第7話

 8月11日の朝、ひなこは悠ら冒険ごっこと称し、何か面白いものがないかと町内を歩いていた。すると、向こうから疲れた顔の優が歩いてくる。友達らしき人物も一緒だ。2人は大好きな優兄ちゃんを見つけて大喜びで2人の下に走っていく。

「優兄ちゃん!」

 悠が嬉しそうに大きな声で名前を呼び、手を振る。名前を呼ばれた優は悠とひなこに気づくとほほえみながら手を振り返す。

「おー、こんな朝早くから探検ごっこか?元気だなー。さすが小学生」

 そう言いながら悠とひなたの頭をグリグリと撫で回す。2人は嬉しそうに満面の笑みだ。

「え?ロリコン?」

 優の隣に立っていた人物が引き気味に優に尋ねる。

「ちげーよ、人聞きの悪いこと言うなよ。前に話した、鍵忘れた所を面倒見てやって仲良くなった子だよ。女の子はその仲良しの友達。男の子が悠で女の子がひなこちゃん。そして、こっちは俺の大学の友達の裕太」

「あぁ、前に話してた子達か」

 裕太が片手をあげ、よろしくと2人に挨拶をする。2人も笑顔でおはようございますと返事をする。

「めっちゃいい子達!!」

 2人の可愛らしさに裕太の顔も思わず綻ぶ。

「優兄ちゃんなんだか元気ないね、夏バテ?」

「いや、まあ、そんなんじゃないけど……」

 優は言葉を濁す。隣にいる裕太もどこか気まずそうにしている。優はそれから話題を変えるように子どもたちに話しかける。

「そう言えばさ、夏休み入るときに教えてもらった川に入ってはいけない日ってあったじゃん?あの日、ちと用事があってその前通ったんだけどさ、あの日はそもそもチェーン張られて入れないのな」

「そうだよ、絶対入っちゃダメだから、入れないようにするんだってお父さんが言ってた。公民館にも張り紙されてたり、回覧板にも書かれたりしてるってお母さんも言ってた。」

「そう言えば、あの人たちはちゃんと帰ったかなあ」

 ひなこがぽつりとつぶやく。

「あの人たち?」

 悠が聞き返した。

「そうなの、私達一昨日、家族でバーベキューしてたんだ。いつもはバーベキューすると暗くなるまで遊ぶんだけど、一昨日は今日は早く帰ろうねってパパもママも言ったから、バーベキュー食べたらすぐ帰ることにしたんだ。そしたらね、男の人と女の人が川のすぐそばにテント張り始めたの」

 悠は何かに気づいたようで顔をしかめる。ひなこは、悠のその反応を見て、わかってるとでも言うように頷きながら話を続ける。

「それでね、泊まると10日になっちゃうでしょ?入っちゃいけない日になっちゃうからってパパもママも心配して、私たちが帰る時、パパが早く帰りなさいってその人たちにも言ってたんだけど、ちゃんと帰ったかなぁ」


「よし、心配なら見に行ってみようぜ。」

優が言い出し歩き始める。

「お、おい、待て待て」

 裕太が止めるが、

「いや、ほら、気分転換大事だからさ。今は俺らも待つことしかできないだろ?何もないだろうけど散歩がてら行ってみようぜ」

「うん。まあ、それもそうか。そしたら、ちびすけ2人、一緒に行くか」

 裕太がそう言うと、ひなこが怒った顔で応える。

「ちびすけじゃない!!悠くんとひなこ!!」

 優と裕太はその可愛らしい怒り方を見て、穏思わず笑みがこぼれる。この数日間、忘れていた穏やかな気持ちを取り戻した瞬間だった。





 



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