第18話


 言葉のある人ばかりではありませんでした。母の母親、つまり私の祖母は、面接室に入る前から叫んでいました。入室しても私の方に決して近寄らず、たまに目をあげて私を少しだけ視界に入れては、手を小刻みにブルブルと振りました。


 ケダモノと同じ檻に入れられた羊のように、彼女は怯えていました。そして、酷い癇癪を起した子どものような金切り声で悲鳴をあげるのです。面接室の格子も、揺れていました。


 私には、本当に、何も差し出せるものはありませんでした。面接にやってくる人の顔を見ることも、何もできませんでした。あの仕切りの格子も、椅子の冷たさも、手錠も、何もかもが叫んでいて、震えていて、まるで台風の日に屋外に立っているようなものでした。


 どこから何が飛んできて何が起こるか、見当のつかない高密度の恐怖が、面接室中に渦巻いていたのです。それらは全て、私を刺して、刺して、刺していました。


 面会者は絶えませんでした。思うように食事が摂れないのは何も変わったことはありませんでしたが、ついに顎の筋肉が強くこわばり、口を開ける気にもならないのでした。


 やっと少しの量を口内に運んでも、喉にも何かが詰まっているような感じがして、うまく飲み込めないのです。水で流して飲むように食べるよう、担当の刑務官からは指導を受けましたが、やはりなかなか苦労しました。


 そのうち、椅子に座っているだけなのに、大変疲れを感じるようになりました。面会者の声に刺されながら、眠り込んでしまったこともあります。すると、なんとそれからしばらくの間は、面会がありませんでした。


 自分の死刑房で、私は眠りこけました。死刑房では、足を伸ばすことができ、適温が保たれていました。私の死刑房の天井は他の死刑房より高いらしく、立ち上がっても頭を打つことはありませんでした。


 素行の悪い死刑囚の部屋は、どんどん狭くなるのだと看守は言いました。しかし、どの死刑房も、四方八方を黒い金属に覆われているならば、外の天気や季節を感じることはできないでしょう。


 死刑房はうす暗く、どこかに電灯があるに違いないのですが、オレンジ色の光の中で横たわり、目で光源を探しても、見つけられた試しはありませんでした。


 用のない時は固く閉じている小さな窓があって、私が眠りから覚めると、いつのまにかプレートが置かれていることもしばしばありました。


 そして、本当に時々は、一切れの甘い果物や、砂糖菓子が一つか二つ貰えることもありました。


 甘味は、娯楽です。食べる前に、鼻腔や肺いっぱいににおいを嗅いで、嗅覚がすっかり慣れ切ってしまうまで、きまってそうしていました。それから舌先で舐め、ひとかけらだけかじり、いつまでも味がするように、いくらでも時間をかけて食べました。


 ああ、いつもこれがあればいいのにと思いました。とっておきたいとも思うのですが、衝動は私の理性よりはるかに強いのです。私は弱い人間でした。目先のことに流されます。


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