第16話 連鎖
目が覚めると、隣で寝ていた筈のマジカの姿が消えていた。
「…………」
オレは眠い目を擦りながら昨夜の出来事は全て夢の中で起きた幻ではないかと
オレは部屋を出て、一階の食堂へと移動する。
「ケン、おはよう」
食堂では既にマジカとヌスットが朝食の支度を始めていた。
「……あ、ああ。おはよう」
何時もと変わらない様子のマジカを見るに、やはりあれは夢だったのではないかという疑惑が頭を
「他の皆はまだ寝ているのか? 何時もは殆ど全員集まってるのに、今日は随分ゆっくりなんだな」
オレは
「バーカ、お前が何時もより早いんだよ。まだ6時前だぞ? 普段は8時過ぎまで起きてこない癖に。お前といいマジカといい、今日は二人とも何か変だぞ」
ヌスットがジト目でオレとマジカの顔を見比べている。
「…………」
どうやら思わぬところでボロを出してしまっていたらしい。
「……そ、それはそうと、ヌスットは朝が早いんだな。何時もお前が一番早起きなのか?」
オレは慌てて話題を変えることにする。
「いや、そんなことはない。一番はノーキンだな。とは言ってもアイツは朝起きたらすぐ大広間で筋トレしているから、ここに来るのは大体何時も7時くらいだが」
「……本当にトレーニングのことしか頭の中にないんだな」
「呆れた奴だろう?」
オレたちはコカトリスの卵で目玉焼きとスクランブルエッグを作ると、それらをコーヒーと一緒に胃の中に流し込んだ。
そうこうしている間に時刻は午前8時を回り、チュウチュウとユウキも食堂に現れる。
「……おい、何故ヌスットの機嫌を損ねたお前らがまともな朝食を食べておるんじゃ?」
コーヒーを飲みながらヌスットとダラダラ談笑しているオレとマジカを、チュウチュウが不思議そうに眺めている。
「うるせーぞ、ジジイ。今朝の朝食は各々が勝手に自分で作ったんだよ。それからアタシはサバサバ系女子だから、一度寝たら翌日には大抵のことは水に流しちまうのさ」
「……ふん。サバサバ系女子などという生物がこの世に実在するかどうかはこの際置いておくとして、ノーキンの奴はどこじゃ? もう飯を食い終わってトレーニングに戻ったのか?」
「……あー、そういや今朝はまだ見てねーなァ。ま、腹が減ればそのうち来るだろう」
しかし、9時を過ぎてもノーキンが食堂に来る気配はない。
ナマグサの死体が見つかったのが、昨日の今日だ。全員、嫌でも最悪の事態を想像してしまう。
「ノーキンの安否を確認しよう」
ユウキの号令で、オレたちは全員で大広間へ向かうことにした。しかし何時もその場所でスクワットをしてる筈のノーキンの姿はない。
ノーキンが重しに使っていたグランドピアノは、大広間の隅っこに置かれたままになっている。
「……ここにいないということは、考えられるのは二階の部屋の中ということか」
とユウキ。
「うむ。今すぐ確認するべきじゃろう」
オレたちは階段を上がり、ノーキンの部屋の前へと向かう。
「おいノーキン、起きろ!! テメェ何時まで寝てんだッ!!」
ヌスットがドアを叩きながら呼びかけるが、やはり返事はない。ヌスットがドアノブを握ってみても、施錠されているようでドアが開く様子はない。
「……ダメだ、開かねェ。ドアに鍵が掛かってるみてーだ」
「……もしかしてやけど、何時も裸でおるもんやから、風邪で寝込んどるだけやったりしてェー」
「…………」
マジカが顔を引き
「……チッ、仕方ねェ。かくなる上はアタシの『開錠』の魔法で!!」
「待て」
ユウキがヌスットの肩に手を置いてドアを開けるのを止める。
「ユウキ、何故止める!?」
「部屋に入る前に一つ確認なんだが、ノーキンがボクたちの中の誰かに殺された可能性はどれくらいあるんだ?」
「……あァ!? この状況で何を言っている? ノーキンが日課のトレーニングもせずに部屋から出てこないなんて、奴の身に何かがあったとしか思えないだろうが!!」
ヌスットが苛立った様子で、肩に置いたユウキの手を払い除ける。
「そこまではいい。次が問題だ。たとえばヌスット、お前にノーキンを殺すことはできるか?」
「馬鹿を言え。不意打ちでもしない限り、アタシがアイツに勝てるわけがないだろうが!! 一対一の単純な戦闘でノーキンに敵う奴などそうそういない!!」
「……うん。先にそれだけ確認しておきたかった。では、早速部屋の中を調べてみよう」
「…………」
――何だ今のユウキの質問は?
それ程緊急性がある質問とも思えなかったが、オレが気付いていないだけで何か重要な意味が隠されているのか?
ヌスットがドアに掌を
「ノーキン、今行くぞ!!」
ヌスットがドアノブを握ると、今度は難なく部屋の中に入ることができた。
――そこには、背骨が有り得ない方向に折れ曲がった、ノーキンの変わり果てた姿があった。
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