二人の青年の出会い
「お前、合法的に人を殺せるからって暴力にまみれた犯罪者の俺を戦争に行かせるつもりだろ?」
目の前の青年、磯谷は少しの動揺も見せず、俺に返答する。
「あくまで、犯罪を犯した青少年の救済ですよ。」
「ふっ(笑)」俺は磯谷の潔さに笑っちまう
「なぁ~?お前年いくつだ?」
「28」
「下の名前は?」
少し恥ずかしそうに目を泳がせながら磯谷は応える
「太郎…」
「なぁ太郎…俺って自衛隊員になるしかねぇのか…」
磯谷は俺の気まぐれで発した質問に戸惑っていた。
「えぇ…まぁそうです。けどね、豊?今から君に戦争の歴史話を簡単にしたいのだけど?これも仕事の一つでね」
磯谷は、少しプリプリと怒った様子で俺を下の名前で呼んだ。
磯谷と俺、狭い部屋で目を合わせる。
豊って言った…「太郎…俺の下の名前…」
磯谷太郎は、申し訳なさそうな表情で机に俯いていた。
「少し生意気な豊にやり返したかったんだ。勝手に私の下の名を聞き出してきて、太郎と呼んじゃうのだから…」
自然に二人の青年は、タメ語で話していた。
「太郎、その戦争の話、聞かせて貰おうか~?」
わざとにっこりとして、太郎にお願いする。
「うん…ありがとうそれじゃ、ちゃんと聞いてくれよ…」
太郎にとって、兵士志願候補に戦争の話をするのは、これで10回目だった。
そして、生き別れた弟の世話をしてくれた、目の前の木崎豊に感謝したくてしょうがなかった。豊の舎弟であった次郎。次郎と再会したのは、まさしく、今、豊と磯谷青年がいるこの取り調べ室。次郎から豊の人柄は、聞いていた。面倒見の良いぶきっちょだがクールな青年だと…豊の下の名をさりげなく呼んだのも、まぁ賭けに出たのだ。何より、豊を刑務所送りにしたくなかったし…
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