~自粛の独房(へや)~(『夢時代』より)
天川裕司
~自粛の独房(へや)~(『夢時代』より)
~自粛の独房(へや)~
●しどろもどろの青の銃弾。
●孤独を報(しら)せる黄色い背中の紋白蝶。
●幻想(ゆめ)の瀬戸際(まぎわ)の微かなcemetery(はか)への二色(にしょく)の構図。
●四旬(しじゅん)に豊かな孤独の晴嵐(あらし)に二本の脚立。
●手順豊かな合せ眼(まなこ)の有楽町。
●〝静寂(しじま)〟の御蔭(かげ)から矛盾に仕上がる純白(しろ)い憔悴。
●意図(いみ)を成さない二色の覚悟の人間(ひと)の成り立ち。
●孤独顔(こどくがお)した文句(ことば)の痣には「街の灯(ひ)」が発(た)つ。
●苦労症(くろうしょう)から二鶴(にかく)の笑顔が舞い降りても居る。幻(ゆめ)の古録(ころく)は弄(あそ)びに任せた債務の片輪(かたち)に…。
●何処(どこ)へ往くのも概(おお)きな古録(ころく)が膨(おお)きく立って、明日(あす)の鳴く音(ね)は凡裁(ぼんさい)に向く。
●〝機密〟の空箱(はこ)には色彩豊かな誇張が目立ち、人間(ひと)の野原は宙(そら)に流動(なが)れる星を観て居た。
●哀しみの果てに今日・明日が在る。
●夢の孤独に〝確立〟が在る。
●俗世(このよ)と幻夢(ゆめ)との蓋(おおい)の許容(なか)には独り善がりの悶絶が成る。
●激しい晴嵐(あらし)は午前零時に正体(からだ)を洗える。無垢の黒目(ひとみ)は人間(ひと)の主情(あるじ)の小言を聴いた。〝雄々しく在れ〟とは天下を究(もと)めた異人の掌(て)に在る。
●幻(ゆめ)に見(まみ)えた〝しどろもどろ〟は孤島の晴嵐(あらし)の抑制を観た。
●気取る文句(もんく)は儲けが少ない。
●純(うぶ)の人情(かお)には現代人(ひと)を離れる魔性が成り立つ。
*
ローラとメアリーと共に過ごす、チャールズが居た雪のプラムクリークで余り相手にされていなかった。
ローラとメアリーは、とても日本語が上達して居り、特に、俺はローラの上達に目を止めていたようで、男山児童センターへ遊びに行ったら?と強く勧めて居る。「児童センター」を英語で言う際どうも上手く行かず、〝Child center〟と行って仕舞い、それしか出て来ず、後から児童という言葉を示す英単語を辞書か何かで調べ、その単語の方が好かったかな、なんて思って居た。
*
●アルキメデスは月の周囲(まわり)を一周してから自転車に乗る二つの手足を捜しに行った。
●逆転(あともどり)の無い夢想の櫓の行進を観て、何時(いつ)か世に降(ふ)る凹(くぼみ)の在り処を俺は求めた。〝切り切り舞い〟から柔軟(やわら)を採りつつ、醒めた表情(かお)した二重(にじゅう)の四肢(てあし)は満月(つき)の御蔭(かげ)から俺へと堕ちた。
●無想の孤独は現代人(ひと)の興味を少なくして活き、俺の精神(こころ)に遺る棲家を燃やし続けて旅廻(たびまわ)りをした。痩せても枯れても、俺の〝女神〟は〝櫓〟を観て居た。
●本能(ちから)の宿れる無数の自然(あるじ)は〝ぴんぽん〟している白球を観て、手元を発狂(くる)わす男女の人群(むれ)には一向延びない注意を遣った。
●屍から観た現代人(ひと)の経歴(きおく)の紋白蝶には、慌てふためく御殿が閃き、〝金(かね)の無いのが縁故の腫れ目〟と無重の家屋を失(な)き物とした。
*
俺は、俺の知人達と、ローラとメアリーも一緒に、何処(どこ)か知らないようで知ってる、洋館のような施設に居り、そこで合宿して訓練でもさせられるようにして暮らして居た。知人の中には、バン子と初枝も居り、教官には、理屈・理論好きの先生も居た。その内で暫く過して居り、俺は、『ジョジョの奇妙な冒険』の初めの方の巻(かん)を洗面所に置こうとかして、でもそれが元で女子特有の細かい他人責めに遭っちゃ適わん、としながら置き場所に困り、結局、広間の割と大きいテーブルの上に置いて少し残念がった。取り敢えずその俺と、比べられる男友達と、ローラとメアリーとが住んで居たその洋館の広間は二部屋在り、その何方(どちら)も可成り広かった。『ジョジョ』の本をテーブルに置いた時、バン子と初枝が居り、何か、字をローラとメアリーに教えて居て、俺との間には、妙な壁が在った。
*
騒ぎ立てない滑稽(おかし)な「男女」は空気に湿った白壁(かべ)に覗ける浮遊の労徒(ろうと)を脚色しており、旧来(むかし)の生歴(きおく)に青味(あおみ)が勝った無謀の奥義(おうぎ)を産乱(さんらん)している。
●「郷(くに)に帰るは一時(いっとき)の恥…」、文句(ことば)の乱雑(みだれ)が幻(ゆめ)の音頭を揚々従え、健気に咲かせた夢遊の昇華は無駄に蔓延る常識(かたち)を生んだ。
●白壁(かべ)に透れる滑稽(おかし)な「男女」は未来の果てから珍妙を抱(だ)き、慌てふためく神秘(ふしぎ)の旋律(おきて)に直ぐさま跳び付く情景を観た。
●発狂(くる)った男女の概(おお)きな道標(しるべ)は宙(そら)に灯せる落胆(いのち)を観た儘、「何も無いのが今日の幻(ゆめ)…」等、過密に呟(ぼや)いて無想に着いた。
●可細(かぼそ)い幼女が母性(はは)の胎から膨(おお)きく跳び立ち、滅多矢鱈に憤悶(ふんもん)して生(ゆ)く自己(おのれ)の生果を想起して居る。これまで観て来た俗世(このよ)の人煙(けむり)の煙い姿勢(すがた)を、自分に集まる男児(おとこ)の躰に揚々摺(す)り寄せ、隠し切れない女性(おんな)の本能(ちから)は〝浮き〟を識(し)りつつ物憂さを見る。
●勝手気儘の美欲(びよく)の男子は男児(こども)に生れて宙(そら)を観ながら、純白(しろ)い積乱雲(くも)には紺(あお)い〝襖〟が密かに開き、〝直き背〟に観る旧来(むかし)の連想(ドラマ)がそこそこ在った。
●女児(こども)の心理が心裏を透して空転(ころ)げて生く頃、俺の男性(おとこ)に摘(つま)れた呼笛(あいず)はこの掌(て)に乱れて孤独を敷く内、事の起りの一通りに観る歌謡の一連(ドラマ)に悶絶して在る。光明(ひかり)の手許に懐ける自然(あるじ)は昨日・今日とて俄かながらに、その実(み)を失(け)し得る神秘(ふしぎ)の連想(ドラマ)を一呑みしたまま独歩に就いた。
●〝物足りない〟のは嗣業の種子(たね)からその実(み)を擡げる止揚の〝現(うつつ)〟を洗練しながら、俺と孤独を「男女」の活き得る俗世(このよ)の故縁(ふち)へと真っ直ぐ引いた。
●俺の両腕(かいな)は神秘(ふしぎ)に懐ける秩序(てじゅん)の無い儘、死して見抜ける扶養の人塊(ます)へとその視(め)を擡げて、誂え直せる〝矛盾の傀儡(どうぐ)〟は人間(ひと)の黒目(め)を視(み)て神秘(ふしぎ)を乞うた。
●宙(そら)の実(みやこ)の〝母性(はは)の連動(ドラマ)〟は俄かに積もれる思念(おもわく)を保(も)ち、人間(ひと)の躰にそのまま染み付く〝無為〟の主観(あるじ)を彷彿させた。
●孤独を遮る二つの明暗(いろ)から初秋(あき)がしみじみ、宙(そら)に浮遊(あそ)べる「人間(ひと)の躰」は至天(してん)を訴え、始めから無い人間(ひと)の煩悩(なやみ)の未完(みじゅく)の奥義(おく)には、人児(こども)が保(も)てない両刃の刃(やいば)が「男・女」を失(け)し去り耄碌を得た。
●苦労の末には人間(ひと)の孤独が「吟味」を表し、人間(ひと)の躰の未完(みじゅく)の末にて宙(そら)へ脱(ぬ)けない〝止揚〟の様子を、俗世(このよ)の盲者(もうじゃ)は多忙に観ながら多勢に識(し)った。
●「孤高の民」から間抜けに仕上がる幻(ゆめ)の〝迷(まよ)ひ〟の真実迄には現代人(ひと)の気配が丈夫に仕上がり、俺の周囲(まわり)の埃の許容(うち)から父性(おや)の名残が消失して行き、時計廻りの〝都会〟の内には初夏(なつ)に寄り添う孟夏が凌ぎ、慌てふためく女性(おんな)の小口(くち)から化粧の解(ほつ)れが散乱して居た。
●桃色(ぴんくいろ)した黄泉の果てから〝集成(シグマ)大社(たいしゃ)〟の綻びが在り、純白(しろ)い小(こ)の葉(は)を概(おお)きく拾える機微の微熱が俺から失(き)えて、漆黒(くろ)い人見(ひとみ)は虚空の虚ろに飛散を発して順局(じゅんきょく)に在る。
●夢想の縺れは団子虫から蛹を透して蝶々に生育(そだ)ち、淡い夕べは嗣業の教習(ドグマ)に従い始めて、姿勢(すがた)を失(け)し去る夢想(ゆめ)の行方は〝過密〟を通して無断に成った。
●拙い人間(ひと)には〝八岐大蛇〟がその掌(て)を煌(ひか)らせ、幻想(ゆめ)の小躍(おどり)は橙色から紅色(こうしょく)を経て、現代人(ひと)の人群(むれ)から「明日(あす)」を匂わす無想の翻(かえり)が活き活きしていた。
●「鉄砲魚」から二鶴(にかく)を呼び込む人間(ひと)の冴えには、無駄を侍らす感覚(いしき)が漲り俗世(このよ)を潤し、俺の前方(目前:まえ)から結色(けっしょく)して行く二股(にまた)の木の実が美味を頬張る。
●淡い孤独は空気(しとね)に巻かれた初春(はる)へ飛び込み、現代人(ひと)の黒目に色目を保(も)たせて宵の口から盲言(もうげん)して居る。
●軟い彩色(いろ)から才色豊かな〝草履〟が仕上がり、俗世(このよ)の大手を首位(ひとつ)に束ねる無益の労苦を事毎(ことごと)殺め、明日(あす)に迫れる個人(ひと)の温床(ねどこ)の温味(ぬくみ)の外界(そと)には、俺と人間(ひと)との不要の稽古が夕(ゆう)なを問わずに凡庸に在る。
●独創(こごと)の概(おお)きな人間(ひと)にとっての迷い事には、俺と自然(あるじ)の〝垣(かき)〟の根坂(ねざか)が勾配を経て、矮小(ちい)さく隠した気味の謳歌は始業の老化を腕にした儘、遥か彼方(とおく)の日常(かたち)の織迄〝逃れられない延長戦(さだめ)〟を引いた。
●個人(ひと)の大口(くち)から現代人(ひと)の小口(くち)迄、〝戯言合(ざれごとあわ)せ〟の雲母(くも)の範囲(うち)から「俗世(このよ)の魅惑」に化(か)わらず流行(なが)れる乾いた絆(かすみ)を頬張り続けて、現代人(ひと)の母性(はは)には〝迷想(まよい)〟の見得ない心豊かな吉兆が在る。
●閉ざされ続けた迷妄(まよい)の進化の経過(とき)の人渦(うず)には、人間(ひと)の怒涛の厚味(あつみ)に解(と)けない無駄の賛美に終止符が在り、孤独の謳歌が開花へ繋がる無機の弄(あそ)びが独歩して居り、俺の白紙は何ら拙い労苦の様子を現代人(ひと)の傘下に火炙り出した。
●靴の光沢(ひかり)が俺の足元(もと)から逃げて行く頃、動揺巡りの旧い欠伸は演劇(げき)の〝旧巣(ふるす)〟をその眼(め)に顕し、明日(あす)の孤独が現行(いま)の経過(ながれ)に同調して行く虚ろの〝傘下〟を無色に引いた。
●宙返りをする青い蜻蛉(とんぼ)に尻尾が千切れて、空気(しとね)の許容(うち)には煩悩(なやみ)の常識(かたち)が緩く仕上がり、他人(ひと)と俺との背後(うしろ)の表情(おもて)はその陽(ひ)に見返す算段を得た。
●俗世(このよ)に活き得るキリスト教徒の七割方(しちわりがた)は他(ひと)を裁ける毒牙が仕上がり、安く保(たも)てる派閥の許容(うち)にて気楼(きろう)の妙味にぽつんと向く頃、栄光(ひかり)を拝して人間(ひと)を葬る愚かな〝愚図〟には魔性が活き付け、そこの「牧師」と「信者」を着飾る偽の信者は神から離れ、俗世(このよ)の王座が獲得したまま個人(ひと)の高貴を〝噂〟で葬る無理の試練を払拭して居た。
●土中(どちゅう)に蠢く現代人(ひと)の煩悩(なやみ)は脚力(ちから)を見付けて、過去の吐息を端麗(きれい)に排して現世(このよ)を仕上げて、苦労症(くろうしょう)から楽観症まで知的に遊べる無難を観た儘、人間(ひと)の古郷(こきょう)へ概(おお)きく羽ばたく〝罪の意識〟を大事に観て居た。
●血色豊かな試算の旅路は〝草履〟を脱ぎ捨て、褐色顔した無為の孤独を前面に揚(あ)げ、未知の生歴(きおく)を無駄に排する宙(そら)の寝言を崇聴(すうちょう)して居た。
●雌鶏から観た〝雄〟の手近は希を排して、黄泉へ傾く無業の延路(えんろ)は虚空(そら)の中軸(じく)からほろほろ崩れて、精神(こころ)の病を両手に着飾る憤怒の眼(め)を持つ山の旅人(たびと)に、瞬間(とき)の刹那の無憶(むおく)の絆を幻(ゆめ)に差し替え生還して居た。俺の孤独はこの時失(き)えた。
●無駄の〝生気〟を一切省ける自然(あるじ)の神秘(ふしぎ)は、二手(にて)に詰め寄る旧暦(むかし)の樞(ひみつ)を大事にしたまま人間(ひと)と現代(いま)との無用の別れを塵に返らせ、浮世の別れを三手(みて)に省ける嗣業の内実(なかみ)に輸送して居る。
●瞬間(とき)の煩悩(なやみ)に人間(ひと)の労苦は逡巡した後(のち)、明日(あす)の孤独にひたすら向き合う孤業(こぎょう)の様子は〝傘下〟へ駆け込み、現代人(ひと)が統(たば)ねる〝懐刀(ふところがたな)〟を煩悩(なやみ)の腕力(ちから)に依り撓(しな)らす儘、一切片手に武器を忍べる余明(よみょう)の算心(こころ)を斬新にした。
●渡航して行く新たな分業(ノルマ)の仕上がりから観て、俺の孤独は大魚(くじら)に呑まれる幻(ゆめ)を観た儘、慌てふためく黒い波から飛沫(しぶき)を返らす怒調(どちょう)を観た後(のち)、算心(こころ)に迫れる優雅な飛沫(しぶき)は自由を掌(て)にして〝伸び上がり〟を観て、明日(あす)の生気へ独気(オーラ)を撓(しな)らす現世(うきよ)の賛歌を講じて在った。
*
俺は、射撃訓練に、その洋館の一室に出掛けた。普通の和室だった。教官は、理屈好きで、高貴を纏える気品豊かな老男(ろうなん)である。背筋が真っ直ぐして居た。可成りの人数が居り、ピストルの弾が自分に当りそうで怖かった。皆、当り前のように銃を水平に構えて、前方へ突き出し、前方に居るとした敵を目掛けて銃弾を放ちそうだった。老男の教官が合図をした。皆、一斉に射撃し、俺も撃った。意外と撃鉄は軽く、撃った衝撃もそれほど来ないで、妙な快感に近いものさえ在った。
*
●何を言っても遣っても〝偶然〟しか来ぬ哀れな俗世(このよ)で、俺の手許は人路(みち)を誤り、「過失」に解(と)け入る算段を観る。
●逃げる髑髏(かばね)は何者をも観(み)ず、経過(とき)を巡らす噴水辺りで射殺に倒れ、大熊(くま)をも倒せる麻酔銃にて、〝よれよれサンバ〟を死ぬまで小躍(おど)る。如何(どう)にか成るのは自己(おのれ)の定めで、明日(あす)の宮(みやこ)へ返り咲くのは深夜(よる)を識(し)らない赤星(あかぼし)である。
●身分の足元(ふもと)に寛ぎ生くのは、未だ見果てぬ経過(とき)の表情(かたち)で、語り尽せぬ概(おお)きな中庭(にわ)では俺の吐息が悶絶して居り、葉っ端(ぱ)に吹き着く物の神秘(ふしぎ)は孤高の宙(そら)から再生して来る。
●〝仕切り直し〟がどれ程自己(おのれ)に賛否を遣るか、屈折して行く人間(ひと)の〝条理〟は煩悶間際にお首(くび)を翻(かえ)し、俺の鳴く音(ね)と他人(ひと)の鳴る音(ね)を〝条理〟に歯向かい真向かいに立て、自己(おのれ)の発する幻想(ゆめ)の虚ろに漸く仕立てた基準を踏んだ。こうした〝基準(かたち)〟は現代人(ひと)の間で「天上(のぼ)れぬ現代人(ひと)」を造った。
●袋小路の迷妄(まよい)の許容(うち)から人間(ひと)を培う唾棄が現れ、寝首を落せる不要の〝信徒〟を希望(あかり)に晒し、信仰(まよい)の下(もと)では一色(いっしき)豊かな一燈(あかり)を拵え涼風(かぜ)に吹かれた。
●涼風(かぜ)に吹かれて信仰(おもい)の温度は如何(どう)にも斯うにも現代人(ひと)へは懐けず、苦労症へと人間(ひと)文句(ことば)が一切懐かぬ宙(そら)の神秘(ふしぎ)は陽(よう)を見た儘、可弱(かよわ)い美声(こえ)にて自分を顕す一糸の〝女性(おんな)〟がその身を置いた。
●孤独顔した俺の寡は〝寡烏(やもめがらす)〟の背中へ跨り、漆黒(くろ)い彼方へ宙(そら)を観て生く蛻の信仰(おもい)を斜(はす)に観る内、狂々(くるくる)途切れた脆(よわ)い常識(かたち)は現代人(ひと)の背後でその実(み)を蹴散らし、俗世(このよ)に蔓延る古来(むかしながら)の淡い故縁(ふち)から俺と女性(おんな)を逃がして透けた。現代人(ひと)の苦楽はそれでも変らず一貫して在り、一つ覚えの滑稽(ばか)な悪癖(くせ)から一向上がれず脆味(よわみ)を識(し)った。
●経過(とき)の経過(なが)れる人間(ひと)の世界(うち)では、独り善がりの「自然(しぜん)」が顕れ、来る夜(よ)も来る夜(よ)も野垂(のた)れ廻りの稼業をし続け、「行く年来る年、天下晩年、孤高に漏らさず人を葬る…」等々、散々衒った〝気分〟を擡げて奇遇を儲け、明日(あす)の鳴く音(ね)は〝一足跳び〟から波紋が拡がり、現代人(ひと)の古巣は宙夜(ちゅうや)に割れずに〝木霊〟と化(か)した。
●挨拶代わりの〝新たな年〟には俺を仕留める連動(うごき)が囀り、木通(あけび)に好く似た小さな木の実を俺の生命(いのち)に相対(あいたい)させて、新たな年にて自然(しぜん)が求める「小さな音(おと)」から再び独歩(あゆ)める、俺の生育(そだち)が垣間見られる。
●孤高の読者に運命(さだめ)の実らぬ良縁から観て、明日が奏でる「延命(いのち)」の淀みは微睡みから観る光明(ひかり)を差し込み、低い調子に〝宙(そら)〟を着飾る無数の自然(あるじ)は散漫を経て、俺と知識に一層透れる神秘(ふしぎ)の教習(ドグマ)を作用(はたら)かせていた。
●電子の要(かなめ)が人間(ひと)に及んで、電子の粒子(こまか)を〝波間〟に見立てて人間(ひと)が死ぬ頃、溺死の陰には左右されない肯定・思案が水膨れに触れ、人間(ひと)の脆(よわ)さにぷちと産れた〝電子の古傷(きず)〟から、緑色してどろどろ流行(なが)れる慌てた賛辞が野平(のっぺ)り発(た)った。発情色(はつじょういろ)した女性(おんな)の体(てい)には男性(おとこ)の故縁(えにし)が宙吊りに在り、古い宿から斬新(あらた)な宿まで、そうは掛らぬ道標(みちしるべ)を観て男性(おとこ)は壊れる。壊れた男性(おとこ)は女性(おんな)を主観(あるじ)に紐解かせて活き、二度と還れぬ望郷(わすれがたみ)の〝土手〟を仰いだ。
●逡巡して行く四季(きせつ)の流動(ながれ)は表情(かお)を隠して、俺に見得ない人間(ひと)の旧巣(ふるす)を孤高の大海(うみ)にて盲言(もうげん)に観て、斬新(あらた)に朽ち生く女性(おんな)の全裸(はだか)は性(せい)を射止める正直差(しょうじきさ)を増し、勢い付き得る男女の倣いの教習(ドグマ)の視野には、一糸纏わぬ現代人(ひと)の姿態(すがた)が股間を隠して散歩して居た。
●派手に生き得る女性(おんな)の部品(かけら)と男性(おとこ)の欲情(こころ)は、自然(あるじ)の一端(かけら)を上手に仕立てて人間(ひと)が蔓延る本能(ちから)の範囲(うち)へと埋没させ活き、俺の前方(まえ)では貞淑ながらに偽善ながらに、口を窄めて説話を垂れて、初めには無い欲の礫を大袈裟に観て、礫の数多を拾い集める知識人へと化(か)わって入(い)った。入(い)った果(さ)きには伽藍が建った。
●「既成(バベル)の塔」から逆上して生く人間(ひと)の分業(ノルマ)の無垢の果てには、現代人(ひと)の精神(こころ)を無駄にして行く愚図(おろか)の淫靡がその美を擡げて、人間(ひと)の四隅に改築され得た不可視(ふしぎ)を遮る本能(ちから)の弓から、一糸纏わぬ美麗が削がれて言葉が成った。
●経過(とき)を省ける自然(あるじ)の音頭は徐々に速まり、〝一糸纏えぬ女性(おんな)の容姿(すがた)〟は宙(そら)を空転(ころ)げて無臭を放ち、滑稽(おかし)な〝木の実〟を無益に頬張る深紅の色葉(いろは)を継投に保(も)ち、独創(こごと)を頬張る男性(おとこ)の目下(もと)へは「最終的」から「未完(みじゅく)」を具える愚賦(ぐぶ)の高智(こうち)が訪れている。
*
しかし、俺も遂に人を殺すのか…と、郷愁を大切にするように自分のこれまでの過去を振り返り、出来れば銃を置き捨てて戻りたい、と思った。人を殺せば、戻れないと感じて居た。又、自分が殺されるかも知れないと言う恐怖感が、放(はな)った銃弾から俺に伝わった。
*
●使徒の杜から従順(すなお)に出て来た俺の孤独は女性(おんな)の躰を堅固に護り、自分の実力(ちから)は未完(みじゅく)に築ける緑青(たより)に模倣(なら)って従順(じゅうじゅん)に立ち、明日(あす)の仮面(かお)には常緑(みどり)に咲かない脆(よわ)い火蓋が真逆(まさか)を夢見る。
●苦し紛れの凡庸(ふつう)の両脚(あし)には俺に対する自然(あるじ)の定目(さだめ)が奔放成るまま自由を着飾り、淡泊(しろ)い両腕(うで)には俺の心身(からだ)を包容して行く薄い〝火の手〟が順局(じゅんきょく)に在り、気安い文句(ことば)が自在を気取れる豊かな孤独を噴散(ふんさん)していた。
●小人(こびと)の皮靴(くつ)から女性(おんな)に手向(てむ)かう銃弾が発(た)ち、自分に纏わる数多の遊戯を自己(おのれ)の糧へと分散させ得て、俺の両眼(まなこ)に零れた夕日は女性(おんな)を連れ添い俗世(このよ)を去った。
●無駄に抗い、無益に抗う女性(おんな)の秩序に魅惑を見付けて、男性(おとこ)の勇気はどんより崩れる明日(あす)の〝空地(あきち)〟に段々寄せられ、自分の心身(からだ)に小さな怪物(あくま)が寄り添い寝るのを、小さな生歴(きおく)に鈍(どん)と仕留めた俺の欠伸は御殿に着いた。
●御殿の内には女性(おんな)の体裁(かたち)が異常に棲み付き取り付く島さえ失くした盲者(もうじゃ)を独創(こごと)の迷路へどんどん招き、俺の味方の小さな事には何にも活き得ぬ〝魅力の自殺〟が無機に死ぬ儘、〝無駄〟を愛した女性(おんな)の共鳴(さけび)は木霊を返して出張している。
●女性(おんな)の魅力は見る見る消え失せ、図らず迄とも自分の孤独を優(ゆう)に失(け)し去る同調貌(どうちょうがお)した無機を着飾り、俺の目前(前方:まえ)から自由に消え得る轆轤の丈夫を巧みに操り、女性(おんな)の色香(いろか)は宙(ちゅう)に注がれ飛び石を保(も)ち、感情(こころ)の底から〝向き〟を愛する軽い行為を犯罪にした。
●男性(おとこ)から観て非情(非常)を徹した身軽の原罪(つみ)には女性(おんな)の初歩(しょほ)から波動が拡がり、男性(おとこ)の好意を犯罪(つみ)に失(け)し去る無垢な黒目(ひとみ)を表情(かお)に留(とど)めて、慌てふためく人間(ひと)の〝回顧〟は行方知れずの末路を追った。
●女性(おんな)の乳房は乳酸から成る媒菌(ばいきん)を保(も)ち、俗の背後(せなか)にぽつんと落ち込む女肉の酸化を融合させ活き、生き生きして来る無力の小言は何処(どこ)へ往(ゆ)けども、二度と逆行(もど)れぬ厚い白壁(かべ)さえ崩して在った。
●得策から観て女性(おんな)の好意に活き得た産物(もの)には、俗世(このよ)の生徒を統括して行く金の破力(ちから)が宙(そら)を追いつつ、男性(おとこ)と女性(おんな)の牙城(とりで)に要した二つの〝玉手箱(はこ)〟には、永久(とわ)に消せない「老い」の火力が逡巡し始め、慌てる行為は生きる最中(さなか)に女性(おんな)に寄り付き男性(おとこ)を計り、小さな〝計り〟で孤独を愛する女性(おんな)の威力は男性(おとこ)を撃った。
●初めから在る個人(ひと)の無適(むてき)は俗世(このよ)を培い、常識(かたち)から成る「黄泉」の郷(くに)へは男性(おとこ)の孤独が活き続けて生き、忍ぶ間も無く俗世(このよ)を終れる旧制(むかし)の音頭を大切に見た。
●楽に耽得(ふけう)る個人(ひと)の精神(こころ)は電波の陰から無為に飛び出す連想(ドラマ)の一律(おきて)を充分見守り、「明日(あす)」の故縁(ふち)へと降り立つ我が身を如何(どう)にか緩める和と輪の締結(むすび)を逆に絆(ほろ)んで、二重履きした牙城(とりで)を独歩(ある)ける青い皮靴(くつ)には、常緑(みどり)の小(こ)の葉(は)が一切透れる余震(ゆらぎ)の涼風(かぜ)など想起して居る。
●精神(こころ)の嘆きを未知の孤独へ投げ売りながらも俺の孤独は幻(ゆめ)へと運ばれ、「明日(あす)の牙城(とりで)が死顔(かお)を象る無限の境地に俺は旅した。
●朝な夕なと頃合い計った奈落の水面(みなも)が、小言を表する俺の表面(かお)へとその実(み)を顕し、俺の足元(ふもと)を大きく揺さ振る不思議の孤独を上手(じょうず)に表(あらわ)し、〝吝々(りんりん)〟〝遁々(とんとん)〟、発音(おと)を交響(ひび)かす無名の明暗(あかり)を頬張り続けた。
●悔しいながらに俺の頸(くび)には朝陽が当らず、温(ぬく)い血糊が人を透して冷却され得る未聞の〝火蓋〟を滑らせ始めて、お暇して生く陽(よう)の古巣は俺から離れて硬直している。
●どれほど灯(あか)るい現(うつつ)の許容(なか)でも独り身から成る寂寥が在り、活き活きして行く孤独の文殊は明日(あす)の日中(ひなか)に揚々咲けない美脚を潤し女性(おんな)を挿げ替え、独り身から成る俺の男性(おとこ)の不朽の陰には、誰にも何にも決して懐けぬ無欲の快無(オルガ)が散漫に在る。
●孤独の検挙は俺の犯罪(つみ)から真面に挙げられ、旧い家奥(かおく)は立ち処(どころ)に立つ「女性(おんな)の微温味(ぬるみ)」を清閑(しずか)に寝かせ、初めから無い宙(ちゅう)の〝火蓋〟は情(じょう)を灯せる「滑稽(おかし)な温味(ぬくみ)」に片付けられた。「明日(あす)の牙城(とりで)は明日(あす)が建てる」と、烈(はげ)しい文句(ことば)が女性(おんな)を透せる。
●現世(うきよ)の地獄へ存分豊かに闊歩して生く未完(みじゅく)を灯せる現代人(ひと)の独気(オーラ)は、弄(あそ)びながらに真面目を絆せる〝謳歌〟の基準(もと)から〝日捲り〟が在り、女性(おんな)の宮(みやこ)が女性(おんな)を煌(ひか)らせ男性(おとこ)を吸い込む〝暗黒妖気(ブラック・ホール)〟を塒に仕立てて、早い話に女性(おんな)が寝そべる〝男性(おとこ)の主観(あるじ)〟を女神(エロス)へ遣った。男性(おおこ)の精神(かけら)は「男性(おとこ)を吸い込む魔性」に捕われ、「明日(あす)」が来るのを活きながらに待ち、惨い夢路に精神(じぶん)を観て居た。男性(おとこ)の微温味(ぬるみ)は余夜(よる)の陰にて精神(じぶん)を煩い、未完(みじゅく)を着流す宙(そら)の高音(たかね)に肢体(からだ)を捜せる精神(じぶん)を拾う。女性(おんな)の微睡(ゆめ)には勝手が産れた。
*
俺はこれ等の事を、俺の左横に居た、俺よりも背が可成り低く、俺の左肩辺りに彼の頭が来ている程度の、その男の横で、思って居た。その俺の横に居た彼とは、中年であり、黒髪で、息は良さそうに見えた。そして一発目を撃った時、俺はその一室(和室)の一番出口側に居り、横は直ぐ障子で、怖くてその障子を開(あ)けて半身(特に頭)を出して逃げたが、教官先生は気を取り直すように、もう一度射撃訓練をする、と言って大勢(おれたち)に挑戦させた。撃ち、その次には、
「今度は四、五発、二発続けて撃て」
と言い、俺は、撃った銃弾が跳ね返って俺に当らないか、又、誰かに当らないか、不安だった。その辺りでその場面から俺は遠ざかった。
*
●〝孤独の丘〟には俗世(このよ)を終らす無重の妖力(ちから)が雄々しく宿り、知的で不憫な欲の芽が立つ精神(こころ)が在った。人間(ひと)に観られるそうした精神(こころ)は薄い神秘(ベール)にその実(み)が解(と)かれて俺の背影(かげ)からよくよく生育(そだ)てる思惑(こころ)が立つが、早朝(あさ)の微睡(まろみ)につくづく煌(かがや)く投擲を得て、拙い思惑(こころ)は未完(みじゅく)を気取れる敗退を観た。
●敗北して生く人間(ひと)の迷想(まよい)は現代人(ひと)へと移り、孤高に留(と)まれる未完(みじゅく)の花園(その)には宙(そら)を気遣う魔笛が響(とどろ)き、短い生命(いのち)を現代人(ひと)へ侍らす無垢の混(ご)みから打ち解け出した。暗い夜途(よみち)は寛(ひろ)い精神(こころ)を上乗せしながら人生(みち)の途次にて泡(あぶく)を着飾り、速い速度で自糧(しょく)を頬張る無憶(むおく)の順序を整え始める。
●私議(しぎ)の秩序(じゅんじょ)を見定めながらに無欲の保守には保身が映えるが、俗世(ぞくせ)の温度は温度を保(も)たずに、諦め顔した欲の網羅を大事に取り次ぎ、「純白(しろ)い朝日(あした)は明日(あす)に咲かせず深夜(よる)に咲く」との短い文句をその瞳(め)に認(したた)め、新たな年(とし)への自活を培い協力して生く。協力するのは人間(ひと)の余命(いのち)の分野(フィールド)に在り、俺と他(ひと)との延命(いのち)の解(ほつ)れは俗世(このよ)を越え生く生命(いのち)を観(み)せた。天の目下(ふもと)へ概(おお)きく架かれる無音の常識(かたち)が宙(ちゅう)を飛び交う。
●自分の朝日(あした)の生き写しに見る黒い眼(め)をした独創(こごと)の楯には、明朝(あさ)の光明(ひかり)に真向きに前進(すす)める無欲の報酬(ほうび)が真逆(まさか)に跳んだが、俺の眼(め)に在る孤高の悪事は火元を間違え暗宙(あんちゅう)に活き、膨(おお)きく壊れる樞(なそ)の神秘(ひみつ)を夢想(ゆめ)の暴露へ追従(ついしょう)させた。
●孤独の宙(そら)から〝無重〟を忘れた健康体(からだ)が拡がり、虚無へ疾走(はし)れる優雅な態度をも一度観たが、暗い世に咲く青い花には一つの〝無憶〟が妙に絡んで、紺(あお)い小箱(はこ)には輪舞曲(ロンド)の見得ない奇妙差(きみょうさ)が発(た)ち純白(じゅんぱく)を見て、逸り始めた文句(ことば)の意図から無音を伴い仕上がる成体(からだ)は、俺の幻想(ゆめ)から微妙に拡(ひろ)まる儚い寝間から失踪して生く。
●〝苦肉の策〟から猟奇を醸せる精神(こころ)の暗(やみ)には人間(ひと)の破読(はどく)を奇妙に仕立てて、段々逆上(のぼ)せる孤高の砦を微妙に懐ける幻(ゆめ)を揶揄(からか)い、俺と流行(なが)れた総(すべ)の夜目(よめ)から見限る憐れを、きょんな暗空(そら)から自分に保(たも)たす無理の在り処を大事に見て居た。
●俗世(このよ)の男女の無理を通せる内夜(うちよ)の自活(かて)には、余りを観(み)せない無想の限度が雄々しく流行(なが)れて、果ての見得ない昼夜の微睡味(まろみ)が破恒(はこう)の主観(あるじ)を概(おお)きく手掛けて縁(えん)を欲しがり、「無重」と言っても滑稽(おかし)な〝土手(とおり)〟を如何(どう)にか斯うにか落着させよと、未完(みじゅく)を頬張る虚無の運河は大虚(そら)を見上げて保身して居た。現代人(ひと)の背後(あと)には無数に拡がる宙夜(ちゅうや)の魅力が再生して在る。
●物欲しさに見る定めの向こうの永久(とわ)の生命(いのち)に、人間(ひと)の語りは少し遅れて情(こころ)を靡かせ、無音の記(シグマ)を自然(あるじ)に任せて放られ生くのを、純粋差(じゅんすいさ)に発(た)つ無効の歯切りは好く好く見定め、主情(あるじ)欲しさの矮小(ちいさ)な本能(よく)から仕上がる両眼(まなこ)を暗(やみ)に遠ざけ発狂して居た。
●端正(きれい)な男性(おとこ)に貴重を煩う無欲の女性(おんな)は、他の男性(おとこ)に視点を投げ掛け振り向く美欲(よく)から露わに成り立つ大童を識(し)り、自分に宛がう〝身分〟の心底(そこ)から禁欲して居た切なさを観て、女性(おんな)を謳える謳歌の〝火蓋〟は開花され活き、稚拙に伴う自由な両刃(やいば)を天に掲げて不自由を観た。
●現代人(ひと)の背垢にろんろん重なる人間(ひと)の垢には、未定に済まない強靭(つよ)い驕りが奇妙に仕上がり、透明色した空石箱(ガラスケース)の許容(うち)の余韻(おと)まで端麗(きれい)に仕上げたmonkを据え置き、夜目(よめ)の郷(くに)から活き得た男女に明日(あす)の朝陽(ひかり)が空転(ころ)がる迄には、固陋が仕立てる悪魔を夢見て深く眠った。
*
D大教授、近現代文学を訓(おし)える西田房子が出て来て、俺の家に来てくれる、と言うような夢で、その来て貰う為には、西田房子の気に入るように、西田房子が課した何らかの課題の条件を満たすようにしなくては成らないらしく、俺は、来て欲しかったので、色々努めて居た。しかし、西田房子と俺との距離は遠ざかった。微かなエロチシズムが彼女のハイカラな服装に在った。
悪魔の神秘(ひみつ)は天から流行(なが)れる高鳴りを識(し)り、人間(ひと)と現代人(ひと)との優雅な遊戯(あそび)を人間(ひと)の許容(うち)へと放(ほう)って退(ひ)いた。
*
●孤独の棲家は「彼女」の課題に深く隠され、黄泉の宮(みやこ)へ追従(ついしょう)して生く俺の鬩ぎを遠くで見守り、西田房子の女性(おんな)の妙味(あじ)には暗(あん)が狭まり発狂(くるい)が生じた。男性(おとこ)と女性(おんな)の憂いの〝火蓋〟は暗空(そら)に根深い微妙が絡まり、寝付けぬ真夜(よる)には彼女の背後が妙に気に成り、独走(はし)らぬ名馬を逐一詠め得るしどろもどろの難儀が跳んだ。
●女性(おんな)の細(こま)かは男性(おとこ)の勇姿(すがた)を概(おお)きく変え出し、初めから無い魅力の姿態(すがた)を人間(ひと)の体温(おんど)へ譲渡して活き、初めから無い空虚な論語は宙(そら)の高嶺にその〝実(み)〟を遣りつつ、不可視(ふしぎ)に観得ない虚無の彫像(つくり)を大袈裟にした。
●何を言っても物足りないまま未覚(みかく)の仕業(しぎょう)は無駄を憶えて、俺の背に立つ無欲の信者を雄々しく気取り、現代人(ひと)の鳴く音(ね)を遥か宙(そら)から聞いた後(あと)にて、俺の文句(ことば)に決して咲かない現代人(ひと)の哀れを肯定して生く。
●詩吟に見果てぬ〝有(ゆう)〟の無実は〝解決〟から観て、堂々巡りの固陋(くせ)の許容(うち)には〝どっち付かずの蝙蝠(けもの)〟に成りつつ、俗世(ぞくせ)の原罪(つみ)さえ肯定して行く現代人(ひと)の正義に嫌気が差した。
●自然(あるじ)に対して何も判らぬ現代人(ひと)の孤独は延命(いのち)だけ観て、腰掛け程度の〝生(せい)〟の息吹に無機を奉(ほう)ずる浅ましさを得、結局最後は〝土手〟を独歩(ある)ける無欲の集成(シグマ)を大事に採った。
●謎に与(く)まれる斬新(あらた)な現世(うつつ)はこの場を離れて、現代人(ひと)の虚無から新芽を取り出す嗣業を重ね、宝来から来る無菌の気質に無機を着飾り、他(ひと)が死ぬのを悦ぶ事さえ自粛の独房(へや)では通算している。
●現代人(ひと)の孤独は人間(ひと)の言動(うごき)を捕えた両眼(まなこ)で漆黒(くろ)く煌(かがや)く雄々しい宙(そら)にて膨張(せいちょう)して活き、俗世(このよ)の未完(みじゅく)に延命(いのち)を図れる孤独の棲路(すみじ)を用意していた。
●煌(ひか)る虚無(うつろ)は遠い宙(そら)にて婉曲しながら、次第に膨らむ人の旅路を暗(やみ)に誘(いざな)い終局を遣り、三日離れた遅々の経過に務めを置くのを、現代人(ひと)の治らぬ惰性から観て好(よ)しとして居た。
●未完(みかん)の呼笛(あいず)は無駄を排せる虚ろを探して孤独へ抗う他(ひと)の謳歌を烈しく揺さ振り、密接して生く〝生(せい)〟の鼓舞との生(せい)の弛(たゆ)みを、女性(おんな)の花園(その)から男性(おとこ)へ還らす無憶の集成(シグマ)を用意して居た。
~自粛の独房(へや)~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji
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