愛に狂う
死ねだの殺してくれだの、救えないだの救ってほしいだの。
そんなことを歌うバンドだった。
そんなのは初めてで、心が躍った。
心臓に響く重低音も、生きてるって感じがした。
もう自分は、死んでるって思ってた。
何をしたって否定されるし。
居場所なんてなかったし。
生きていたいなんて思わなかった。
何をしたって楽しくなくて、能面みたいな張り付いた笑顔でやり過ごして。
心が死んでいた。
子供が理不尽に殺されるニュースを見ても。
どこかの国で戦争が巻き起こっても。
何も思わない自分がいた。それが怖くもあった。
でも傷つかないのなら、それでもいいって。
顔に血のりを浴びせられたとき、何かが変わった。
服が汚れるじゃないかとか、せっかくのメイクがとか、みんな言ったけど
あたしはあなたの口から吐き出される血のりで生き返った。
死にたいだとか叫びながら、殺したいと絞り出しながら、血のりを吐き出しながら
命を歌うあなたに惹かれたんだ。
黒いロングヘアーが、金色に染まっていた。
血のりの赤と金のコントラストが狂気的で、美しかった。
だからあたしも真似をした。
あなたには決してなれないけれど、あなたになれた気がして、嬉しかった。
あなたをメンヘラだとみんなが言う。
腕についた傷跡は、瘡蓋になる暇もないくらい。
死にたくて死にたくて、でも死ねなくて。
でも生きていたいんだよ。
だからこんな歌を、ここで歌っているんだよ。
あたしはあなたの命を、魂を、見届けたい。
一緒に生きていきたいって、思えたんだよ。
だけどあなたが死にたいのなら。
もうここにはいたくないというのなら。
あたしも迷わず一緒に逝こう。
いつか来るその日まで、共に逝こう。
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