第4話

 しばらく鳥居の外から神社全体を眺めていると、裕太が大声で呼びかけてくる。

「おーい、篤宏なにしてんだよ、早く来いよ。」

 その声を聞いた俺ははっと我に帰りみんなの所へ向かうために鳥居をくぐる。

「どうかしたか?」

 いつの間にかそばに来ていた真壁が、こっちを気遣うように聞いてくる。他のやつらも心配そうにこっちを見ている。

「悪ぃ悪ぃ、なんでもない」

「なんだ?早速幽霊でもみたか?」

「いや、もうびびっちゃったんじゃね?」

 優と裕太が続けざまにからかってくる。

「うるせーよ、それより早く中に入ってみようぜ」

 そう言いながら参道を進む。酒が入っているためみんな気が大きくなっているのか、廃神社の異様な雰囲気とは裏腹に俺達のテンションは高くなる一方だった。

 参道を進むとすぐに手水舎が見えてきた。屋根は完全に壊れており、石で出来た水盤には亀裂が入り枯れ葉が溜まっていた。

 拝殿は朱色に塗られた部分がかろうじて残っている部分があり、かつては綺麗な神社であっただろう名残が感じられた。ただ、しめ縄は地面に落ち、観音開きの扉は片方無くなっており、もう片方も傾いで、もはや扉としての機能を果たさなくなっているなど無残な状態だった。

 普段、綺麗に手入れされ、多くの人から敬われている神社しか見たことのない俺達は、廃神社の異様な風体に、一言も発することができなかった。

「この前来た時は昼だったけど、夜改めて来るとこえーな」

 そのどことなく気の抜けた感想に、場の張り詰めた空気が和らいだ。それに便乗する形で、優と裕太のお調子者コンビが話を繋ぐ。

「よし、樹、懐中電灯の使用を認めてやる、一刻も早く付けたまえ」

 優がそう言うと、

「消せって言ったり付けろって言ったり忙しいやつだなお前は」

 と裕太がツッコミを入れる。

「はは、賛成」

樹が笑いながら答え、再び懐中電灯のスイッチを入れる。他のやつらもスマホを取り出しライトをつけた。それから拝殿に入っていく。

 長い間誰も足を踏み入れてなかった拝殿は埃っぽく、俺達が歩いたことで舞い上がった埃が懐中電灯やスマホの光で反射していた。

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