コロッケふたつがうごめいて
私はハムスターが大好きなのである。
ハムスターを二匹飼っている。彼らは私のことを認知しない。目が合わないのだ。たまらなく良い。コミニュケーションが取れぬと思えば、ただひたすらに愛でるしかないのだから。彼らは人間の一個体の大きさを把握しておらず、手や脚に容易く乗っかる。きっと彼らは、我々に手でゆっくり持ち上げられても、多少の地殻変動としか思っていないのであろう。
餌を食べている姿なんかは、一層愛らしい。私は特段、上からその様を見つめるのが好きで、先ほどまで駆け回っていた小さな毛玉が、ほぐほぐ、と音を立てては少しずつ膨らみ、子供用のコロッケくらいの大きさにまで膨れていくのを真上からじいと眺めては楽しんでいる。
巣材を一生懸命集めて作った、小さな小さな家の中に、ぐむぐむ、と押し込むように体をいれてすっぽりと入ってしまえば、一瞬だけなんの生き物もいないケージがぽつんとあるように見える。その後、カリ、コリリ、と気に入った餌から齧り始める小さな小さな音が聞こえて、数十秒もすれば随分スマートになったハムスターが凛とした顔で出てくる。そうしてまた、滑車を駆けては、水を飲み、巣材を集めて、家に帰って行く。一日に二、三回これをやることから、彼らの一日はきっと私たちの感じる一日より遥かに短いのではないか、と考えたことすらある。(実際は陽が暮れるのは互いに同じであるから、変わりないだろう)
とかく、ハムスターは愛おしい。
こうして彼らがコロッケと呼ばれてまで集めた餌は、掃除の時に汚れた巣材と共に捨ててしまう。彼らはそれを知ると、ケージ内を何度も何度も歩き回り、自分の隠した餌を探すのだ。
大変申し訳ない。しかし、これもまた愛い、可愛らしいのである。私の大切な二匹のコロッケ達は、今日も頬に餌を詰め詰め、むぎゅ、と家に帰って行く。
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