顔で言った。
「それだけ、君は村のみんなに愛されているんだよ。」
「私はただ、自分の居場所を守ってただけですよ。」
王国騎士団の小隊長が声をかけた。
「焔殿、我が王国、エンスタ王国にお立ち寄りください。我が女王様が、お待ちしています。」
「あの女王様も物好きだね。」
「ここの宴に参加できなかったのが相当ショックだったのか、ぜひ会いたいそうです。」
「分かった。すぐそこだし、寄っていくよ。」
「じゃあ、そろそろ行くよ。」
そういうとセラが私の袖をつかんできた。
「ねぇ、私もついて言ったらだめ?」
村人からどよめきが始めた。
村の大人たちは知っている。私が一人の男を殺す復讐の旅に出ることを
だから、セラを連れて行くのは危険だ。
セラのお母さんがセラを諭す。
「セラ、ダメよ。焔ちゃんの旅はとても危険なものなの」
「ごめんね、セラ。あなたを巻き込みたくないの。」
「いや!焔お姉ちゃんと離れたくない!」
心を落ち着けよう。私は人殺しの旅に出るのだ。そんなたびにセラを連れていけない。
何より戦いになれば私は心のリミッターを外さなければいけなくなる時も来る。
そんな姿を見せるわけには・・・待てよ?
「わがまま言わないの」
「でも!」
「いいですよ。」
「え?!いいの!」
「焔ちゃん?でも、セラは邪魔になっちゃうかもしれないよ。」
「おばさん。私なら大丈夫です。セラにとっては世界を見れるいい機会です。それに、私にとってもプラスになるかもしれない。」
心配そうなおばさんに目を見て言う。
「私が彼女を守ります。絶対に」
すると、しばらく私の目をおばさんは見つめていたが、ため息をついて
「・・・分かったわ。セラ、くれぐれも危ないことがあったらすぐに逃げるんだよ。そしておねえちゃんのいうことを聞くこと。分かった?」
「うん!」
私はセラと手をつないだ。
「じゃあ、これからもよろしくね。セラ」
「うん!」
満面の笑みを浮かべて私を見つめる。この笑顔を守らなければ
「じゃあ、みんな、行ってきます。」
「いってきまーす!」
そういって私たちは歩き出した。
「気を付けるんだよ!」「ちゃんと飯食えよ!」「女王様によろしくお伝えください!」
皆口々に激励を飛ばす。
私は期待とプレッシャーと憎しみを背負って旅に出た。
私は最低だ。セラを生贄にしたも同然だ。
私はおそらくあの男に会うと感情を殺せない。
あの人の言葉を思い出す。
「その武器を使っているときは感情をコントロールしろ。出来ないとおまえは、ただの化け物だ。」
だけど、セラがいるなら、私はこの子を守るために思考をさける。
冷静でずっといるためにセラを巻き込んだのだ。
だから、絶対に守って見せる。
絶対に殺す。私の居場所を奪ったあの男を!
必ず
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