第2話誰も褒めてくれないな
ママはさっさと出かけて行った。
今日は学校も休みだし、家には私しかいない。思いついて、外へ出かけてみる。
運悪く、今日は雨だ。
私のいいとこ教えてよ。
近所のお家の柵の向こうの犬さんに行ってみても答えは返ってこない。
壁の上を歩いていく猫さんに呼びかけてもこっちを向いてももらえない。雨に濡れた体をぷるぷるして、さっさとどこかに行ってしまった。
天気のせいかな誰もいないの?
怒って出てきたのに、悲しくなってきて。
帰ろう、もう帰ろう。
1人で歩く帰り道、お父さんがいたら何か言ってくれるんだろうか?それともママと同じに、やっぱり何も言ってくれないんだろうか。
疲れて寝て、起きたらママがいて、また何か電話に喋ってる。私じゃない。誰かと。
私に気づいて樟葉に変わるわねと言うと、手招きをする。
おばあちゃんよ、と。
おばあちゃんは、優しい声で。
大丈夫か元気にしとったか、ばあちゃんは元気だぞ。
その声が優しくて。
いい子にしてたかと尋ねたときに。
涙が出てきた。
え〜んっ
驚いたおばあちゃんの声が私の耳に届くけど。そばにいるママがどうしたのと言うのも聞こえるけれど。
涙が止まらないの。止められないの。
何か喋ろうとして。
え〜んと泣ける中で、おばあちゃんに言う。
私の良いところがないの。
どこにもないの。
いい子じゃないのかもしれない。
葛葉ちゃんはいい子よお。こんなおばあちゃんの話一生懸命聞いてくれるよ。ママから聞いてるけど、宿題もちゃんとやってるんだって。
おばあちゃんがそうやって言ってくれるのだけど。
よそ行きの慰めるためだけの嘘じゃないかなって思ってなおもおばあちゃんに言う。
だってママ言ってくれないもん。ママ言ってくれないんだもん。全然言ってくれないんだもん。だめよって言うけど、いいよって言ってくれないんだよ。素敵ねって言ってくれないんだよ。褒めてくれないんだよ。
ママは毎日私にきれいって聞いてそうだねって言わないと怒っちゃうのに。
だから、私いい子じゃないんじゃないかなぁ。ダメばっかり言われるから、言われるからダメなんじゃないかな?いらないんじゃないかなぁ?
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