第2話「大好きな君へ」

あの日みた

君はもう

何処にも居ない


空ほど自由な場所はないと

余命を告げられても笑った君は

星になって降ってくると


またここに来るよ、と

笑ったから


僕は涙より前に

君を抱きしめた


その体温が

いつか消えると

また涙が込み上げて


でも君は僕をもっと強く強く抱き寄せて

大丈夫、大丈夫だよって

そう頑なにいなすから


うん。うん。って僕は。


そうだよねって。僕は

そう、君を優しく抱き返して


大丈夫、大丈夫、って、君に言うけど


本当は怖くて

ずっと生きてほしくて

どこまでも僕と生きてほしくて

崩れそうで壊れそうで

苦しくて痛くて辛くて

目まぐるしいほど

君は僕の中には居て

君を失ったら

きっともう、力が出なくなると思う


生きることが本当に虚しくなると思う


だけど君はやつれていって

そのたびに胸がえぐられるほど痛くて


でも君は弱音一つ言わないから

いつも笑って僕に語り掛けてくるから

痛いはずなのに

苦しいはずなのに

それなのに君は、君は


本当に優しい


やさしすぎるよ


もういいんだよ

泣いて

わめいて

散らかしたっていいんだよ


でも君は結局最期まで優しかった

笑っていた


僕にとって君は何物にも代えられない

大切なただ一つだった


だけど消えてしまった

それでも最期まで笑った君の

そのどこまでもお人好しで

どこまでも場を明るくしようとする

そのぬくもりを


心配させないようとするその気遣いを

僕は確かに受け取ったから


歩き出そうと思う


空ほど自由な場所はないと

君は言っていた

ならこの地上にいる今は、きっと不自由だ


確かに不自由だよ


でも、歩いて行こうと思う

この地を踏みしめて

君と出会った、不自由で愛に満ちていたこの地上で


歩いて行こうと、思うんだ。


君は、笑うかな?

いいや、きっと笑うだろうな


大好きでした。

大好きでした。

本当に大好きでした。


もう二度と出会えないけど

それでも笑って生きます


君も笑ってください

僕が居なくても

笑って生きていることを願っています。


それでは。


さよなら。


大好きな君へ。

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