第5話

次は視聴覚室だった。


「視聴覚室もさ、図工で作ったものの展示とかにしか、使われてないよね」


夏香が視聴覚室の扉を開く。その奥には、カラフルなライトばかり。


「これ、何?」


「二年生でしょ。ペットボトルにカラーテープ貼って、ライト当てるやつ」


覚えてないの?と夏香は作品をひとつ、手に取った。


「こんなゴミみたいなの、作って何が楽しいんだか」


紬は、夏香の真似をするみたいに、ペットボトルをつまみ上げてそう笑う。


「あんただって楽しんでたくせに。カラーテープ重ねすぎて、色が真っ黒になって拗ねてたでしょ」


視聴覚室にも同じように小さなステージが設置されている。


でも、いつもは暗幕がかかっていて誰も使わない。


「とにかく、さ。こういう静かなところを探し続けてたら見つかるよ」


紬は暗幕を開き、また同じようにステージに立った。


夏香は今度はステージに上がらず、紬と向き合うように立ち尽くしている。


「……なに?」


痺れを切らした紬が、ステージから降りようとする。


「待って。……この前の劇、やってよ」


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