第7話
「なあ、篤宏のヤツどこ行ったんだ?」
樹が隣にいる真壁に話しかける。
「そう言えばさっきから見かけないな。ちょっとここ出て他も見がてら探してみよう。」
真壁がそう答える。
「そうだな、じゃあ、優と裕太も読んでみんなで探しに行こうぜ。」
樹がそう言いながら、スマホのライトのかすかな光が2つ浮かび上がっている方に懐中電灯を向ける。
「おーい、そっち何か面白いもん見つかった?篤宏探しに行こうぜ」
樹が二人に向かって呼びかける。一方、真壁は本殿側の崩れて大きく穴の空いた壁から本殿の様子が見えるのではないかと思い、壁に近づいてみた。壁だと思っていたものは、ボロボロになって傾いだ木製の扉のようだ。扉を開けようと手で押してみると、扉が外れ、真壁は扉に手をかけたまま、扉共々中庭に倒れ込んだ。
扉とともに中庭側に落ちた真壁が顔を上げると、今まさに目の前の橋を渡りきった篤宏の後ろ姿が見えた。
「何してんだ、大丈夫か!?」
樹が叫びながら近づいてくる。続いて優と裕太もやってきて真壁の両脇を掴み体を持ち上げて起こす。
「今、篤宏が…」
そう言いながら真壁は橋のある方を指さした。しかしそこにあるのは橋の残骸と思しきものだけだった。
「篤宏がどうした?なんだ、篤宏会いたさに幻覚でも見たか?」
優が笑いながら言う。それから更に続けて、
「篤宏が帰ってきたら今の話してやろう。真壁クンは帰省中の篤宏クン会いたさに肝試しの最中に篤宏クンの幻覚を見ましたよってな」
「わはは、それ良いな。むしろ家に戻ったらすぐLINEでビデオ通話しようぜ」
裕太が楽しそうに便乗する。
「お前ら何言ってんだ?篤宏も一緒に肝試しに来ただろ。な、樹、これから篤宏を探しに行くって話だったよな!?」
樹は予想外の返答をした。
「いや、何も無いみたいだし、そろそろ眠くなってきたから優と裕太にも声かけてもうそろそろ帰ろうぜって話だっただろ?」
「でも、向こうに…」
狼狽する真壁の様子を見て、裕太が本気で心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫か?とりあえず一回帰って少し休もうぜ。」
真壁は樹の懐中電灯を奪い取り、中庭を駆け抜け向かい側の本殿に飛び込む。本殿を照らし、ふと中央に置かれた箱に目を奪われた。子供一人が入りそうな大きな箱は扉が開いており、箱の周りの床はドス黒く何かが流れ出たようにシミが広がっていた。
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