先輩に退部を命じられて絶望していた僕を励ましてくれたのは、アイドル級美少女の後輩マネージャーだった 〜成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになったんだけど〜
第164話 美少女後輩マネージャーの親友は返事をした
第164話 美少女後輩マネージャーの親友は返事をした
一軍が紅白戦を行なっている間、二軍でもゲーム形式の練習が行われていた。
一軍は一面を使った実戦さながらの形式だったのに対し、二軍は半面を縦向きに使い、人数も一チーム六人だった。
一本目、
仲間は「気にするな」と言ってくれたが、焦りを感じていた。ここ数日、調子が安定しないのだ。
原因はわかっている。あかりだ。
彼女が悪いわけではないが、告白の返事が気になってしまってプレーに集中できないのだ。
週末の試合でも、後半途中から出番が与えられたがインパクトを残すことはできなかった。
むしろ、プラスかマイナスかで言えばマイナスだっただろう。
(やべぇ、このままだと三軍に逆戻りだぞっ……)
「
「ん? おう、サンキュー」
ドリンクを差し出してくれたのはあかりだった。
こうして彼女が自分から絡んでくるのは数日ぶりのことだった。
(告白して以来、あんまり話してなかったからな。ということは、もしかしてっ……?)
不安と期待を両方抱えた優に、あかりは周囲にバレないように
「今日、練習の後時間をもらえますか?」
「っ……!」
優はガバッと顔を上げてあかりを
「安心してください。きっといい話ですよ」
ふっと笑みをこぼし、あかりは立ち去った。
(……えっ? は? ま、マジ? えっ、そういうことだよなっ?)
あれだけの思わせぶりなセリフだ。
告白の返事でないわけがない。そして「きっといい話」ということは、一つしか解釈のしようはなかった。
「おい、百瀬」
「あっ、はい!」
チームメイトの先輩に呼ばれ、優は慌ててコートに向かった。
——その後、優は立て続けにゴールを決め、チームの連勝に大きく貢献した。
練習後。優はすぐにでもあかりからの返事を聞きたかったが、その前に「話がある」と監督の
「——
「はい」
「突然のことだが、今日限りで愛沢が部活を辞めることになった」
「みんな、中途半端な時期に辞めることになってしまってすまない」
玲子が深く頭を下げた。
それに対して部員やマネージャーからは、
「いや、むしろここまでやってくれて感謝だぜ!」
「これまでお疲れ様っ」
「寂しいですけど、玲子先輩と一緒にやれて楽しかったです!」
「彼氏とうつつ抜かさずに勉強しろよっ」
最後の部員の言葉で、玲子がサッと顔を赤くさせた。
当然、その反応には
引き止める者はいなかった。
決して人望がなかったわけではない。玲子が受験だけではなく幼い弟妹の世話までして忙しい毎日を送っていることは、全員がわかっていた。
むしろ人望があったからこそ、みんなが寂しさを覚えつつも快く送り出したのだ。
その証拠に、
「玲子先輩が泣いたとき、私ももらい泣きしそうになりました」
「俺もちょっときたわ」
優とあかりは、以前優が告白した彼の最寄り駅の近くにある広場内をゆったりと歩いていた。
二人の帰りは同じ方面で、あかりの最寄りまでの途中に優の最寄りがあるのだ。
木々に覆われて駅から完全に死角になったところで、あかりがピタッと足を止めた。
その表情は真剣だった。
(いよいよか……!)
優は身を固くした。
「この前のお返事、してもいいですか?」
「お、おう」
「まだ、百瀬先輩のことをめちゃくちゃ好きとかそういうわけじゃないですけど、これまでも仲良くしてくれてましたし、もっと先輩のことを知りたいとも思ってます。中途半端な気持ちで申し訳ないんですが、先輩さえ良ければお付き合いしませんか?」
「っ……ま、マジでいいのかっ?」
優は夢見心地で聞き返した。
「はい」
「おお、マジかっ……サンキュー! よっしゃあ!」
「お礼を言うのは私のほうだと思うんですけど」
試合で勝ったとき以上の
「いや、マジでオッケーもらえると思ってなくてさ。えっ、ドッキリじゃねえよな?」
「そんな性悪じゃありませんから安心してください。ただ、これは先にお伝えしておくんですけど、習い事とかであんまり多くの時間は取れないと思います。それでも大丈夫ですか?」
「おう、全然大丈夫だ。なぁ、タイミング合うときでいいから、で、電話とかしてもいいか?」
「はい。夜なら大抵大丈夫ですよ。あっ、なんなら今日しますか?」
「いいのかっ?」
優は勢い込んで尋ねた。
彼は寝る前の恋人との電話に憧れていた。
「もちろん」
あかりは笑いながらうなずいた。
「あ、あとさ、七瀬」
「はい」
「これももし良かったらでいいんだけど……朝とか帰りとか、たまにでいいから一緒に登下校しねえか?」
「いいですよ。曜日とか決めます?」
「おう、そうしようそうしよう」
優はノリノリでうなずいた。
彼は恋人との登下校に憧れていた。
——というより、青春っぽいこと全般に憧れているのだが。
「わりともうすぐ帰らなきゃなので、そこら辺の細かいこととか夜に決めますか?」
「そうだな。やべえ、楽しみで眠れねえ」
「夜なんですから眠れなくても大丈夫じゃないですか?」
「たしかにそれもそうだな。悪りぃ、ちょっと頭おかしくなってるわ」
優は深呼吸をした。
あかりはおかしそうに、それでいて嬉しそうにふふっと笑った。
「百瀬先輩って結構愉快な人なんですね」
「そ、そうか?」
「はい。なんか可愛いです」
「っ……!」
優は視線を逸らした。
可愛いより格好いいと言われたくはあるが、好きな人に笑顔で褒められて嬉しくないわけがなかった。
しかしあかりは勘違いをしたようで、
「あっ、もちろん格好いいとも思ってますよ? 真剣にサッカーしているときとか」
「ぐはぁ!」
優は胸を抑えた。
供給過多だ。このままでは心臓がもたない。
しかし、彼も男だ。やられっぱなしでいるわけにはいかなかった。
「……そういう七瀬のほうが断然可愛いだろうが」
「っ……!」
あかりの顔がサッと桜色に染まった。
顔を真っ赤にさせつつ可愛いと言われては、たとえ相手にゾッコンでなかったとしても照れてしまうものだ。
お互いにダメージを受け、気まずくも甘酸っぱい沈黙が流れた。
「で、では私は帰りますからっ。また夜に!」
「お、おう」
早足で去っていくあかりを、優は呆然としながら見送った。
完全に彼女の姿が見えなくなると、彼は悔しげに拳を握った。
「くそっ、指一本触れられなかった……!」
ざっくりとではあるが
その場で巧に電話をかけた。
『もしもし?』
四コールほどで電話はつながった。
優はあかりにオーケーをもらったことを伝えた後、手を繋いだりハグをするコツや手順を尋ねた。
『えー、なんだろ。付き合う前から流れで手繋いだりハグしたり頭撫でたりはしてたからなぁ』
「……そうかよ」
優はローテンションで相槌を打ちつつ思った。
こいつには二度と恋愛相談はしないようにしよう、と。
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