第48話 十兵衛、また依頼を受ける。

「・・・ぬぅ」




目を開くと・・・豪奢な装飾の施された部屋が見える。


ここは・・・はて、どこじゃったかの。


柔らかいベッドに寝ておる。




鎧戸の隙間から、日差しが差し込んでおる。


ふむ、朝か。




「・・・んっ」




上半身を起こして意識を覚醒させていると、傍らから艶のある声。


見下ろせば、そこには昨日からの相方の姿。


ミリィが、まるで少女のような顔で寝ておる。




「ああ、そうじゃったのう・・・」




ここは『黒糸館』の3階。


ミリィ専用の部屋じゃ。


といってもここは『仲良く』する場所ではない。


個人的な私室じゃと、昨日教えてくれたような・・・?


ううむ、はっきりせん。


というか、いつここに移動したのかもあまり覚えていない。


お互い、熱に浮かされたように必死じゃったからのう。






昨日は・・・うむ、『接戦』じゃった。


勝負とすれば・・・引き分け、かのう。


アラクネ・・・なんとも興味深い種族じゃ。


まさかあんなことまでできるとは、のう。


世界は広い。


これだけでも異世界に来た甲斐があったというもんじゃ。




「・・・おはよぉ」




しばらくその寝顔を堪能しておると、ミリィが起きたようじゃ。


巨大な・・・2人で寝るには大きすぎるベッドから、その艶めかしい肢体を起こすミリィ。


シーツを羽織るだけという格好なのに、凄まじい色気を感じるわい。




「おう、おはよう。朝から眼福じゃ」




「ぅふ、貴方も素敵よぉ・・・ジュウベエ」




嬉しいことを言ってくれるわい。




「・・・これでも私、とっても驚いてるのよぉ」




艶やかな指が、わしの胸をなぞる。




「自惚れじゃないけどぉ・・・まさかあんなに・・・そのぉ、激しく、できるなんて」




顔を少し赤らめつつ、ミリィが呟く。




「ジュウベエ・・・あなたってホントに人族?」




よく聞かれるのう。




「さあて・・・どうか、の!」




「きゃっ!」




ミリィの腕を引き寄せ、もう一度ベッドに引き込む。


お互いの顔が、ぶつかるほどの近くに。




「もう一度・・・試すか?」




「ぅ・・・もぉう」




一瞬目を見開いたミリィが、わしの首筋をかりりと噛む。




「駄ぁ目♡・・・女の子たちが出勤する前に『色々』掃除しないと・・・ね?」




おう、どうやら週休二日制とはいかぬらしい。


せわしない事よな。


残念じゃが・・・やめておこう。




1階でおっぱじめてしもうたからのう・・・


いや、仕掛けてきたのはミリィじゃ。


わしは悪くない。




「ふむ、それではわしも手伝おうか?」




「馬鹿ねぇ・・・どこの世界に、客に掃除させる娼館があるのよぉ」




「それもそうか」




「そうよぉ」




わしらはお互い見つめ合った後、なにかおかしゅうてひとしきり笑った。


そしてミリィはわしの頬に、短く口付けた。




「よかったわぁ・・・とぉっても」




「同感じゃな。お主は最高の女じゃ」




「ジュウベエの『最高』って・・・大勢いそうだわぁ」




「おや、バレたか」




そればかりは世界が悪い。


イイ女ばかりの世界がのう。








「おっとと」




『黒糸館』から出て、往来に足を踏み出した途端に軽い立ち眩みを覚えた。


人生で初かもしれんなあ、これほど閨で消耗するのは。




『また来てねぇ、お店にも・・・ふふ、私の所にも』




そう言って金もとらずに、ミリィはわしを送り出した。




『昨日のは商売じゃあ、ないのよぉ?』




ふふ、いい女じゃな。


そして・・・いい夜じゃった。


酷く疲れたが、充実感がある。


うむ、しっかり稼いでまた来よう。




・・・ぬ。


王都行きの件、すっかり伝え忘れておった。


まあ、よい。


あと3週間はあることじゃし、その時にでも伝えるか。


リーノにも会いに行かねばなあ。




「さてさて・・・今日はどうしようか」




『あ、スケベだ!スケベが帰ってきた~!』




今までどこにおったのか。


天鼓が編み笠の上に乗ってきた。




『うっわ、滅茶苦茶オド減ってる・・・だいじょぶ?』




オド・・・確か精気のようなものじゃったか。


まあ減っとるじゃろうなあ。




「飯でも食わんと倒れそうじゃわい・・・何が食いたい?」




『じゅうべえと一緒なら、なんでもー!』




可愛らしいことを言う天鼓を引きつれて、まずは朝飯を食うことにした。


どこに行ったもんかのう。


アリオ殿を煩わせるのも悪いし、適当な食事処を探すとするか。






「お、いたいた!よおよおジュウベエ!」




パンとスープを適当な屋台で買い、近くの広間で天鼓と分け合って朝食を食っておると・・・通りの向こうからペトラが歩いてきた。




「あたいもいいかい?」




その腕の中には、朝から食うにしては重そうな串焼きがずらり。


よく食うのう・・・色気より食い気か。




「構わんぞ」




『どぞどぞ~』




そう答えると、ペトラはわしの座っておるベンチの横に腰かけた。




「丁度良かった、探してたんだよジュウベエ」




「ぬ。何かセリンから言伝でもあったのか?」




昨日の尋常ならざる様子・・・あの後何もなければよいが。




「いや?あたいはさ、依頼を一緒にどうかって言いに来ただけだけど・・・セリンはなんか、昨日すげえ顔で帰ってきたっきり部屋に籠って何の音もしねえし」




・・・何をしておることやら。




「ふむ、依頼か。別に構わんぞ、何か予定があるわけでもなし」




『ちょっとォ!!駄目だよこんなにオド減ってるのに・・・嘘!もう戻ってる!絶倫だ!ひええ!!』




天鼓は何やら恐れおののいておる様子じゃ。


何じゃこんなもん、飯を食えば元通りよ。




「そっかそっか!いやーよかったぜ。セリンに1人で街から出るなって言われてるからさ~、ラギも誘ったんだけどなんか用事があるって言われちまったし」




・・・わしの扱いはペトラと同じか。


まあ、よい。




「ふむ、それでは今回は2人というわけじゃな・・・どんな依頼じゃ?」




金があるに越したことはない。


王都でも色々見て回りたいしのう、稼いでおくとするか。




「この近くの村からの依頼なんだけどよ、何かはわかんねえけど魔物が悪さするから調べてくれってさ」




ほう。


それは中々に面白そうじゃな。




「なんでも、家畜を一口で喰っちまうような奴なんだとよ」




ほう・・・




「家畜は何じゃ?」




「うーんと・・・なんだったっけかな。とりあえず馬くらいの大きさらしいぜ?」




馬を一口で喰う・・・か。


ほう、それはそれは。


かなりの大きさじゃな。




「その顔、乗り気だな?そうと決まればさっそく出発といこうか!」




串焼きを猛然と平らげ、ペトラは立ち上がる。




「おいおい、買い出しはどうする」




「昨日のうちに済ませといたんだよ!ジュウベエならきっと来てくれるって思ってたんでな!セリンからマジッグバッグ借りてさ」




準備がいい事じゃのう。




では問題あるまい。


アリオ殿には言伝を頼むとするか。


精霊に手紙でも届けてもらおうかの。


さすがに2日続けて何も言わずに外泊とは、少し心苦しい。




「距離は歩いて半日ってとこだ。さあ、行こうぜ!」




そういうことに、なった。








「出なかったなぁ、魔物ぉ」




草原を歩きながら、ペトラがぼやく。


確かに、ヴィグランデを出てから半日ほど歩いたが・・・一度ゴブリンと出会ったくらいじゃった。


それも小規模な集団じゃったから、あっという間に処理できた。




「まあ、いささかつまらんが・・・いいではないか、依頼の方が大事じゃろう」




「それもそうだよなあ」




そのおかげもあってか、目的の村はもう目の前に見える。


ふむ、あそこは・・・いつぞやの犬コロの依頼で訪れた所ではないか?


災難じゃのう・・・またも魔物に悩まされているのか。




『じゅーべー!なんかへん!』




編み笠の上の天鼓が言う。




『ホラあそこ!あの馬!!』




見れば、村の外からこちらへ向かって走る馬が見える。


遠くてよくわからんが・・・誰か乗っておるな。




「様子がおかしいな、行くか!」




「応!」




そう言うと、わしらは同時に走り出した。






走るうちに、馬の状態がわかってきた。




まるで何かから逃げるように、目をむいて必死の形相じゃ。


それに跨っておるのは・・・村人らしき女。


同じように必死な顔をしつつ、時々後ろを振り返っている。




追われておるらしい。




「馬の足、怪我してる、な!」




「魔物、じゃろうか、の!」




わしらは走りながら、どちらともなく武器を抜く。




「おおい!こっちじゃ!こっちまで来いっ!!」




わしの声に、馬上の女がこちらを確認してどこか安堵の表情を見せる。


まだ若い・・・10代後半といったところか。




『駄目ェ!!』




天鼓の声が響いた瞬間じゃった。




馬の後ろ脚が、地面ごと吹き飛ぶ。


まるで、爆撃にでもあったように。




女は、驚愕の表情を浮かべたまま宙に放り出された。




『じゅーべー!』




言われんでもわかっとるわい。


わしは、さらに足に力を込める。




「地中からか!まさかまた地竜じゃねえだろうなあ!!」




ペトラの声を聞きつつ、さらに走る。


さすがは若い肉体。


どれほどでも速く走れそうじゃ。




後ろ脚をなくした馬が、悲鳴を上げて倒れ込む。




すると、再び地面が吹き飛び・・・血飛沫が上がる。


今度は胴体か!




「っひぁあ!たす、たすけ・・・!!」




宙に浮いたままの女が、手足をばたつかせる。


あれほどパニックを起こしていては、ろくな着地もできまい。




落下点を割り出し、受け止めるように走る。




「お嬢ちゃん!手を!」




こちらへ向かって落ちてくる女に、手を広げる。


再び安堵の表情を見せた女。




その真下の地面が、三度吹き飛ぶ。




「ぬうっ!」




地面を蹴り、斜めに跳ぶ。


空中で女の胴を抱えると同時に、何かが下から・・・いや!これは!!




土の破片に混じって、何かがわしの周囲を取り囲んでおる!




「っぐ!」




左手で女を抱えたまま、咄嗟に刀を上に。


足に、何かの感触。




「ジュウベエ!!待ってろォ!!」




途端に上下から、凄まじい圧力が襲い掛かる。




足の方は、草履を鋭い何かが貫通しておる!


それにこの生臭い悪臭・・・!






これは・・・そうか!口か!!






気付けば、閉じられかけた巨大な口に挟まれておる!


地面から飛び出してきたモノはこいつじゃったか!!


・・・確かにこの大きさなら、馬でも一口で喰えるじゃろうな。




「ひいい!!きゃあああっ!!!」




状態に気付いたのか、抱えた女が悲鳴を上げる。




「おうおう、そんなに叫ぶと可愛らしい顔が台無しじゃぞ・・・お嬢ちゃん」




足の痛みと、挟まれるからの圧力を無視しながら気楽に声をかける。


魔物の口内におるから、パニックになっても仕方ないがのう。




さて、どうしたものか。




今すぐ食われるほどの力ではないものの、片手が塞がっておるからのう。


まずは、無理やりこじ開けるとするか。




「ふぅう・・・」




深呼吸をし、丹田に力を込める。




「・・・っがあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」




生み出された魔力の奔流が、腕を伝って愛刀に流れ込むのを感じる。




「GGGGRRRRR!!?!?!?!?!?!?!?!?!?」




何とも名状しがたい悲鳴らしきものと共に、わしらは口から吐き出された。


はは、流石に稲妻は喰えんかよ。




「うるああ!!っこのおお!!!・・・へえ!?」




斧を振り回すペトラが、その横に落ちてきたわしらを見て目を丸くする。




「お嬢ちゃん、立てるか?」




「ふえ・・・ひゃ、ひゃい!!」




小脇に抱えた女を下ろし、振り返る。




「何じゃコイツは・・・でかい、蚯蚓か?」




そこには、大木ほどの胴回りがありそうな大蚯蚓が大地から屹立しておった。


その体にはペトラが斬り付けた傷がいくつもあるが・・・あまり効いてはおらんようじゃな。


だが、流し込んだ魔力が効いたのか動きがとれぬようじゃ。




「た、たぶん『オルドシアワーム』ってやつだと思うんだけどよ・・・おかしいぜ、コイツはかなり北の砂漠にしかいねえはずなのに!」




ワーム・・・


蚯蚓というより、あの口はゴカイやオニイソメじゃが。


まあ、陸上におるなら大蚯蚓でえかろう。




「こやつが変わりものか、はたまた民族大移動かは知らんが・・・とりあえず刻んでから考えるとするか」




「だな!外皮は硬いから気を付けて・・・っておい!ジュウベエ!足から血が出てんぞ!」




「貫通しとらん、かすり傷じゃ。鋭いが短い歯で助かったわい」




言いつつ、刀を担ぐ。




「天鼓!他にはおらんか!?」




周囲を気にしている暇はない。




『こ、ここにはいないけど!村の中にいっぱいいっぱいいる!!』




・・・最悪の答えが返ってきたのう。




「あ、あの傭兵さん!村にもいるんです!わた、私知らせて来いって村長に馬に乗せられて・・・!」




女・・・娘の声もそれを後押ししておる。


・・・ゆっくりしとる時間は、ないのう。




「天鼓!その娘の周囲を気にしてやれ!何かあったらわしに言え!」




『うけたまわりー!』




その声を聞きつつ、棒立ちのままの蚯蚓に踏み込む。




「ぬうん!!」




そのまま、体ごと体重を乗せて突く。


紫色の体液が宙に舞い、愛刀は深く突き刺さった。




この胴回りじゃ、この程度では痛手にもなるまい!


出し惜しみは・・・ナシじゃ!




「ぬうう・・・ああああああああああああああああああああっ!!!!」




僅かに見える刀身が紫電を纏った瞬間、蚯蚓が震えた。


もう、遅いわい!!




「GGGGGYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?!?」




一息で大量の魔力を流し込み、抜く。


跳び下がって残心しつつ、弐撃目に備える。




「ひゃあ・・・すっげえ」




感心したようなペトラの声を聞いていると、蚯蚓は地響きを立てて倒れ込んだ。


そのでかい口から流れ出た大量の体液が、地面をみるみる染めていく。


動かぬ、か・・・よし。




「魔力の通りはいいようじゃの・・・」




「魔力かあ・・・加護込みでぶん殴るしかねえな、こりゃあ」




少しだけ体がふらつく。


・・・少々魔力を込め過ぎたようじゃの。


恐らく、村の中におるのが1匹のみということもあるまい。


出力も調整せねばならんな。




「お嬢ちゃん、他に馬はおるか?」




「え、ええっと・・・む、村の中に・・・」




・・・ぬう、それは望み薄じゃな。


人間ならともかく、繋がれておる馬ならもう喰われておるやもしれん。




「あ、あとこの近くにも厩舎があります!あっちの畑です!!」




娘が指差す方を見れば、確かに小規模な厩舎が見えた。




「(・・・天鼓、村の中以外にも蚯蚓はおるか?)」




『うう~ん・・・何匹かそれっぽいのいるけど、あの方向にはいない!』




・・・ふむ。




「ペトラよ、あの蚯蚓は音に反応するのか?」




「え?あ、ああ。確かそうだった・・・と思う、あと振動とか・・・血の臭いかな」




ふむふむ。


ならば決まりじゃな。




わしは、娘の方に向き直る。




・・・ほう、こうして見ると中々いい顔立ちじゃな。


あと10年もすればいい女になるじゃろうて。


ここで死なすには、惜しいのう。




「お嬢ちゃん、今からわしらは村へ行って思う存分に暴れ回る。その隙に、あそこの馬でヴィグランデまで逃げよ」




「え?そ、それは・・・」




「なあに、元々依頼を引き受けたのじゃ。やることは変わらんよ」




心配そうな娘に、優しく言う。


・・・というか、ここに残られる方が困るんじゃがな。


離れた場所にいてもらう方がいい。




「そう心配するでない。わしも・・・このペトラも、あのような生臭い蚯蚓に負けるほど柔ではないわい」




「ああ!心配しないでとっとと逃げな!!」




ペトラも援護射撃をしてくれる。




わしらをしばらく見つめた後、娘は大きく頷いた。




「きっと!きっと助けを呼んできますから!!」




そして、踵を返しながらそう叫んで・・・あっという間に走って行った。




「思い切りがいいのう。あれなら大丈夫そうじゃ」




速度のついた馬なら、逃げ切れるじゃろう。


わしらが来た道には他の魔物もおらんかったしの。




「さあて・・・暴れるとするか、ペトラ」




「おう!こちとらデュルケンからこっち鈍って鈍ってしょうがねえんだ!」




がぎん、と両腕の戦斧を打ち鳴らして歯を剥いて笑うペトラ。


戦いが始まったわけでもないのに、その艶めかしい背中には既に筋肉が隆起しておる。


おうおう、頼もしいわい。




『てっつだうよー!』『おー!』『おぉー!』『カチコミじゃーい!!』




拳を振り上げる天鼓と、いつの間にか集まっておった精霊の群れ。


はは、こちらも心強いわい。




「では・・・行くか!!」




「おおっ!!」




わしらは、お互いの目に闘志を漲らせ・・・同時に大地を蹴って走り出した。




『正面!』




天鼓の声が聞こえるとほぼ同時に、村の門が地中から弾け飛ぶ。


大蚯蚓じゃ。




奴は空中に飛び出した勢いのまま、わしらへ大口を開けて迫る。




「任せな!!『地母神よ、我に力を』!!!」




わしの前に割り込んだペトラの全身を、紅い燐光が包む。




「GGGGRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!!!!!!!!!」




「だっ・・・しゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」




大蚯蚓の落下点に到達したペトラは、両手の戦斧を上下から挟み込むように振る。




「GRGRGRGRGRGR!?!?!?!?!?!?」




大きく開いた口を強制的に閉じさせながら、戦斧がめり込んでいく。




「背中借りるぞ!!」




跳び上がりながらペトラの背中を蹴り、さらに跳ぶ。




「っしぃいあ!!」




そのまま、大蚯蚓の頭に落下しながら体重を乗せて刀を突き立てた。


鍔元まで、ずるりと刺さる。


よし!この角度なら・・・魔力はいらんな!!




「GGGGGGGGGGGGGGGGG!?!?!?!?」




脳に相当する器官を破壊したのか。


大蚯蚓は大きく痙攣して大地に沈んだ。




「まずは・・・」




「ひとぉつ!!」




わしらは顔を見合わせて笑い合い、村へまた走り始める。




『ぴぃいい!?いっぱいくるよォ!?』




「おうおうおう!来るぜ来るぜぇ!!」




音か、それとも仲間の血の臭いか。


何かを感じたのか、わしらへ向けて地面が盛り上がり、いくついくつも迫る。


千客万来じゃな。




こちらへ来る数が増えれば、それだけ村人の被害がなくなる。


金を払ってもらわねばならんからのう・・・死んでもらっては困るわい。




「南雲流、十兵衛・・・参る!!」




わしに向かって飛び込む、最初の一体に照準を合わせながら・・・いつものように叫んだ。

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