第4話

「桜介、桜介起きて」

 呼びかけながら肩を掴んで揺さぶる。

「うーん……どうした?すごい音だな。これ、雨の音か?」

 寝ぼけていてもすぐ気づく程に雨は更に激しくなっていた。桜介は体を起こしながら眞規子話しかける。

「もう少し川から離してテント立てれば良かったな。川の水位が上がらないと良いけど。」

「どうしよっか、一回外に出て様子見てみる?最悪、ヤバそうならテントたたんで駅前でビジホでかネカフェでも探す?」

 眞規子は経験したこともないような大雨にだんだん不安が募っており、できることならばここを引き上げたい気持ちになっていた。

「そうだな。とりあえず一回外をちょっと見てくるわ。ランタン借りるね」

 そう言うやいなや、桜介はウィンドブレーカーを着てランタンを手に持ちつつ外へ出て行った。眞規子は真っ暗になったテント内に心細さを感じ、手探りで自分のリュックの中からスマホを取り出しライトを着けた。


 桜介を待っている間も更に雨は激しさを増していた。雨音に混じって金属音が聞こえてくる。眞規子は夕飯の時に使った調理道具や食器が外に出しっぱなしであることに気づいた。どうしようかと一瞬迷ったが、すぐそことは言え、この暗闇でしかも大雨の中に一人で飛び出す勇気はなく、あきらめて桜介の帰りを待つことにした。

 それからしばらく経っても桜介は戻ってこない。川を見に行ってからすでに30分ほどが経過している。テントの目の前の川をみるだけなら10分もあれば十分だ。もしかして、この雨で川岸で足を取られ、川に流されてしまったのだろうか。嫌な想像ばかりが脳内を駆け巡った。

 10分ほど逡巡していた眞規子だったが、意を決して桜介の様子を見に行くことにした。レインコートなどは持っていないため、せめてもの足しにキャップをかぶって外に飛び出す。雨粒は大きく、勢いよく顔にあたり、痛いくらいだった。

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