第3話

 遊歩道から逸れた獣道にはもちろん街灯も無いため、想像以上に闇が深く足元がおぼつかない。今日は満月だが、木がうっそうと茂っている獣道では月光が遮られて辺りは真っ暗だ。木の根なども所々張り出しており、何度か足を取られて転びそうになった。

 樹は懐中電灯で足元を照らしているおかげか、一人で足早に進んでいく。こちらはスマホのライトだけが頼りなので分が悪い。

 優と裕太はまるで修学旅行中の中学生のように好きな女子はの名前を誰にも言わないから言ってみろやら、これから行く廃神社の幽霊が美人の巫女だと良いやら、逆におっかない幽霊なら俺等の最強パンチで倒してやるなどとくだらない話をしながらゲラゲラ笑っている。

 真壁は黙ったまま最後尾を歩いていた。

 獣道は背の高い雑草が生い茂っており、半袖から出ている肌に雑草があたってチクチクむず痒い。ただ、真夏とはいえ、夜で気温が下がっており、自然の中ということもあってか、家を出た時のようなジトッとした暑苦しさは感じなくなっていた。たまにはこう言う夜の散歩も悪くないと思い始めたその時、急に獣道が途切れ開けた土地に出た。

「あそこだ」

 樹が懐中電灯で照らした先に柱がぼろぼろになりいかにも廃神社にふさわしい鳥居がそびえ立っていた。その瞬間、急に周りの気温が一気に下がったような寒気を感じた。

「うおー、すげー、本当にあるんだな!」

「早く行こうぜ」

 優と裕太のテンションは最高潮に達しており、2人のはしゃいだ声が響き渡っている。優は更に続けて樹に話しかける。

「なあ、樹、懐中電灯消そうぜ。月明かりである程度見えるし、やっぱりより暗い方か雰囲気出るんじゃねぇ?」

 裕太がそれに同調して、

「いいねいいね、よし、お前ら、スマホのライトもこっからは使用禁止な」

などと言い出す。樹は、

「お前らも好きだねえ」

 と言いながら懐中電灯を消した。それに続いて俺たちもスマホのライトを消してそれぞれスマホをズボンのポケットやコサッシュに仕舞う。

「よし、行くか」

 今まで最後尾をついてきていた真壁が、先頭に進み廃神社に向かって歩き出す。

「お、真壁もやる気出してきたか!」

 と、裕太が言い、真壁と肩を組みながら鳥居に向かって歩き出す。その後を優と樹が楽しそうに軽い足取りで進んでいく。

 俺はその様子を後ろからぼんやり眺め、肝試しといえば廃病院が定番だけど、廃神社も定番だよななどと、とりとめのないことを考えながら月明かりで浮かび上がる廃神社の朧気な輪郭を捉えていた。

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