34.森に現れたオーク達

 エルフの子供を迎えに来たエルフによって、新しい情報を得た俺。でもそれ以上レイナさんに聞けるはずもなく。俺は早くみんな帰って来てくれと思いながら、ソファーの上でゴロゴロしていた。


 そして夕方、ようやくシャインとフラフィーとラピーが帰って来てくれた。


『ただいま!! 帰ったぞ!!』


『ティニー、元気!? 何もなかった!?』


『ちょっと遅くなったぁ。ごめん』


「ばぁぶ!! ばぁ!!」


 みんな!! お帰り!! と返事をする俺。良かったよ、みんなが帰って来てくれて。これで色々聞けるぞ。と思っていると、隣の部屋で何か作業をしていたレイナさんが、シャイン達が戻ってきたことに気づき部屋に入って来た。


「みんな、お帰りなさい。向こうはどうだったかしら?」


『う~ん、たぶん大丈夫だった!!』


 だった? だったとは? 行ったんじゃなかったのか? 何処に行ったのかは知らないけど。


『ぼく達が行った時、みんなまだ帰って来てなかったぁ。でもその後にママが大丈夫だってぇ。だからたぶん、みんな大丈夫ぅ』


『みんな今日は反対側にいたんだよ』


「そう、アイラさんがそう言ったなら大丈夫ね」


『ねぇねぇ、帰ってくる時、周りをちょっと見て来たら。あっちの家の方、みんなが集まって何かしてたよ? みんな何してるの?』


「ああ、あれはね、みんなのご飯とか、もし避難になった時に必要な物を用意しているのよ」


『準備?』


「そうね、あなた達は避難になれば、そのまま全員で、場所を一気に移動しちゃうから、準備はあまりしないのかしら? 私達は移動しても、そこですぐにいつも通りの生活ができるわけじゃないから、色々準備をしておかないといけないのよ」


『みんなの分?』


「ええ、そうよ。でも流石に里のみんなの分を、あなた達が今見て来た人達だけで作るのは難しいから、別の家でも集まって用意しているはずよ」


『ふ~ん。じゃあティニーの分も?』


「ティニーの分は私が用意しているわ。今準備していたのよ」


『見ても良い?』


「ええ、良いわよ」


 待ってくれ。その前に俺に話しをさせてくれ。思わず会話に入る俺。


「あぶう!!」


『ん? ティニーどうしたのぉ?』


「あぶぁ、あぶう? あぶぅ!!」


 今のはみんなどうしたんだ、何かあったのか? 俺に教えてくれ! って。


『あれ? ティニー知らない?』


『いっぱい居るのに?』


『うじゃうじゃいるぅ』


 え? うじゃうじゃうじゃ居る?


「ああ、そういえば、人は気配を感じるのがあまり得意ではなかったのよね。赤ちゃんなら尚更だわ。もしかして今までずっと心配していたのかしら。ごめんなさいね。エルフの子と同じようの接してしまっていたわ」


 そうしてみんなが話してくれたこと。さっきの家にきたエルフが言ったことで、もしかしたらとは思っていたけど。やっぱり面倒なことが起こっていた。


 みんながバタバタし始めた時、俺だけが気づいていなかったけど、みんなある危険な気配を感じていたんだ。それはオークジェネラルとたくさんのオークとハイオークの気配だった。

 簡単にオーク達の説明をしてもらったけど、まぁ、大体小説に出てくるオークと同じ感じで。


 姿は、頭は豚で太っていて、人みたいに歩いたり武器を持ったり。魔法を使う奴もいるらしい。それから色は緑っぽいと。フラフィーが気持ち悪い色と言っていた。

 そしてオーク達が来るのは、自分達の住処を広げるためや、食料を求めてだったり、力を求めてだったり。

  

 後は繁殖ね、とレイナさんが。それについては詳しくは話さなかったけど、たぶんこれも小説と同じなんだろう。自分達の繁殖のために、生き物なら何でも襲うんだろうな。その対象にエルフも含まれるんだろう。

 そんな事になっていなければ良いと思うけど、小説のような悲惨な光景が広がっていたら嫌だな。


 それでその面倒なオーク達なんだけど。そのオーク達が急に現れたらしいんだよ。それでみんなが急いで動いたんだ。


 と、ここまではレイナさんとシャイン達が話しをしてくれたんだけど。ここからはシャイン達と一緒に、レイナさんの話しを聞くことに。エルフがこういう何か問題が起きた時に、どうやって動くのか、みんな知らないから興味があるみたいだ。


 まずミルバーンだけど、今頃ミルバーンは、オーク達と戦うことになるかもしれないから、何処かで待機しているんじゃないかって。ミルバーンは里の中でもかなりの力の持ち主だけらな。やっぱりこういう時は、最前線に出るらしい。


 他のエルフ達も、元々何かあった時には、そのエルフは何をするっていうのは決まっているらしく。そしてそれぞれに指示する人達がいて、今頃その指示に従って動いているって。


 他のあまり戦闘が得意じゃないエルフ達は、戦うかもしれないエルフ達のための、サッと食べられる、栄養満点の食事を作っている。エルフ特製の疲労回復と、魔力回復の薬を入れて。


 それだけ戦いが続くか分からない時、いくら強いエルフだって、ずっと戦うことはできないから。誰かと交代で少し休憩して、その時にご飯を食べたり、休憩せずに戦いながら、さっさとご飯を食べたり。……食べながら戦うって凄いな。


 だからなるべく食べやすく、栄養満点のご飯が良いんだよ。ただ、このご飯が結構人気で、こういう時じゃなくても食べられているらしい。


 それでその戦闘用のご飯を作っているエルフ達が、避難するエルフ達用のご飯み作っているんだ。もちろん先に、戦い関係のエルフ達の分を。それが終われば他のエルフ達の分を。

 レイナさん曰く、だいぶ時間が経っているからもう、避難する人達の分を作っているところじゃないかって。


『ご飯、大変なんだな』


『僕達は食べても吸っても、どっちでも大丈夫』


『少しだったら何もなくても大丈夫ぅ』


『でも、真っ黒になっちゃうとダメだもんな』


 真っ黒? 何だ?

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