現代社会に降臨した悪魔ですが、自分の姿に恐怖してくれません ~どうしようかと考えた結果遊園地を経営しようと思います~

アスパラガッソ

第1話 ~降臨~

 ~日本のどこか路地裏~


「うぅ…ここは、どこだ?」


 あやつめ、我の降臨は確かにダークで不気味な場所と指定したが、これでは薄暗くてジメジメした場所ではないか。

 とにかくここがどこかを確認しなければ…そういえば日の本に送るとあやつは言っていたな。


「まじうける、ほんとにその仮装にしてきたの?」


「はぁ?お前がこの恰好で来いって言うから、これで来てやったんだぞ?」


「おもしろってかさぁ~」


 誰かの喋り声が聴こえるが、なんと言っているんだ?

 とりあえず声のした方に向かうとするか。


 うっ、眩しいな…さっきの場所とは全然違う、光が多いせいで目が痛い。

 少し魔界に雰囲気が似ているな、それに皆魔界にいる種族に似た格好をしているな、だが気配はしっかり人の子だ。


 もしかしたらこの地ではそういう行事があるのかもしれないな、しかし初めて見るモノばかりだな、住む地が違うだけでこうも違ってくるとは驚きだな。

 いやいや、何を驚いているんだ…我の目的は新天地で恐怖や絶叫の感情を取り込む為なのだ、我がその感情を出してどうする。


「あっすいません自分街頭チャンネルの質問者って言います。今日はハロウィンの仮装についてインタビューをしてるんです!貴方の仮装は…もしかして悪魔ですか?良くできてますね!ご自身でお作りになられたんですか?その角も立派ですね!」


 発音のニュアンス的に問いかけか?地獄の言葉が伝わるはずが無さそうだしょうがない、えぇと確か断る時のジェスチャーを覚えさせられた気がするな。

 あぁそうだ、こういう時は笑顔で中指を立てたらいとあやつから教わったな。


 そして我はとびきりの笑顔で、自信満々に中指を立てたのだが、何か小さな板を持った人間は、びっくりしたような顔で何かを言い、どこかに行ってしまった。

 もしかしてこのジェスチャーは古いのか?あやつは古い物好きだからな、きっとそうなんだろう。

 降臨の道具だって千年前の掘り出し物だって言ってたし、そこから得られた情報も古いだろうな。


 そういえば我の姿を見ても誰も驚かないな、魔界では道行く魔族に声を掛けられる、いわば人気者ではあるのだが…やはりこの地では我は浸透していないのか。


「それならどうやって恐怖などの感情を吸収しようと言うのだ?当初の目的としては、我の姿を一つ表に出せば人の子らは恐怖し、感情が漏れ出たその瞬間に恐怖を全て吸い尽くすという目論見だったが、我の姿を知らないとなれば、表に出ても誰?で終わってしまうのではないか?」


「ねぇ見て、なんかブツブツ言っててキモくない?」


「それな、なんつってんのかな?ぼそぼそしてて聞こえな~い」


 数人我の方を見て何か言っているな、言語は分からずとも感情は読み取れるぞ、この感情は蔑みの感情だな、残念ながらそういう感情は好物ではない、我の友人の一人に好物としている奴はいるが理解が及ばない、我は恐怖の方が好みだ。


 ここだと目立ってしまうな、どこか一休み出来る所を探さねば。


 確かあやつはこう言っていたな「降臨した場所にもよるが、あんたの休む場所を提供してくれる奴がいる」と、そいつを探すのが最初の目標だな。


 そして最終的にはこの地を恐怖のどん底に突き落としてくれるわ!


 ~アザリオ視点~


 俺はアザリオ底辺地区で暮らしている日陰者さ、上級魔族からみたらさぞかし可哀想な生活をしているらしいが、そんなの俺には興味がない。

 なぜなら俺には最高に面白い実験d…友達がいる、そいつの名前はサタン・アミューズ

 あのサタン様の文字が入っているがそこまで力は無い、低級悪魔の癖に名前だけで人気になった奴と昔は思っていたが、意外と良い奴だ。


 そしてアイツは超が付くほどのちょろい奴だ、最近は魔族は蛇に噛まれると死ぬと教えてやったら、蛇を見かけただけで焼き殺すところまで行くようになってしまった。

 そして爽やかな顔で「魔族を救った」と豪語する。


 そのちょろさは俺の住んでる地区ではかなりの有名で、街行く魔族がアイツをからかって行く、だがからかわれているのを自覚していないのかニコニコ笑顔で応対して、ジョークにマジになってるのをみると可哀想になってくる。


 ところで話は変わるが、俺は最近掘り出し物を古い市で見つけたんだ、なんとそれは現世に降臨できるという装置、最初は疑心暗鬼だったがその装置を覗いて見ると色々な現世の情報が入手できた。


 俺はそれを100年研究して、現世の知識もその地の奴らに引けを取らないくらい覚えた。

 そしてアイツを実験台にして、現世に降臨させて魔界から様子を見る事にした。


 まずは誘うところからだがそれはもう済んだ、お前が最強になれる地に降臨させてやるって言ったら二つ返事で了承してくれた。

 そして俺は適当な知識を授けて現世へと送り出した。


 例えば中指を立てる事は実際良くない事だが、それは断る時に使うジェスチャーだと教えたし他にも色々教えてやった。

 アイツや周りの反応が楽しみだ。


 希望はなるべく叶える方針で、ダークで不気味な場所とアイツは言ったが、薄暗くてジメジメした場所に送ってやった。


 最初はなんか文句を垂れていたが動き出した。

 路地裏から出て周りの景色をぼーっと見てる時の顔はかなりのアホ面だ。


 そしたら変な奴が喋りかけてきた、これは最近流行りのヨウチューバーってやつらだな。

 あぁ、降臨させる時期間違えたかな?よりにもよってハロウィンの時期に送ってしまうとは、これは周りの奴らの反応も薄いわけだ。


 仮装だと思われてるとは知らずにポケっとした顔だなぁ…おっ、おぉ!コイツ中指立てたぞ!ぎゃははは!!馬鹿すぎる馬鹿正直すぎる!教えといて良かったぁ。

 そりゃこんな微妙な顔するわな、だって質問したら中指が回答として送られてくるんだぜ?俺だったらはっ倒してるところだわ。

 あぁ涙出てきた。


 お?なんか言ってるな、なに?お前そんなガバガバな計画建てるなら俺に言ってくれよ、完全に馬鹿にした計画を教え込んでやったってのによ。


 人間に馬鹿にされてる悪魔とか見たくなかったが、蔑みの感情は俺の大好物の一つだ、俺も降臨しようかな……


 なんか表情が前向きになったな、これがコイツの強みだよなぁ、どんな状況でも前向きになれるってのは。

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現代社会に降臨した悪魔ですが、自分の姿に恐怖してくれません ~どうしようかと考えた結果遊園地を経営しようと思います~ アスパラガッソ @nyannkomofumofukimotiiina

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