31.本当に問題発生? 誰だミルバーンの邪魔をしたのは!!

「すぐにもう1回よ!!」


「あ、ああ」


 事態を飲み込めていない俺。ミルバーンも俺と同じようだった。でもレイナさんにバシッ!! と背中を叩かれて、すぐにミルクを再開したんだけど。

 なんとなんと、2回目も成功したんだ。それを見て、またまた騒ぎ始めるシャイン達。ミルクを飲ませてもらっている時は静かになったんだけど。


 ただ、そんなミルクを飲ませてもらった俺も。おいおいおい、まさかそんな!? って。明日本当に何かあるんじゃないか? なんて思ってしまっていた。


 レイナさんにまた、すぐに次よ、って言われたミルバーンに。3回目のミルクを貰った俺。そうだ、そのまま。そのまま。ゆっくりだぞ。


 こうしてまさかの3回目も成功しようとしていた、その時だった。今まで上手にできていたのに、急に鼻の方へミルクが流れてきたんだ。


「くえっ!?」


 変な声が出てしまった。ほんの少し鼻に入っただけだったから良いけど。何だよ、ここまできて、とミルバーンを見れば、ミルバーンは俺じゃなく横を向いていて。しかも何故か、あのゴブリンを倒してくれた時のような、厳しい表情をしていたんだ。


 ん? どうしたんだ? 変に思いながら、レイナさんの方も見る。いや、鼻の方へミルクが流れた時は、鼻に入る前にいつもレイナさんが止めてくれていたのに、何故か今回は鼻へミルクが入っても、一向に拭いてくれる気配がなかったからさ。


 そうしたらレイナさんも、ミルバーンと同じ方を見ていて、厳しい表情をしていたんだ。なんかその姿がとっても綺麗で、数秒レイナさんを見つめてしまった俺。だけどすぐに現実に戻り、今度はシャイン達を見ている。


 するとどうした事か、シャイン達もミルバーンと同じ方を向いていて、それからとっても睨んでいたんだ。


「あぶぅ? だぁう?」


 みんな? どうしたんだ? とそっと声をかけてみる。と、最初の反応してくれたのはレイナさんだった。


「あ、あら、ごめんなさいね。ミルクが鼻に入っちゃったわね」


 そう言いながら、いつもの優しい表情に戻って、俺の顔を拭いてくれるレイナさん。


『ティニー! 俺達母さんの所に行ってくるな!』


『すぐに帰ってくるからね、本当だからね。うんと一瞬は無理だけどすぐだよ!!』


『うん! すぐに帰ってくるぅ!! だから待っててぇ』


 急にそう言ってきたシャイン達。俺が分かったと返事をすれば、一瞬でその場から消えた。力を使う方の移動手段か、それともただ移動して行ったのか。

 力を使い一瞬で移動する移動手段は、もちろんその場で消えるけど。ただ移動するだけの方も、俺にはその動きが早すぎて、消えたように見えるんだ。


 と、シャイン達とそんなやり取りをしていると、今度はドアをバンバン叩く音が。


「エレノア!! そんなの大きな音を立てなくても聞こえているわ!!」


 ドアを叩いているのはエレノアさんらしい。気配で分かったのか、あおれともいつもエレノアさんは、こんな感じだからなのか。。


「ミルバーン!! オーレリアス様が召集をかけたわ! レイナさんはティニー達達といて欲しいと!!」


「分かった! 行ってくる」


「ええ。こちらの事は任せて。シャノンに気をつけてと」


「分かった」


 ミルバーンがすぐに2階へ行き、バタバタと音が聞こえ、すぐに1階へ戻ってきた。手には首掛けカバンを持っていて、それにパンを詰め込むと首から下げ。

 そして俺の所へ来ると、ジッと俺を見た後、ぽんっと軽く頭に手を乗せ、すぐに家から出て行った。


 どうしたんだ? 今までにミルバーンは、俺にこんな事をした事なかったし。それに何だろうな。みんながこれだけピリピリしているのも初めてだ。もしかして何かあったのか? 

 ここは俺が生きていた地球とはまったく違う世界。俺の知らないどんな事が起こってもおかしくない。


「さぁ、みんなちょっと忙しくなってしまったけれど。私達はいつも通りだから、まずはご飯を終わらせてしまいましょう。でもその前に顔をもう1度綺麗にしましょうね」


 タオルでそっと顔を拭いてくれるレイナさん。綺麗にする魔法があるんだから、それで綺麗にしてくれれば良いと、前はそう思っていたんだけど。これは俺と触れ合うためらしい。

 ほら、魔法だけだと、大袈裟にいえば俺に一切触れる事なく、全てを終わらせる事ができるだろう? まぁ、ご飯とかは別として。


 でもそれじゃあね。話しをしながら触れ合いながら、俺のことを知っていって。俺も相手もことを知っていく。表面的なことだけで、相手を分かったつもりになってもしょうがないし、何も触れ合いがないんじゃ、寂しいだろ?

 だから魔法を使わないスキンシップも、みんな大切にしてくれているんだ。この辺は地球と変わらないなぁって思う。


 そうして顔を拭いてもらったら、残りのミルクを飲ませてもらい、その後はソファーに置いてあった俺が寝る用の籠へ。レイナさんは食器を片付けると、俺の様子を見ながら、その日の家事を初めて。


 うん、俺の所はいつも通りの日常だ。違うことといえば、レイナさんの怒る声と。バタバタとエレノアさんが出している、何らかに音と、ミルバーンのぼやきが聞こえない事か。


 いや、そんな声や音、聞こえなくても良いんだけど。煩かったのが毎日のことだったから、なんかおかしな気がする。


「あ、そうだわ。今は誰もいないからあれを持ってきましょう」


 途中で手を止めたレイナさん。2階へ行くとすぐに戻って来て、俺の横にあれを置いた。ミルバーンのリス魔獣のぬいぐるみだ。


「みんなが帰ってくるまで、私の仕事が終わるまで、その子と一緒にいてね」


 ほぼほぼ俺の背と同じくらいの大きなさの、このぬいぐるみ。ミルクの時だけはいつも別の場所に避難させているんだよ。ミルクが付くといけないからな。

 そんな持って来てもらったぬいぐるみを見ながら、早くシャイン達が戻ってこないかと。そして何が起きているのか少し心配しながらも。時間がどんどん過ぎて行った。

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