第161話 彼女に服を脱がされた
「そういえば
キスをしたりハグをしたりとスキンシップを取っていると、香奈がふと思い出したように言った。
「ん?」
「先輩たちから逃げちゃったあと、
「えっ、
「はい。泣いてる私をカフェに連れてってくれて、そこで告白されました」
「……えぇっ?」
巧は驚きに目を見張った。
香奈がクスッと笑う。
「いいリアクションです。もちろん断りましたけどね」
「いや、まあ、それはそうなんだろうけど……なるほど。僕たちをやたら見てたのは、香奈を狙ってたからなのか」
「みたいですね。もし私がオーケーしてたらどうしてました?」
「香奈を監禁して僕なしじゃ生きられないように調教してたよ」
「どういうふうに調教するんですか?」
「そこ乗ってくるんだ」
巧は頬を緩めた。
「だって気になるじゃないですか。意外とえげつないことしそうですし」
「そんなことないよ。っていうか嫌な想像させないで」
「ごめんなさい。お詫びに今日の夕飯の味見させてあげますから」
「ありがと。でもその前に、こっちの味見だけしておこうかな」
「こっち? ——んんっ」
巧は無理やり深い口づけを交わした後、「うん、甘いね」と笑った。
「っ〜!」
一瞬で真っ赤になり、香奈はソファーに飛び込んだ。
完全に自業自得とはいえ、巧は途中まで一人で夕飯を作る羽目になった。
夕食後に体を休ませていると、時刻はいつの間にか九時を回っていた。
いつもなら自宅に戻ってお風呂に入り、そのまま休むところだ。
しかし、巧は香奈の肩を抱いたまま、ソファーから腰を上げようとはしなかった。
明日から一週間は文化祭関連で忙しくなるだろうし、色々消耗しているであろう彼女を休ませたほうがいいことはわかっていた。
それでも、本音を言えばまだ一緒に過ごしていたかった。
もっと自分の欲に忠実になってほしい——。
香奈の言葉が脳裏に
「——香奈」
「なんですか?」
香奈が巧の肩にもたれかけさせていた頭をあげ、肩口から見上げてくる。
「今晩は一緒にいたいんだけど……いい?」
「っ……!」
香奈が目を見開いた。顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。
巧は誤解させていることに気がついた。
「あっ、もちろん無理やりとか香奈が嫌がることはしないよっ。ただ、今は離れたくないっていうか——んむっ⁉︎」
香奈がいきなり唇に吸い付いてきた。
びっくりして開いた口の中に、ニュルっと舌が侵入してくる。
(香奈っ……あっ)
巧が対応する前に唇を離し、彼女は
「心配しなくても、今さら巧先輩がそんな人じゃないってことはわかってますから。純粋に嬉しかっただけです」
「……そっか」
「はい」
香奈が再び唇を押し当ててくる。今度は一転して穏やかなものだった。
お互いに舌を入れることもなく、触れるだけのキスを繰り返した。
「ねぇ、巧先輩——」
香奈が甘えるような声を出した。
「何?」
「私も巧先輩と離れたくないです」
「うん」
「でも明日から文化祭準備も佳境なので、早めに休むべきじゃないですか」
「そうだね」
「だから、その……」
香奈は上目遣いで見上げてきて、
「お風呂、一緒に入りませんか?」
「っ……入ろっか」
彼女から一緒の入浴を提案されて、断れるはずがなかった。
元々、誘われなければ自分から誘うつもりだった。
「っ……!」
すわ出撃か、と準備を終えていたこういうときだけ要領のいいムスコを香奈になぞられたからだ。
「ふふ、巧先輩。ズボンとパンツ脱ぐの大変じゃないですか? 私が脱がせてあげましょうか?」
「い、いや、それは遠慮しておくよ」
こちらも魅力的な提案ではあるが、まだ若干恥ずかしさが上回っていた。
「それは残念です」
香奈が口元に手を添えて笑った。
「……私も脱がせてあげようかと思ったのに」
「えっ?」
パジャマを取りに行こうと自室に向かっていた巧は、勢いよく振り向いた。
(ちょっと待って、それだと話が変わってくるんだけど)
巧の中でプライドと欲望の協議が行われた。
——三秒後には、満場一致で香奈の誘いに乗るべきだという意見になった。
「ふふ、じゃあこっちも脱がしちゃいますね」
シャツを脱がせた香奈は、妖しげに笑いながら巧のズボンに手をかけた。
そしてパンツごと、一気に下げた。
「わあっ……!」
香奈が驚いたような、それでいて嬉しそうな声を上げた。
「なんか、あれですね……机の端で定規をしならせたみたいですね」
「例えなくていいから」
「この定規は何センチなんでしょうか? 私の持ってる十五センチ定規だと測れないかもしれませんね」
「……ずいぶん煽ってくれるじゃん」
やっていることはアダルトだが、香奈は無邪気な子供のようにあはは、と笑った。
その余裕を切り崩してやると心に決めて、巧は香奈を脱がせにかかった。
抱きしめるようにして、ブラのホックに手を回す。
「っ……」
「どうして離れるの?」
反射的に引かれた香奈の腰を抱き寄せる。
彼女は下着姿だった。身長差的に、むき出しのお腹に巧のモノが押し当てられる形となる。
香奈は恥ずかしそうに頬を染めたかと思えば、自らぎゅうぎゅうと抱きついてきた。
「っ……」
予想外の反撃に息を詰めた巧を見て、彼女はしてやったりと笑った。
——完全に巧の攻撃スイッチが入った。
「香奈、愛してるよ」
「っ……!」
「耳まで赤くなっちゃって、可愛いね」
愛の言葉を
外し終わって体を離すと、香奈の顔は真っ赤だった。
しかし、まだパンツが残っている。
巧は自分がやられたように一気にずり下げると見せて、その中に手を差し込んだ。
「あっ……!」
お互い裸になった状態で、巧は香奈に無言でポカポカ叩かれていた。
言うまでもなく、先程の「奇襲」に対する抗議だろう。
「今回に関しては香奈も悪いと思うんだ。あれだけ煽られたら僕もスイッチ入っちゃうよ」
「そ、それにしてもっ、あ、あれはさすがに……!」
香奈がうぅ、とうめいた。
「ごめんごめん」
巧は香奈の耳元に口を近づけ、
「——欲に忠実になっちゃった」
「っ〜!」
香奈が再び真っ赤になる。
まだお風呂前なのにのぼせちゃった? とはさすがに聞かず、巧は一足先に浴室に足を踏み入れた。
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