睡眠薬とサンゴ礁

 ここ最近は全くと言っていいほど眠れていなかったため、お医者様より新しく薬を頂戴した。

 なんでも、これ以上同じものを増やしても耐性と増量のイタチごっこだというので、新たに、普段は精神系に使われているおくすりをいただいた次第である。


 これがなんと心地のいいことか。

 今までラッシュ時のサラリーマンのように押しては寄せていた考え事が、くわり、と溶け、句読点をうつごとに微笑みが溢れるような気持ちがする。

 まるでパラオかどこかの美しいサンゴ礁を泳いでいるような。脳内でひしめき合っていた雑多な思考は、端正なバリスタの注ぐラテやブラックコーヒーに注ぐミルクのように艶やかな曲線を保って眠気にふうわりと混ざっていく。今日は悪癖に抗えず歪なコブをこさえてしまったから。さあ、意識が柔く広げた指の隙間からサラサラとこぼれていく。おやすみなさい、といこう。

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