第2話

 肝試しといえば廃病院が定番だけど、廃神社も定番だよな。俺はそんなとりとめのないことを考えながら月明かりで浮かび上がる廃神社の朧気な輪郭を鳥居の前に立ちぼうっと眺めていた。 


 あれから俺達はすぐに樹の家を出て丘の廃神社へ向かった。

 湿り気を帯びた生ぬるい風が吹く真夏の深夜に肝試しに行くと言うシチュエーションは、まさに青春そのもので、俺達は興奮していた。丘の入口に着き、遊歩道を歩いてチェーンフェンスがつけられている場所まで来ると、樹が懐中電灯でチェーンの先を照らした。すると、確かにその先に確かに細い道のようなものが見えた。

「本当に道があるんだな」

 裕太が感心している。それにみんな、この青春っぽいシチュエーションを楽しむだけでなく、何かヤバいことが起きるかもしれないという期待が高まってきているようだった。

「早速行ってみようぜ」

 懐中電灯を持っている樹が率先してチェーンフェンスをまたぐ。

「それにしてもよく懐中電灯なんてあったな。普通、一人暮らしで懐中電灯ってなかなか持ってないよな。」

 俺は素朴な疑問を口にした。

「これな、非常時のために持っとけってカップラーメンとか電池とか他の非常用品とまとめておふくろが送ってきてんだよ」

「良い母親じゃん。俺の母さんなんて自分で用意しろって何も送ってくれないぜ。せめて用意するための金くらい送ってくれりゃいいのに。」

 俺はチェーンフェンスを跨ぎながら毒づいた。

 俺の後に裕太、優、真壁が続く。俺達は獣道とも言えないくらい細い、かろうじて道と言えなくもない道を草をかき分けながら進んでいった。

「おーい、何やってんだ真壁、早く来いよ」

 遊歩道の方を見て立ち止まっている真壁を優が呼ぶ。真壁はハッとしたように俺たちの方に向き直り歩き始めた。

「どうした、何か見えた?」

 俺が聞くと

「なんだよ真壁、早速幽霊か?盛り上がってきたな」

 と、裕太が嬉しそうにはしゃぐ。

「そんなんじゃなくて、なんでここだけチェーンフェンス設置されてるか不思議だよな。もっと滑りそうだったり坂道だったりしてチェーンフェンスが必要な場所はいくらでもありそうなのに、手すりらしいものがあるところと言えばここだけだろ?」

「雨が降ると水が流れて滑りやすくて危ないとかなんとか事情があるんじゃねーの。知らんけど。それより早く行こうぜ」

 裕太に促されて獣道を歩き始めた。



 

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