第2話 調査

 ぼくの学校は日曜でも校門があいている。だから校庭には今もボールで遊んでる子や、いつもはなかなかあいていないドーナツタワー なんかの遊具で遊んでる子がいるけど、やっぱり日曜だから、そういう子たちもほんの少しで静かなもんだ。遊んでる子たちの声なんて、 遠くで鳴いてる鳥の声くらいにしかうるさくない。そんなだから、校庭のはじっこのはじっこのきみょうな物体をぼくが調べていたって誰も 気になんかしない。

 「よし」

 ぼくは気合を入れて、ペチペチと便所の上のところをたたいてみた。

 ――。

 「ん?」

 なんか便所のひょうめんのコンクリートのこまかいボコボコにそってついてるまだらのよごれ模様がゆらっとゆれたみたいに見えた。

 ぼくはもう一度たたいてみる。

 「ペチペチ」

 ゆら……

 「!」

 あっと思った瞬間、ぼくは夏の太陽の光をいっぱい受けた時の、鏡の反射みたいに、まぶしい光が便所の穴からあふれるのを見たんだ。


 ――あれは宇宙人のUFOだったんだ……。

 光の中でぎゅっと目をおさえながらぼくは思った。


 光がおさまったから、ぼくはそっと目をあけてみた。そこは真っ暗なところだった。そしてぼくはその真っ暗の中で、「渦」の上 にのっているのだった。チャプチャプ音をさせている、竜巻のような水の「渦」は、ぼくをおし上げるみたいに上に向かってゆっくりゆっくり流れていたんだ。 そこは真っ暗なはずなのに、「渦」は、日光を浴びた時の小川みたいにところどころきらきら光ってきれいだった。

 この渦はいったい何なんだろう。

 でも渦の一番上にいるぼくには渦の中なんて見えないんだ。

 よし、それなら渦の中にもぐってやろう。水泳は得意なんだ。

 ぼくはおもいっきり息をすい込むと、渦の中に頭をつっこんで、いっしょうけんめい両手をかいて渦の中を下に向かって泳ぎ始めた。

 渦の中はやっぱり光があたったみたいにところどころ光っていたんだけど、「正体」なんてわからない。いくら泳いでも、きらきらばかりで 「源流」にもたどりつかない。ぼくは苦しくなってきた。でも上までもどっていたら、その間に死んじゃうよ!でもこれは竜巻みたいな水の柱なんだっけ。 そうだ、それなら横から首を出せばいい!

 ぼくは渦の中で90度回転して下に向いてた頭を横に向けた。そして、うんと首を流れの外につき出した。

 「あ!」

 真っ暗の代わりに、またまぶしい光がぼくの目をおそった。ぼくはまたとっさに目をとじてしまったんだ。

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