豊おじさんの人生
俺は今日とことんついてなかった…海岸沿いに建てた掘っ立て小屋のアジトがばれ、雨降りしきる中、ポリ公に追われ捕まった。
今は、警察署の中、はげ頭の署員とデスクを挟み、座りあっている。俺のうしろには、もう一人警官が立つ。
俺はこの場の空気に耐えかねて目の前にいるはげ頭に「ラジオを付けてくれ」と頼んだ。
そいつは気だるそうな様子で、デスクの上にある抹茶色の小さなラジオのスイッチを押した。
流れてきたのは20年以上前に流行ったグループサウンズで、テケテケと陽気に鳴るギターの音色が耳障りだった。
30分待ってようやく、タバコと乾いた血の匂いがする取り調べ室へと連れてかれた。
額にたまつぶの汗を浮かべたベテランの刑事にみっちり2時間しごかれ、「お前に用がある奴がいるとよ…」と言い置かれ、俺は部屋に一人になった。
数分後、取り調べ室に入ってきたのは茶色の丸縁メガネを掛け、ダークブラウンのスーツを着た、日本人か中国系移民の青年だ。
「こんばんは、木崎さん。」
俺を名字で呼んでくる。
「座ってもよろしい?」
俺は青年を案の定無視してやる。
日焼けしてない色白な手を俺に差し出してきた時は腹が立った。
こういう奴は無視に限るが、どこかユーラシア大陸で戦死した弟(血は全く繋がってない所属したギャングの舎弟)に雰囲気が似ていなくもなかったから殴るのは控えてやった。
「私の自己紹介を簡単に、日本政府の機関、防衛省で働く、青年官僚の磯谷と申します。」
「木崎さん、貴方は日系2世だ。日本をアメリカとナチが南北に分断した、南北戦の10年前にお父上がアメリカへ母上と貴方の年の離れたご兄弟とともに移住されてる。
お父上は酒に酔いトラックに跳ねられ亡くなり、母上も精神の病で入院されてらっしゃる
貴方のご兄弟はアジア系のギャング組織を設立され、血で血を洗う抗争で多くの関係のない民間人の死者を出した…」
俺は目の前に座る青年へ向け言った。
「兄貴たちは死んだぜ…とっくに…」
「それは気の毒に、ただ木崎さん、今回捕まったのは組織内の内輪もめに関する案件だと刑事から、聞きましたよ。」
バコンッ(机の足を蹴る)
「お前に何が分かる?どうせおりゃ刑務所送りだ!」
「ただ、そうとも限らないとしたらどうでしょう?」
「ア~ン?」コイツは何が言いてえ…
「そうか!」
俺はある取引を持ちかけられてる事に気づいた。
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