第46話 十兵衛、名前を付ける。

「ジュウベ、ソッチ行ッタ!!」




「応っ!!」




林の奥から、ラギの声が響く。


それと同時に、木々をなぎ倒しながらわしに近付く気配も。


おお、速い速い。


この様子じゃと、車顔負けじゃのう。




「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」




吠え声はあっという間にわしへ肉薄し、目の前の草むらが大きく揺れた。


・・・来るか。




「ブルウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」




草むらの奥から、黒い大きな影が飛び出した。


それと同時に踏み込みつつ、しゃがみ込みながら横回転。




「っしぃい!!」




わしを踏み潰さんと繰り出された、その太い前足を独楽よろしく回転しながら斬り飛ばす。






南雲流剣術、『草薙』






「ブモ!?ピギィイイイイイイイイイイイイイイイイ!?!?!?」




空中に鮮血を撒き散らしながら、影は大きくバランスを崩して横転。


地面を削りつつ、慣性で滑る。




立ち上がり、足をばたつかせる影に近付いた。




「成仏せいよ」




「ピ!?!?」




真上から心臓を貫くと、ようやく影の主は死んだ。




「・・・それにしてもデカいのう。猪鍋が何人分作れるかのう」




くたりと地面に足を投げ出したのは、わしの知っておる猪よりも二回りはデカいやつじゃった。


口元からは4本の湾曲した牙が伸びており、頭から背中にかけてはまるで鎧のような黒い革で覆われている。


・・・足を斬って正解じゃな、これは。




「ジュウベ!ジュウベ!」




「おう、一丁上がりじゃ」




続いて林から飛び出てきたラギに手を振り、猪を解体するべく脇差を抜いた。






「ジュウベ!焼イテ焼イテ!!」




『焼いて―!』




解体が済み、討伐部位・・・長い牙をより分けていると、ラギと精霊が合唱する。




「なんじゃ、肉食の魔物は食えんのではなかったのか」




「ガルグボア、肉食ワナイ!若芽バッカリ食ウ!害獣!!」




『そして肉がうまいのだー!』




・・・なるほど。




それなら腹も減っておるし、ついでに飯にするか。


焚火の準備を始めると、ラギが嬉々として肉を切り分け始めた。


手際がええのう。






わしらは、ヴィグランデから半日ほど南に行ったあたりにおる。


傭兵ギルドの依頼じゃ。




確か・・・『森を荒らす魔物を討伐して欲しい』というものだったかのう。


ここから近い村からの依頼じゃったような・・・よくは覚えておらん。




レイヤとの邂逅から2日経って、肩慣らしに依頼でも・・・と思ってのことじゃ。


出発までの1ヵ月を、街から出ずに過ごすのは流石に退屈がすぎるしのう。




ちなみに同行はラギと、何故か懐かれた精霊の2人?になる。




わしは1人でもいいのじゃが・・・セリンがのう。




『ジュウベエを単独行動させると何が起こるかわかりませんことよ!』




・・・中々にひどい言いぐさじゃ。


まるでわしをトラブルメーカーだとでも言うような・・・まあ、否定はせぬが。




というわけで、名乗りを上げたラギが付いてきておる。


精霊は・・・まあ、気紛れじゃろうな。


というかこやつ、前と同じ精霊ではないか?


何となく見覚えがあるような気がする。




「肉~♪」




『肉ぅ~♪』




はしゃぐ2人を見ながら、準備をする。




ふむ、肉質は猪と同じか。


臭みも同じくらいであろうかの?


大きさは大分違うが。




背嚢から、香辛料が詰まった陶器の瓶を取り出す。


それを肉にすり込み、そこらから調達してきた木串に刺していく。


内臓は・・・やめておこう。


異世界の寄生虫でもおったら嫌じゃしな。


肉だけでもかなりの量じゃ、問題なかろう。




「玉葱が欲しいのう・・・」




「タマ・・・ネギ?」




「おう、わしの世界にあった野菜じゃよ。肉と食うと美味い」




玉葱について説明すると、ラギが手を打った。




「フゥン・・・ソレ、切ルト泣イタリスル?」




「おうおう、それじゃ!」




「ント・・・」




ラギは自分の背嚢をゴソゴソ漁っておる。


しばらく見ていると、何やら赤い塊を取り出した。




「タブン、コレ。『マルモ』ッテイウ野菜」




確かに形状は玉葱っぽいが・・・なんじゃその赤さは。


受け取って匂いを嗅いでみると、まさしく玉葱じゃ。




「スープニ入レル、甘クテオイシイ!」




ふむ、なるほど使い方も似ておるな。




「用意がいいのう・・・お主はいい嫁になるぞ」




「ミュミュミュ・・・!ヘヘヘ・・・!!」




「やめんか埃が立つ」




嬉しいと尻尾を振り回すのは何とかならんものかのう。


仮面で表情が読み辛い分、わかりやすくはあるが・・・






「ウマイ!アマイ!ウマイ!アマイ!!」




『無限にもぐもぐできちゃうー!』




完成した串焼きもどきを、ラギが嬉しそうに頬張っておる。


精霊もわしの肩の上で、一体どこにそんなに入るのか知らんがパクついておるな。




「服にこぼすでないぞ」




『どーせキレイになるんだからいーじゃーん!!』




「マナーの話じゃ、マナーの」




言いつつ、わしも頬張る。




む、獣臭さが若干残るが・・・この野趣あふれる香も中々乙なものよ。


よう肥えておったから、脂も乗っていて美味いのう。


たまね・・・マルモもいい仕事をしておる。


こうして交互に刺すと、いくらでも次が食えそうじゃ。




『うままー!うまままー!』




喰うか喋るかどっちかにせんか全く・・・




しかし改めて見ると、この精霊は今までの奴らと少し違うのう。


着ている服・・・服?も上等じゃし、何より姿がくっきりと見える。


髪は薄い紫で・・・時々火花というか稲光を纏っておる。




『みゅ?なんだなんだー?』




こちらを見る瞳の色は黄色・・・今までの精霊は単色じゃったから、なんというかカラフルじゃのう。




「いや、お主が随分と今までの精霊と違っておるからの。お主、わしが白い鎧と戦っておる時に会ったか?」




『ほほー、違いの分かる男ですなあ、じゅうべー』




それにこれじゃ。


他の精霊に比べて・・・なんというか語彙が豊かじゃ。


あいつらは幼子のような話し方じゃが、こやつは少し違う。




『にゅふん、当ててみ当ててみ―?』




肉の串を持ってふんぞり返る精霊。




「・・・雷の精霊かの。いつでも静電気を起こしておるし」




『せいかーい!雷でーす!!あんまり地上にいないから、レアキャラ―!』




なるほどそうか。


考えてみればその通りじゃな。


地表をうろつく雷なぞ、あまり見たことがないしのう。




『じゅうべーがバチバチーってよくやってるから来てみたの!居心地がいいからしばらく張り付くのー!』




「なるほどのう。アレのことか」




愛刀に魔力を通すと、紫電が起こる。


親戚じゃとでも思われたんじゃろうか。




「・・・まあ、迷惑をかけぬなら好きにせい」




『ちょっとだけだから~♪だいたい・・・30年くらい?』




・・・こやつらの時間の感覚、相変わらず狂っておるのう。


じゃが、前に酒を飲む約束もしたし構わんか。


餌代がどれほどかかるかわからんが、害はなかろうよ。




『よろしくねー!』




「全部飲みこんでから喋ってくれんかの、破片が飛ぶ」




『もももむい!ももむ!!』




精霊の顔を拭いてやる。


顔中で食っておるのか、こやつは。


何故額まで飛ぶ。




「・・・イイナア」




む。


ラギがこちらを見ておる。




「どうしたラギ」




少し寂し気な様子じゃの。




「精霊・・・クッキリ見エナイ、声モ聞コエナイ。ジュウベミタイニ、オ話デキナイ・・・」




・・・むう。


仲間外れにでもなったような気持ちなんじゃろうか。


しかしのう、こればっかりは・・・




『あーん!ラギちゃん好き!元気出して!!』




精霊が肩から飛び、ラギの周りを旋回しておる。


それが分かるのか、ラギは少し困ったような様子じゃ。




「ド、ドウシタジュウベ!?精霊回ッテル!!」




「お主を元気づけたいようじゃよ、ラギ」




「オ、恐レ多イ・・・アリガト!」




さてさて、どうしたものか。


見えぬ者たちに見えるようにするのは疲れる・・・などと前に言っておったな。


いつも姿を見せてもらうように頼んでもいいものか・・・




「のう、精霊を見れるようにするにはどうすればいい?」




旋回している精霊に聞く。




『みゅ?えーとね・・・精霊術をべんきょーするか・・・あとは・・・才能?エルフとかドライアドあたりは長生きすれば自然と見れるんだけどな~』




精霊術とな?


聞いたことのない単語が飛び出してきたのう。




「ラギ、精霊術とはなんじゃ?」




わからんことは聞くに限る。




「精霊ノ力ヲ借リル魔術ミタイナモノ・・・カナ?我ノ里長、ツカエル。修行、大変。トッテモ時間カカル」




ふむう、それでは無理そうじゃな。


魔術からして才能に大分左右されるようじゃしのう。




「・・・ちょいと来い」




精霊を手招きすると、すぐに肩に戻ってきた。




『なーにー?』




「のう、なんとかならんか?こう・・・裏技的な感じでの。別に見て話せるくらいなんとかなるじゃろ?」




いかんせん孫のような娘じゃ。


少しの依怙贔屓くらいしても・・・罰は当たらんと思うが。


我ながら女子供には甘いのう。




『え、別にいいけど』




拍子抜けするくらいあっさりと了承された。


いや・・・わしから頼んでおいてなんじゃが、いいのか?




『じゅーべー愛し子じゃん。基本的に無茶苦茶なお願いとかじゃなければ、普通に聞いてあげるよ~?一国をバーン!しろとかじゃない限り』




・・・国、亡ぼせるのかこやつら。


いや待て、よくよく考えれば水や火にそっぽを向かれればそうなるか。


以前のドワーフたちからも、そこが恐れられておったな。




「・・・礼はする、すまぬが頼めるか?」




『にゅへへ~、高いぞ~?うけたまわり~!!』




悪戯っぽく笑うと、精霊はわしの指を取った。




『は~い、ちくっとしますよ~』




言うや否や懐から取り出した金色の針を、指に突き立ててくる。


微かな痛みと共に、指先に血の玉が浮かぶ。


・・・せめて説明してくれんかの。


危うく脇差を抜きかけたぞ。




『これでよーしっと・・・ほいほいさー!』




何やら珍妙な掛け声を出すと、血の玉が宙に浮かぶ。


爪の先ほどのそれは、ふよふよと宙を浮かび・・・突然のことに目を丸くしているラギの眼前へ。




『はーいごっくんして~』




「エ!?ジュウベ、ナニ?ナニ?」




わしらの会話が聞こえておらぬから、かなり狼狽しておる。


無理もないわい、急に目の前に血の玉が飛んできたんじゃからの。




「・・・害はないのか?」




『むしろいいことしかない!精霊神さまのお墨付き!!』




・・・まことじゃろうの?




「あー・・・ラギよ。お主に精霊が見えるようにする手段だそうじゃ・・・それを飲めと」




「ミュア!?」




いきなり他人の血を飲めと言われたんじゃ。


そりゃ驚くじゃろう。


吸血鬼でもなければ面食らうはずじゃ。




「害はないそうじゃが、いきなりのことじゃし・・・嫌ならやめてm」




「アム!!!!」




止めようとした所、ラギは全くためらわずにそれを口に含んだ。


・・・わしを信頼しすぎじゃろ、こやつ。


少しは怪しまぬか。




『よっしゃよっしゃ!みゅみゅみゅ・・・にゅにゅにゅ・・・はぁー!!!!』




それを見届けた精霊は、不可思議に体をくねらせた後・・・ラギに向かってシャボンのような魔力の塊を放つ。


ラギの仮面に着弾したシャボンは割れ、極彩色の閃光が一瞬見えた。




『うっへぇ・・・つっかれたぁ・・・おかわりおかわり~』




わしに何の説明もせず、精霊は次の肉串を手に取って齧りつく。




「おい、大丈夫かラギ。何か変な所はないか?」




「ミュアァ・・・」




なにやら恍惚とした様子でラギは頭を揺らしている。


あれは・・・セリンが前になった魔力酔いと似ておるの。




『じゅうべーの血を使って・・・新しい・・・もぐもむ。チャンネル・・・もももむ・・・無理やり、開いたから、んぐぐ、しばらくフラフラする~・・・うまうま』




・・・喰うか説明するかどっちかにせんか。




ラギの横に座り、ふらつく体を支えてやる。




「フラフラ・・・スリュ。ジュウベ、ジュウベ、チョットモタレテイイ?」




「ああ、いっそ横になれ」




「ミュ・・・」




ラギはわしの膝に頭を乗せて横になった。




「ミュゥ・・・」




そしてそのまま何度かあくびをして、あっという間に眠りに落ちた。


見る限り苦しんではおらんようじゃな・・・




『害はないって言ったじゃんか~。しばらくすれば起きるよ~』




「いつぞやのイルカといい、お主らには言葉が足りなすぎるんじゃい」




『あでー!虐待だぁー!あねさまに言うぞー!!』




精霊に軽くデコピンをかまし、わしは肉を頬張った。






『ミュゥウ・・・フアァアア』




小半時ほどの間ラギは眠り続け、大きなあくびをして起きた。




「おう、起きたか。どうじゃ?体の具合は」




「ンミュ・・・ジュウベ・・・ウン、ダイジョブ」




わしの膝から頭を起こし、ラギは上半身を大きく伸ばした。




『おはいおー!』




「ミュァ!?」




その眼前に精霊が躍り出たと同時に、ラギは仰け反って後頭部を地面で豪快に殴打。




「イイイ・・・イダァイ・・・!」




「おいおい、しっかりせい」




涙を浮かべるラギを起こし、頭を撫でる。




「いきなり出てくる奴があるか、馬鹿者」




『でも見えてたでしょ?』




・・・む。


そういえばそうじゃな。




『えへへぇ、改めまして~こんちはラギちゃん!雷の精霊でーす!名前はまだなぁい!!』




精霊はケラケラ笑うと、未だに頭を抱えるラギの目の前を高速で飛び回る。


まったく、こやつらはもう・・・




「フア・・・ミ、見エル!聞コエル!!」




ラギは頭の痛みも忘れたのか、目を輝かせてその光景に見入っておる。




「キレイ!荘厳!精霊様!!」




『はっはっは~崇めよ~!敬え~!果物を毎日供えよ~!』




「ハイ!ハイ!!」




おい待て。


どさくさに紛れて変な要求をするでない。


ラギのことじゃから本気にするぞ!








「ウワァ・・・精霊様イッパイ。世界ッテ、スゴォイ・・・!」




『ふっふっふ、そうだろうそうだろう!』




依頼を終えて帰る道すがら。


先を歩くラギは今まで見えておらなんだ精霊を見るにつけ、感じ入ったように声を上げておる。


ふふ、かわいらしいもんじゃの。


これほど喜んでくれるとは・・・いい願い事をしたもんじゃわい。




「アリガト!ジュウベ!!」




振り返ってわしに言うその声は、幼い子供のようじゃった。


年相応じゃのう。




「なんのなんの、わしは何もしとらんよ」




血を少しばかり分けただけじゃしの。




『あ、そうそうじゅーべー。お礼なんだけどね』




精霊が話しかけてきた。




「ぬ、砂糖水か?」




『うあ~、それも魅力的だけど今回の働きにはちょいと足らんかにゃあ~?』




まあ、それもそうか。


間違いなく今までで一番面倒な頼みじゃろうしのう。




「ふむ、ではなんじゃ」




そう聞き返すと、精霊は肩から飛び立ちってわしの目の前に浮かぶ。




『わたしに名前、つーけて!』




・・・名前、とな?




「ミュァア!?」




なにやらラギが驚愕しておる。


それほど大変なことなんじゃろうか。




「というかお主、名無しじゃったのか」




『精霊はみーんなそう!あねさまやにいさまみたいなお偉い様以外はね!』




わし、『あねさま』の名前も知らんのじゃが・・・




『精霊はねー、名付けられないと名前持てないんだよ~』




ほうほう。


ややこしいシステムになっとるんじゃのう。




「ウ、ウソ・・・ジュ、ジュウベ、スゴイ!スゴイ!!」




「何がじゃ」




ふらつきながらわしに抱き着いてきたラギに聞き返す。


勝手に盛り上がっておるなあ。




「エライ魔法使イトカ、精霊教ノ教主トカシカ、名付ケ・・・デキナイ」




なんとまあ。


それは・・・重責じゃな。




『ぶっぶ~!間違いでーす!気に入らない相手からは名前貰わないだけでーす!』




当の精霊は、そんな風評を吹き飛ばすようにたたずんでおる。




「じゃがいいのか、わしはどこの馬の骨ともわからん男じゃぞ」




『これが精霊!なんでも直観で決めるのーっ!じゅーべー以外ならやーっ!消滅するまで名無しでいるーっ!!』




・・・おそらくわしらの誰よりも長生きしそうじゃな、こやつ。


それほどの年月を名無しで過ごさせるわけにはいくまいて。


しかし好かれたもんじゃな、わしも。


これもリトス様のお陰なのかのう?




「ぬう、ちょいと待っとれ・・・これでも犬猫に名付けるのは慣れたもんじゃ。ふぅむ・・・ポチ・・・タマ・・・タロスケ・・・マサキチ・・・」




『いぎゃあ!!雑!!雑ゥ!!もっとちゃんと考えて―っ!定期的に雷落とすぞ!!』




それは困る。


ふむ・・・名前、名前のう。


さて、こやつは雷の精霊じゃったな・・・


雷は雄々しい別名が多いからのう・・・いや、こやつはどちらじゃ。




「お主、性別とか・・・あるのか?」




『こんな美少女捕まえて何言うかー!!』




精霊は周囲に静電気を撒き散らして大騒ぎじゃ。




「ジュウベ・・・」




ラギまでわしをそんな目で見るのか。




しかし・・・見えぬ。


いや、正確にはどちらかわからん。


かわいらしい小人じゃもの、見た目は。




ぬう、それなら・・・おお、そうじゃ。






「―――天鼓てんこ、お主の名は天鼓じゃ」






稲妻の別名。


これならよかろう。




『・・・てんこ、テンコ』




精霊は何度も何度もその名を呟いておる。


さて、気に入ったか・・・の・・・?




ぐらりと視界が揺れ、膝を付く。




なんじゃ、これは。




この感覚・・・前にも、どこか、で・・・




「ジュウベ!ジュウベ!!」




ラギがわしの体を支えてくれる。




ああ、そうか。


これは、魔力を使い過ぎた時の・・・






『・・・天鼓!!!名前!私の名前!!私だけの!私だけの名前っ!!』






精霊は、嬉しそうに空を舞う。


その背中からは、先程の数倍はあろう静電気の・・・いや、小規模な放電が見える。






『天鼓っ!!私は・・・天鼓!!!!』






『いいなー!』『おめでとー!』『まつりじゃー!!』




いつも間にか周囲に集まった精霊どもの大合唱の中。


天鼓はいつまでもいつまでも、嬉しそうに飛び回っておった。




し、しかし・・・


精霊への名付けとは・・・疲れるもんじゃなあ。




「・・・ラギよ、すまん、寝る」




「ミュァ!?」




それにしても・・・酷く眠い。

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