第39話 十兵衛、クラーケンと戦う。
「『ぬばたまの光よ・・・儚き風よ・・・』」
エルフの嬢ちゃんが呪文を唱えると、痛みが引いていく。
やはり魔法というものはすごいのう。
「・・・これで、応急処置ですわ。失った血は戻りませんから、完治ではありませんのよ?」
先程のなんとかの眷属とやらにやられた傷は、綺麗さっぱり塞がった。
最後の最後で貫き手をかましてくるとはのう・・・中々に手強い敵じゃった。
「いやいや、十分じゃわい。これでまた戦えるしのう」
「あなたが大変お強いというのはよっくわかりましたけれど、くれぐれも無理は・・・服まで直っていきますわ!?」
ぬ、服の再生をすっかり忘れておったわい。
まあ、言及はしないでおこうかの。
無理をするなと言うが・・・さて、そうもいくかのう。
「わしとて寝ておれるものなら寝ていたいが・・・あ奴はそれを許さぬらしい」
「・・・そのよう、ですわね」
あの眷属というものを殺したわしが、たまらなく気に食わんと見える。
先程までの態度とは打って変わって、その目はわしに向けられておる。
「のう、お嬢ちゃん。さっきの何とかの眷属とやらは、あ奴の仲間か?海の魔物にはとんと疎くての」
「カリンですわ!・・・『イリオーンの眷属』は、あのクラーケンの上位種の眷属に当たりますの」
カリンとは・・・名前も相まってセリンによく似ておる。
どことは言わぬが、『一部分』は大分違うがの。
エルフはみんな薄いと思っておったが・・・中々立派なものを持っておるわい。
しかし、上位種の眷属か。
ふむ・・・上司の部下といったところか。
同僚のようなもんかのう?
「今までの戦いで、その他の眷属もかなり減りましたわ。船の速度がこのままであれば、このまま逃げ切れるかと」
「さぁて・・・それはどうかの」
今まで、クラーケンにはさほど『やる気』は見えなんだ。
今とは違ってのう。
同僚がやられたことで本気になったのやもしれん。
「もう少しデュルケンに近付けば増援も来やすくなりますし、あなたがイリオーンの眷属を討ち取ってくれたおかげですわ!」
「ふむ、そうであればいいのじゃがな・・・」
他の甲板で聞こえていた戦いの音も止んでおる。
さっきの・・・グレンとかいったか?
あ奴もこっちへ戻ってくれば、かなりの戦力になるのじゃが・・・
「UUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
「GURURURUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!!!」
「SGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!」
・・・どうやら、希望的観測だったようじゃ。
クラーケンの触手・・・その先端にある目のない竜のような器官が、口々に吠え始める。
・・・やる気、じゃな。
「カリン、離れておけい。変わらず援護を頼むぞ」
「し、しかし・・・!」
「奴さんはやる気じゃ、ここにおったらエルフの挽肉が出来上がるぞ」
そう言い、前に出る。
傷は塞がった。
気力もまだある。
失血はしたが、立ち眩みもない。
・・・うむ、五体満足じゃ。
しかし、どうしたものか。
わしの攻撃は奴に届かん。
あの触手を振り下ろしてくればそこに付け入る隙もあろうが、それでは船が破壊されてしまう。
魔法の一つでも使えれば別なんじゃろうが・・・しかしこの期に及んで、付け焼刃の魔法が通用するとも思えんのう。
魔法使いたちがあれほど放っておった魔法も、有効打を与えた様子はない。
皮膚の表面に細かい切り傷や焼けた痕が見えるが、とても効いているようには思えん。
「八方手詰まり・・・では、ないのう」
閃いた。
つまり・・・
わしがあ奴の土俵に乗ればいい、というわけじゃ。
納刀し、甲板の縁から海を見下ろす。
船の上と同じように、海上の戦いも1段落ついておるようじゃ。
さてさて・・・お、おったな。
「ウルリカぁ!生きておるかァ!?」
「あいよォ!ピンピンしてるさァ!!」
返り血に塗れてはいるが、元気そうなウルリカがこちらへ手を振る。
それを見るなり、勢いをつけて甲板から飛び降りる。
「わしを乗せろォ!!」
「え、えええええ!?」
後ろからカリンの叫びが聞こえた。
「・・・あいさぁ!!」
凄まじい勢いで水を蹴りながら、ウルリカがわしの落下点に来る。
来た時と同じように、その背中にふわりと着地した。
「なんだい?俺の背中がそんなに恋しかったかい?」
「おう、一度味わうと病みつきになるのう」
「ば、馬ぁ鹿!!」
・・・自分から振ってきた癖に、案外おぼこいのう。
「冗談はさておきのう、イリオーンの眷属とやらを倒したらクラーケンがどうも本気になったらしい」
「っは!やっぱりありゃそうだったか!・・・流石だねえジュウベエ!!・・で?」
嬉しそうな声を上げるウルリカの耳元で、わしは囁く。
「これから喧嘩を売りに行こうと思っておる。クラーケンの側まで運んでくれ」
「・・・本気かい?このまま逃げ続ければ引き離せそうだぜ?・・・それに、身一つで行くなんて・・・」
心配そうに聞いてくるウルリカに、わしは歯を剥き出して笑う。
「馬ぁ鹿、せっかく挑まれておるのに逃げるものかよ・・・なぁに、しくじればわしがくたばるだけよ。はっは、安い掛け金じゃ」
そう言うと、ウルリカの動きが止まった
びくりとその艶めかしい背中を震わせ、振り返った口から牙が覗く。
熱を持ったように潤んだ瞳が、わしを見つめる。
「・・・ふぅん、気に入ったよ」
「おや、先日の熱い目線は商売じゃったか」
「こ、言葉の綾だっての!・・・いいぜ、しっかり捕まっときな!」
顔を赤くしたウルリカが、ぐんと水を蹴る。
「みんなァ!この大馬鹿者を届けるよォ!!援護しなァ!!!」
「「「はーい!族長!!」」」
水面を疾駆するわしらの後方から、1人また1人とセイレーンが続く。
「ジュウベエ!私と『仲良くする』まで死んだら許さないんだから!!」
並走し、矢を放ちながらアマラが叫ぶ。
「はっはぁ!日も高いうちからお誘いとは・・・」
「ふふ、今のうちに予約しとかないとね!」
「こらァ!人の背中で女口説いてんじゃないよ!!」
軽口を叩きながらも、セイレーンたちは縦横無尽に水面を駆ける。
・・・ぬ、クラーケンが動いた。
顔のついた触手を持ち上げ、わしらの方を見る。
ううむ、下から見るとやはりでかいのう。
「さぁて・・・行くよジュウベエ!!」
「応!!」
恐らく、接敵すれば抜いておる暇はないな。
愛刀を抜刀し、右手で握る。
そして片手で、ウルリカの鎧をしっかり掴んだ。
「『蒼の団』、とっつげきいいいいいいぃ!!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」」」
ウルリカが叫び、速度をさらに上げる。
それとほぼ同時に、クラーケンの触手に付いている竜の口が開き、口腔内に光が集まる。
「させるもんです・・・かっ!!」
アマラがびょうと放つ矢が、空中で白い光を纏う。
らせん状に回転する光の尾を引き、矢は触手の先端・・・竜の口に飛び込んだ。
瞬間、破裂したような音が響き、火球が生じる。
さほど打撃を与えたようには見えんが、集まっていた光は雲散霧消した。
ほぼ同時に、船の方からもバラバラと魔法が飛び、クラーケンの体表面で爆発を繰り返す。
どうやらあちらも、援護してくれるらしいのう。
竜の顔が付いた触手とは別の、丸太ほどもある触手が振り下ろされる。
「ひゅうっ!はっはぁ!!」
海面を切り裂くそれを、ウルリカが笑いながら躱す。
海水がビシャビシャと打ち付けられるが、危なげなく躱していく。
・・・本体まで、あと少しじゃ。
「ウルリカ!」
「あいよ!」
その合間を縫って叫ぶ。
「これから奥の手を使う、恐らく一太刀でわしは気絶するじゃろう・・・後は、頼むぞ!」
「ああ!?トドメを刺せってのかい?」
「いやいや・・・わしの体の世話よ!」
よくわかっておらなさそうなウルリカを尻目に、目を閉じる。
精神を集中させ、呼吸を整える。
「コオオオオォ・・・」
肺から空気を吐き出しながら、右手に力を込める。
・・・おお、きたきた。
丹田から引き出された力が、魔力となって右手に集まる。
凄まじい脱力感が襲うが、気力でねじ伏せる。
やがて魔力は右手を伝い、柄から刀身へと流れ込んでゆく。
「じゅ、ジュウベエ・・・!?」
並走しておったアマラから、驚愕の声が漏れる。
目を開けると、握り慣れた愛刀の刀身が輝いておる。
紫電を放つ、深い蒼色に。
「さてぇ・・・ぶちかますとしようか!」
「応!」
ウルリカが吠え、さらに加速。
わしらが近付くのを拒むように、クラーケンが振り下ろした一対の触手。
唸る触手・・・その内側へと潜り込んだ!!
「今じゃあ!!」
「・・・おっるあああああああああああああ!!!!」
ぐん、とウルリカが跳ねる。
体に重力を強く感じた一瞬後、今度は浮遊感。
またも背中を踏み台に、飛ぶ。
「RRUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
クラーケンが吠え、空間に無数の魔法陣が浮かぶ。
回転する魔法陣から、氷の塊が連続して機関銃の弾丸のように発射された。
大きさはそう・・・ラグビーボールほどじゃな。
当たれば無事には済むまい。
「しいぃ!!」
即死しそうなものだけを斬ると、氷塊は初めからなかったかのように消滅していく。
迎撃の手が及ばぬいくつかが、手足を抉りながら後方へ抜けていく。
・・・ありがたい。
魔力の放出で失神しかけておったんじゃ。
いい気付けに、なるわい!
血を迸らせながら、氷塊の嵐を抜ける。
丁度、クラーケンの目と目の間・・・真正面に出た。
こう近ければ、魔法も使えまい!
「GRRRUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!!!!」
なんと!?
ここでも魔法を使うか。
自爆も覚悟の上・・・ということか。
はっは、面白い!!
―――じゃがの。
こちらの方が、ちと速いわい!!
「ぬうううううううう・・・!!」
大上段に振りかぶった刀身が、まるで落雷でも受けたかのように周囲を白く染める。
ばちばちと、空気を焦がしながらさらに紫電が飛ぶ。
「しゃあっ!!!!」
魔法陣に体ごとぶつかるように、刀を振り下ろす。
強い抵抗が一瞬あり、魔法陣は明滅しながら消えた。
後に残るは、剥き出しの頭部。
空中で刀を引き寄せ、腰だめに。
「―――鋭えいッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
捻りを効かせた突きを、目の前の頭へと叩き込んだ。
ぞぶり、と刀は鍔元まで突き刺さった。
さあて、これからじゃ!
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!」
吠える。
さらに気合を込め、刀身に力を注ぐ。
見えはしないが、刀からクラーケンの体内へ紫電が放出されていくのが『視える』
「AGYAGIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?!!?!?!?!??!」
名状しがたい悲鳴を上げ、あたかも地震のように振動するクラーケン。
振り落とされんように渾身の力で柄を握りしめ、足を踏ん張る。
まだまだ、魔力は残っておるぞ!!
「がああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
明滅する視界を無視し、さらに注ぎ込む。
「DGU!?!?GAGU!?!?!OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?!?!??!?!?」
視界の端、クラーケンの目玉。
その内側から紫電が放出され、両の目が内側から弾け飛ぶ。
いままで魔法や矢が着弾した皮膚の細かな裂け目や傷からも、同じように放出される。
それを追うように紫がかったクラーケンの体液が、放電によってか、ぐつぐつと煮えたぎりながら噴出する。
海に落ちて冷やされたか、下の方からじゅうじゅうと音がする。
刀を突き入れた個所からもそれは放出され、わしの体を焼く。
ぐう、こりゃ熱湯を浴びせられるのと変わらんな!
脇差も引き抜き、それも突き立てる。
「ぬうう・・・お、おお、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
両腕から魔力が抜けていく感覚。
一度枯れかけた魔力が、何故かまだまだ出てくる。
わしが失神するのが先か、こやつがくたばるのが先か。
我慢比べなら、昔から大得意よ!!
『わーっ!』『もういい!もういい!!』『しんじゃうから、やめてー!!』
気付けば、精霊がわしを取り巻いておる。
わしの両手に纏わりつき、いやいやと首を振るものもいる。
「・・・なんじゃ、こやつを殺すのは、ご法度か」
『ちがうばか!』『じゅうべーがしんじゃう!!』『イカはしんでよし!!』
・・・魔力を放出すると死ぬのか?
『げんど!げんどがある!!』『いっきにそんなだしたら』『のうみそばーんってなる!!』
・・・そりゃ困るのう。
しかしトドメを刺さねばいかんし・・・こちらも困りものじゃわ。
『うんにゅ』『みっしょん』『こんぷりーと!』
ぐらり、とクラーケンが大きく揺れた。
「WA・・・OO・・・S・・・AKU・・・SH・・・I・・・NU・・・」
震えるようなその声を最期に、巨体が海面へ向けて落ちてゆく。
刀越しに、その命が尽きるのを『感じた』
わしの・・・方が、我慢が効いた、か・・・
「いかん、刀を、落とさぬように・・・せね、ば・・・」
・・・下は、海じゃしの。
そんなことを考えながら、視界が狭まっていく。
こちらへ向かって飛ぶように泳ぐセイレーンたち。
その必死の形相を見ながら、わしの意識は闇へと沈んだ。
『良いのう!良いのう!!』
胸の上に誰かが乗っておる感触がある。
軽い・・・子供か、これは。
『ぬふふ』
目を開くと、そこにはどこかで見たような顔をした童女がおった。
わしの胸に跨り、宝石のような目をきらめかせながらこちらを覗きこんでおる。
ここは・・・この白い空間には覚えがある。
いつもリトス様と会う場所じゃ。
お嬢ちゃん、見ず知らずの人間に跨るのは・・・
いや、まさか。
リトス様・・・ですかな?
『すーぐ気付きよった、つまらんのう』
何故、そんなお姿で・・・?
『そなたが特殊な性癖かどうか気になっての・・・反応なしじゃな』
・・・あまり、ぽんぽん叩かないでくだされ。
急所ですので。
『減る物でもないし、よいであろ・・・さて、と』
童女は見る見るうちにその姿を変え、いつものリトス様へと戻った。
女神様、はしたないですぞ。
体のサイズが変わったので、先程までより『危うい』場所に座って・・・いや跨っておる。
『・・・んふふ、反応アリじゃ。男子よのう、十兵衛』
不可抗力でありますなあ、これは。
『ふふふ、我の神気を浴びてなお猛るとは・・・良いのう十兵衛』
あの、あまりその、腰を動かされますと・・・
『くっふふふふ・・・どうじゃ、これ、片方我に捧げぬか?』
・・・あまり触らないでいただきたい。
ある意味腕や目玉より嫌でございます。
『良いではないかぁ!そなたなら片方無くなっても十二分に役に立つであろ?』
・・・男の矜持ゆえ、ご勘弁願いたい。
『むむ、まあ我も無理強いはせぬしのう・・・ほれほれ』
さすらないでいただきたい。
・・・はしたないですぞ。
『そなたの何億倍生きておると思っておるのじゃ・・・』
・・・して、此度の用向きはどのようなものですかな?
『強引に話を戻しおってからに・・・まあよいか、時間もそれほどないし・・・んっ』
そう言うとリトス様は顔を近づけ、やおらわしに口付けをしてきた。
いきなり何を・・・!?
なんじゃこれは。
何かが、口から入ってきよる!?
『んんぅう・・・ぷは。これで良し、と』
リトス様が口を離すと、体中に活力が満ちた。
『そなたの才能を見誤っておったのよ』
・・・それは、わしが思っていたより弱かった、と?
『逆じゃ逆。まさか魔力の発露を覚えたばかりで限界を超えてくるとは思わなんでのう・・・そなた、あのままだと死んでおったぞ』
それは、穏やかではありませんな。
『普通はの、魔力が尽きると気絶する。いわば『安全装置』や『ストッパー』の役目じゃ』
ふむ。
『じゃがそなたは、無意識でその枷を外してしもうた。魔力が尽きれば、その後は魂が魔力として返還される・・・滅多にない事じゃがな』
ふむふむ。
最後に感じた奇妙な感覚は、魂とやらを消費しているものだったのか。
『とりあえず魂はさっきので修復しておいた故、安心せい。どうせそこらへんに漂っておった魔物の魂を変換したもんじゃ・・・元はと言えば、そなたが倒したのじゃし』
何から何まで・・・借りが増えていきますなあ。
『女神相手に借りを気にするなど・・・やはりそなたは面白いのう、まあ気にするな、我の気紛れであるし・・・何より普段から楽しませてもらっとるからのう』
それは何より、ですな。
『うむ!もっともっと、思うがままに暴れるがいい!我への礼ならそれで十分に過ぎる!』
なんとも、有難いお言葉じゃなあ。
『ぬぬ、もう時間か・・・』
白い視界が、さらに白くなってきよった。
現実に戻りつつあるのかのう。
『さて、と。此度はここまでじゃな・・・あ、そうじゃ!』
リトス様が何かを思い出し、慌てて口を開く。
『他の女神にちょっかいかけられても!ホイホイ信徒になるでないぞ!』
他の・・・ああ、この前のマァチ様のことか。
『まったく!男というものはそんなにもでかい乳が良いのか!?そちらの我の像もマァチやヨルゥルよりも小さいし・・・』
なにやらブツブツ呟くリトス様の声を聞きながら、わしは眠りに落ちるように意識を失った。
「起きたね、寝坊助さん」
晴天の下。
ウルリカやセイレーンの面々がわしを覗き込んでおった。
よう見つめられるのう、今日は。
背中側に、硬い感触がある。
ここは、船の甲板か。
セイレーンが運んでくれたんじゃろうなあ。
ありがたい事じゃ。
「どうしたよ?魔力の出し過ぎでイカれちまったのか?」
「・・・さあて、その尻でも揉ませてくれればすぐに治ると思うぞ」
「そんだけ馬鹿言えるんなら大丈夫だな!」
ぺしり、とわしの顔をはたき、ウルリカはにこりと笑った。
・・・色々あったがとりあえず疲れたわい。
今はただ、泥のように眠りたい。
そう思い、わしは再び目を閉じた。
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