第5話

 拝殿は思ったより広く、奥に広がっているようだった。他の4人が樹の懐中電灯を頼りに拝殿をまじまじと観察している隙に、俺は本殿の奥まで進む。

「本殿って普通入れないから、ちょっとテンション上がるな」

 そうひとりごちながら、拝殿を通り過ぎて本殿へ向かう。拝殿と本殿は扉で繋がっているようだ。この扉は拝殿の入口と違って古くやっているが綺麗に形を保っている。軽く押すとすんなりと扉が開いた。扉を開ると目の前には中庭があり、拝殿と本殿の間に小さな橋がかかっていた。拝殿と本殿はこの橋で行き来できるようだ。これだけボロボロになった廃神社の木製の橋というのは、強度的にヤバそうな気もするが、高さとしては一般家庭の縁側くらいのものなので、落ちても大したことは無いだろうと思い歩を進める。

 かなり頑丈に作られているのか、予想に反して何事もなく渡り切ることが出来た俺は、本殿の前に立ち扉を開ける。そして中に入りスマホのライトで照らしながら中をぐるりと見回したところで中央に鎮座している箱に気づいた。

 箱は、高さ50センチ、横幅も30センチほどあり、一見すると小さな子供一人くらいなら入れそうな大きさだった。よく見ると、把手付きの両開きの扉が付いている。その把手には房飾りの付いた紐が通され、蝶々結びされている。 

 なぜだかはわからないが、俺はその中をどうしても見てみたい衝動に駆られた。箱に近づき、両方の房飾りを掴むと、一気に引張紐を解く。それから把手を掴み扉を開こうとした。

 しかし、扉はいくら引っ張っても開かない。長年放置されたことにより固まってしまったのか。俺はみんなが来たらまたチャレンジしてみようと思い、一旦諦めて本殿内の探検をすることにした。

 月明かりの無い屋内では、スマホのライトだけが頼りだが、やはり光量が足りない。俺は足元や見える範囲を照らしながら色々と観察してみた。

 すると、奇妙なことに気づいた。床にお経が書かれている。お教はどうやら中央に置かれたあの箱を中心に放射線状に書かれている。いや、放射線状にお経を書いたその中心に箱を置いたのか。でも、なんのために。

 ガタッ

その時、一瞬箱が動いたような気がした。びっくりして思わず手に取っていたスマホを落とす。スマホが床に落ちた勢いで、弱っていたであろうお教の書かれた床板が一部割れてしまい、スマホが下に落ちてしまった。

「ヤバい!」

 割れた床板から下を覗くが、外から本当にかすかに入ってくる月光程度ではどうにもならない。

「しかたない、樹を連れて来て懐中電灯で照らしてもらうか」

 俺はため息をつきながら本殿の入口へ向けて歩き始めた。

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