第一話 ; 触手は思いの外苦労する

……何処だここ……


見知らぬ地に私は放り出されていた。


近くには森や川があり、遠くを見渡せば町と王国?と山と海があって、その奥に禍々しい城があって……


『ウワァァァァ!!なんだこれ!!気持ち悪!!』


なんだ?僕はいつマサイ族にでもなったのか。


にしても、なんじゃこりゃ…

『し…視界が…十個もある…』


常に視界が安定しない。


360°余す事なく周りを見渡せる。


………おかしぞ?


『あ?え?な…なんだこりゃ?』


そこで僕は自分の身体の違和感に気づく


僕は……触手?になっている






『え!?僕触手になってる!!!!!?!?』








僕は自分の名前が思い出せない、この世界では無名の存在、


転生する前までは、どのような暮らしで生きていたのか、思い出せない。


転生前、自分の名前がどんな名前で、どんな場所で、どんな生活をしていたかも分からない。


異世界転生の影響か?


そして今、

……どうやら空洞状の狭い空間は、黒い光沢がかかった高級そうな壺の中にいたからだった


自分の身体は、赤い触手と目がついている触手が沢山生えていて、まさに触手の化け物と言った感じだ。


『ん~~、なんでいきなり触手のなんかになったんだ?』


異世界転生の条件でも満たしたのか?だとしたら殆どのパターンは、トラックに轢かれるとか、いじめっ子に殺されると…か………


………アレ?僕これ普通に上位互換じゃね?


そんなことはさておき


もしかしたら、死ぬ直前で触手なれたらなんて思ったから?


『異世界転生ってちょっと願えば簡単に叶うんだな。』


まさかの形で異世界ライフ入りを果たした。


……これからどうすっか


『何かできることは無いかな?』


そう思い適当に触手を伸ばしてみる、


すると、自分の触手は遠くに生えている大木に伸び、その大木を余裕と言わんばかりに、引っこ抜いた。


『・・・・・・え?』


いやいや嘘だろ


どう見ても触手一本で抜けるような木じゃないぞ

いやいやどうなってるの?


力もそうだけど、触手も良くあそこまで届いたな

自分の力どうなってるの?


そう思い慌てふためいていると


目の前に急に何かがあらわれた


『これは、ステータス表?』


_________ステータス_________

種族:触手

職業:剣士・魔術師・僧侶・重戦士・暗殺者・武闘家・弓使い・罠張り師・信者・忍者・召喚士・クリエイター

装備品 : 武器・無限の宝物庫

     防具・天照大御神への捧げ物

     アクセサリー・綾鷹、10人セット

能力 - HP:9999      受けている呪い

   攻撃力:9999     経験値増加

  防御力:9999     アンデットの呪い

   魔力:9999      オート回復(両)

   動体視力:9999    神の御加護

   俊敏:9999      職業レベルトレース

_______________________


なんやコリャ、


まるで子供が考えた僕の最強キャラみたいなステータスだ。


職業こんなにいらないよ、なんだよ全部9999って、一万にしろよなんなら


なんで綾鷹をアクセサリーとして身につけてんの?


呪い?とかなんだか知らないが、ステータスだけ見ると本当にセンスがない小学生が考えた、面白みのないステータスだ。


ただ魔術師や僧侶だったりと、魔法とかが使えそうな職業がある。


『もしかしたら魔法とかって使えたり』

そう思ったのもつかの間

また目の前に何かがあらわれた


『こ、これは…』


魔法一覧とスキル一覧が出てきた。


基本の魔法みたいな感じのファイヤーやウォーター、ブリザード、サンダー、エアロなど


上級の魔法ではヘル・フレイムやギガライトニングとか、そんな感じの物から


テレポート、サーチ、クリエイティブクラフト、フライ、タイムストップ、ディメンションウォークなど


攻撃として使わなそうな技もあれば


カッターイレイサーやアンチクリティカルなど、良く分からない物もある


『テレポートか〜』


テレポートは果たして一体どこにテレポートするのだろう


気にはなるがちょっとだけ魔法の試し撃ちをしたい

そうしてさっき抜いた大木に、ファイヤーを撃ってみた。


『ちょっとだけよん』


そして魔法を放った次の瞬間、


大木は少しの時間も立たずに炭に変わってしまった。


……ファイヤーってこんなに凄かったけ?


もっとこう、弱い火を放つのを想像していた。


自分の能力値が高いお陰か?だとしても少々燃えすぎなきが…


そのような事を考えていると


[な、なんだ!あの触手!]

[大木を抜いた挙げ句、それを一瞬で灰にしやがったぞ!]


どうやら人に見られたらしい


[おい、あんなの町の近くで放っておけるか!一斉にやるぞ!掛かれ!]


鎧を纏い剣を持った騎士の3人が、こっちに向かって来る。


おいおいおい不意打ちだと . . . ⁉


こんなの予想もしてなかった


『ちょっと待って!僕は何も悪さはしないよ!信じてくれ!』


[触手が喋るだと!?どういうことだ?]


[馬鹿野郎!気を取られた所を殺る作戦だ!喋ろうが喋らまいが、モンスターを倒すのが俺達の使命だ!]


[お、応!]


ま、まずい!このままではやられてしまう!

どんどん近づいてくる


『ヒェェェ!!』


咄嗟に壺の中に身を隠す


嗚呼、もうだめだ、おしまいだぁ。


騎士の一人が壺に向かって剣を振り翳す


壺が割れてそして剣で殺される…!


絶望に染まりアワアワしていると、

パキッ! と甲高い音が鳴った


嗚呼、絶対壺が割れた。


終わった、完全におわった


こんな危機的状況どう抜け出せばいいんだ


僕にこの状況から逃げ出す手口は、


逃げ出す手口、逃げ出す…逃げ出す…テレポート?


そうだ!テレポートでどっか遠くの場所にテレポートすればいのだ!


どこにテレポートするかはわからないが、今の状況から逃れられる唯一の方法、


『ウォォォォオオオオ!!どっか遠くに飛ばしてくて!!!』


そうすると自分をテレポートするのに成功した


これでなんとか逃げ出せた!!





[おいおいおい嘘だろ、あの壺どんな強度してんだよ]


[剣が折れるって一体どういう固さだ]


[しかも逃げられたし]


[兵長にどう報告すればいいんだ?]

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