第28話 十兵衛、仇討ちを引き受ける

「もう少しでラヒ村に着きますな、そこで一泊いたしましょう」




馬車の窓からアリオ殿が言う。




「小さな村ですがそこの蜂蜜酒は絶品ですよ、ペトラ様」




「ぬあにィ!?オラ何してんだアゼル馬に鞭入れろォ!!」




「どうどう、どうどう」




「あたいは馬じゃねえぞジュウベエ!!」




どちらかと言えば牛じゃな・・・


まったく、酒と聞けば羽目を外しおってからに。








キュクロプスを倒してから2日経つ。


その後もゴブリンやらコボルトやらの雑魚が湧くことはあったが、大物には会えずにここまで歩いてきた。




聞くところによると、この先のラヒ村を越えればもう海が見えるそうな。


後は海沿いの街道を行けば、目的地まで1日で着くらしい。


ふむ、中々の道程じゃ。


これでは発展が遅れるのも無理はないわい。


道は建国道とやらでしっかりしておるが、やはり魔物が問題じゃのう。


それなりの護衛で固めねば旅もできんとは。


物流も糞もあったものではないわい。




「海、海のう・・・楽しみじゃわい」




「我モ!我モ!!初メテ!!」




ぴょいんぴょいんと撥ねるラギは、年相応の少女に見える。


わしより若干身長が高いという点に目を瞑れば、じゃが。




「ジュウベエは海を見たことがありますの?」




「ううむ・・・ある、と思うの」




いい加減記憶喪失の設定が煩わしくなってくるのう・・・


こやつらの人となりはわかったし、そろそろ打ち明けるべきか?


うーむ、しかしのう・・・


まあ、この依頼を終わらせることが先決じゃな。




「昔、親父に連れられて泳いだような気が・・・懐かしいのう」




義理の父親じゃが、遊ぶときはとことん遊ぶ人じゃったな。


養子だというのに随分可愛がってもらったもんじゃ。




「・・・なんじゃお主ら」




見れば、全員が目を丸くしてこちらを見ておる。


ラギなぞ尊敬の眼差しじゃ。




「お、泳いだァ!?海を!?・・・子供の頃からすっげえ修行だなぁ・・・」




ペトラが恐れ入ったように言う。


・・・泳げることがそんなに珍しいのか?




「魔物がウジャウジャいるのに泳ぐなんて・・・本当にジュウベエは修羅の国の生まれですの・・・」




セリンがどこか遠くを見つめている。




「スゴイ!ジュウベ、豪傑!!」




ラギはわしの肩に手を置き、キラキラと見つめてきよる。




・・・しもうた、海は魔物の巣窟じゃったな。


船旅も、船団を組んで魔法使いを山ほど雇ってするものじゃと聞いておったの・・・


いかんいかん、知識で知っていても細かい所で地雷を踏むのう。


気を付けねばなあ。




「はっはっは、魔物のおらぬ入江だったのじゃろうよ、うむ」




とりあえず流しておくことにした。


ここを掘り下げるとボロが出そうじゃわい。






しばらく歩き続けていると、何やら臭う。


なんじゃこれは。


何かが焦げたような・・・




もしや。




「アリオ殿、ラヒ村はこのまま真っ直ぐか」




馬車に寄って聞く。




「ええ、この先の峠を越えればすぐに見えてきますが・・・どうかなさいましたか」




・・・やはりのう。


わしはその質問には答えず、周囲に告げる。




「お主ら、いつでも戦えるようにしておけ・・・嫌な予感がする」




言いつつ、刀の柄糸を点検する。


ゆるむことはないと思うが、これも癖じゃのう。




「・・・焦ゲ臭イ」




わしの次に気付いたのはラギじゃった。


すぐさま背中から弓を取り、いつでも撃てる姿勢になっておる。




「アゼル、何かあればすぐに馬車で逃げよ」




「は、はい!」




慌てて手元に短槍を引き寄せるアゼル。


ペトラは何も言わずに両手に戦斧を持った。




「大気に炎の粒子が濃くなってきましたわ・・・まさか」




セリンも杖に何事かを囁きだした。


そんなことまでわかるのか。


まっこと魔法使いというものは変わった能力じゃのう。




さあて、わしの予想が当たっておらねばよいのじゃが・・・








「やはりか・・・」




峠を若干速足で越えたわしらの目に飛び込んできたものは。




炎でくすぶる村じゃった。




ここから見ただけでも、壊滅していることがわかる。


家という家は破壊されておる。


元は10軒ほどの村だったのじゃろうが、無事な家は一つもない。




「動くものはおらんな・・・道はこれしかない、このまま行くぞ。ラギ!」




「ウ、ウン!」




呆けたラギに声をかけると、すぐさま馬車の屋根に移動した。






「なんて、酷い・・・」




村に着くなり、その惨状を見てセリンがこぼす。




いたるところに死体や、人間の部品が散らばっておる。


とりあえず、近くに倒れていた老人の死体を検分する。


・・・これは切り傷じゃな、剣か。


背中を一太刀で殺されておるの。


中々の腕前じゃ。




隣の老女は背中に金属製の矢が2本・・・心臓を貫いておるな。


かなり深くまで刺さっている。




「・・・盗賊だぜ、たぶん」




わしと死体を検分していたペトラが言う。




「若い男女の死体がねえ・・・奴隷にするんでさらわれたんだと思う」




「魔物の線はないのか?」




「喰った跡がねえ、ゴブリンやコボルトなら喰ってる。ここらにいる他の魔物じゃ弓矢は使えねえし、ゴブリンどもはこんなにいい武具は使ってねえ」




ふむ、まあそうじゃろうな。


殺戮に、統率の跡が見て取れる。


盗賊じゃろう。


それも中々に腕の立つ。




「なんにせよ、デュルケンまで行って領軍なりを派遣してもらう必要がありますわ・・・」




セリンがそうこぼした時。


わしの耳に微かに何かが聞こえた。




『じゅーべー・・・』




いつもとは違う、泣きそうな顔の精霊が一軒の家を指差す。


何かはあそこから聞こえたようじゃ。


とにかく行ってみよう。




他の家よりも少し立派な家じゃ。


村長か何かかのう。




柄に手を置きながら踏み込むと、家中の惨状が目に飛び込んでくる。




壁一面に散らばった鮮血。




腹に槍を刺されて事切れた壮年の男。




部屋の隅で矢が刺さって針鼠のようになって死んでいる同じくらいの女。




そして・・・






床に仰向けで倒れ、浅い息を吐いている10かそこらの男児。






右手はほとんど千切れかけておる。


全身には無数の切り傷。


・・・嬲ったな、外道が。






・・・特に腹の傷が深い。


致命傷じゃな、これは。


もう長くない。




「セリン、魔法具は・・・」




振り返って尋ねると、セリンが目を潤ませながら首を振る。




「ここまでの傷では、もう・・・使えませんわ。回復の魔法具は生命力を増幅しますの・・・元となる生命力が無に等しいとなると・・・」




つまり、もう駄目というわけじゃな。






「・・・ぁ」






わしらの気配に気付いたのか、声を上げる男児。




「・・・おう、坊主。ひどくやられたもんじゃの」




床にしゃがみ、男児の目を見る。




「・・・だ、れ?」




声に力がまるでない。


目も虚ろじゃ。




「旅の傭兵じゃ、ジュウベエという」




「・・・サ、グ」




「ほう、良い名じゃな。・・・ここで何があったか、話せるか?」




座り込み、顔を覗き込んで問いかける。




「わかん、ない・・・きゅうに、やがとんできて・・・いっぱいのとう、ぞくが・・・」




ふむ、やはり盗賊の仕業か。




「とうさんが、やられて、おれも、ささ、れて・・・」




「・・・そうか」




「ね、え、ようへいさん・・・かあさんと、いもうとのアン、ジェは?」




わしに向かって手を伸ばす男児のそれを、そっと握る。


母親と妹・・・


隅に目をやる。




針鼠の方が母親か。


妹は・・・母親が抱え込んでおるな。


まだ小さい。


3歳ほどじゃろう。




・・・母親ごと矢で串刺し、か。


もう死んでおる。




「ね、え」




「おう、母御と妹は無事じゃ。今わしの仲間が治療しておる・・・仲間はハイ=エルフじゃ、なあにすぐによくなるわい」




「そっ・・・か、すごい、や」




男児・・・サグは唇の端を少し持ち上げて笑った。


その色は白。


かなり血を流したらしいの。




「坊主もすぐに治してやるからのう、もう少しの辛抱じゃ」




どうやら目もろくに見えておらぬようじゃ。


これくらいの嘘は、許されるじゃろう。




「ねえ、さん」




「ん?」




不意に手を握る力が強くなった。




「バルねえさん、が、やつらに、つれてかれ・・・て。たす、たすけなきゃ」




姉がおったのか。


先程のペトラの言が正しければ、まだ生きてはおるじゃろう。


奴隷にするのならば。




「よう、へい、さん・・・つ、つよい?」




「おう、わしは強いぞ、すごく強い」




そう答えると、サグの目にわずかばかりの光が戻った。


必死に手を握り込んでくる。




「おね、がい・・・うちにあるものなんでもあげる、から、たす、けて。ねえさん、らいげつ、およめに、いくんだ」




もうほとんど見えておらぬ目からボロボロと涙を零し、サグが懇願する。




「お、れが、まもって、やりたかった、んだけ、ど・・・も、もう」




「何を言うか、お主は助かるぞ坊主」




そう声をかけながら、ふとサグの右手を見る。


粗末な短剣を握っておるな。


刃こぼれも酷い、これでは野菜もろくに切れぬじゃろう。




「おう坊主、いい剣をもっておるなあ・・・わしにくれぬか、それ」




「い、いいよ・・・おれの、たからもの、なんだ」




もはや神経も通っておらぬじゃろう右手から、そっと剣を取る。


それを、サグの目の前に持ってくる。




「そうじゃろうなあ、これはいい剣じゃ・・・これ程のものをもらっただけでお釣りがくるぞ」




「そう、かな」




「そうともさ。よし、これで引き受けよう!姉御のことはわしに任せておけよ坊主」




「・・・あり、が、とう」




サグの呼吸がさらに浅く、静かになってきた。


・・・そろそろ、かの。




「ね、え」




「なんじゃ坊主」




握る左手から急速に力が抜けていく。




「ようへいさん、みたい、に。おれも、つよくなりたい、なあ・・・・つよかった、ら、とうさん、も・・・やられ、ずに・・・」




思わずサグを抱きしめる。


咄嗟に体が動いてしもうた。




「なれるさ、なれるとも」




消えかけていく命。


わしの腕から零れ落ちていく命。


それに言い聞かせるように声を出す。




「弟子にしてやるわい、お主をこの国二番の使い手にしてやる」




「いち、ばん、は?」




サグが光のない目でわしを見る。




「そりゃ、もちろんわしじゃよ」




「あ、は・・・すげえ、や・・・」




「そうとも、すごいぞ」




サグは小さく息を吐いた。


その後、この世のどこも見ていない目をして消え行くほどの小声で呟く。




「かあ・・・さ・・・ん・・・ねむ、い」




それきり、二度と喋ることはなかった。






わしは、サグの亡骸を床に横たえて腕を組ませて目を閉じさせた。


まるで眠っているように穏やかな顔じゃのう。




「おん かかか びさんまえい そわか」




手をあわせて3度唱える。


この世界に地蔵菩薩がおるかはわからぬが、まあいいじゃろう。


似たような神はおるはずじゃ。




「・・・埋葬は、もう少し待ってくれよ」




立ち上がって振り返ると、ラギが仮面の穴からぽたりぽたりと涙を零しておった。




「子供、死ヌ・・・カナ、シイ・・・ツライ」




ペトラは眉を寄せてきつく目を閉じ、セリンは目に涙を溜めておる。


優しい娘たちじゃな。




ラギを軽く抱きしめて頭を撫でると、わしにぐりぐりと顔を押し付けてくる。




「ウウ・・・アウウウ・・・」




「よしよし、お主はいい娘じゃな・・・本当に、いい娘じゃ」




そのまま、戸口の外にアゼルと立っておるアリオ殿に告げる。




「すまぬのう・・・アリオ殿、死人からの依頼じゃ。少し待っていてくれぬか」




「ええ、ご自由になさってくださいジュウベエ様」




人のよさそうな顔いっぱいに悲しみをたたえて、アリオ殿が答えた。


アゼルはその横で憤怒の形相。


自分の境遇と重ねておるのじゃろうか。


若いのう。




「ナリアと同じくらいだろうに・・・なんと、なんと不憫な・・・!」




アリオ殿は顔を覆い、その目から大粒の涙を零した。


大商人じゃろうに、なんとまあ人のいい事よ。




「・・・精霊ども、『あねさま』でもよい・・・盗賊はどこにおる。力を貸してくれぬか」




この状況からして、そう遠くにも行っておるまい。


奴隷候補を抱えておるしのう。


空中に問いかけると、すぐに答えが返ってきた。




『この先の海岸沿いに洞窟があります、そこです』




ほう、あねさまの方か。




「・・・すまんのう、何かで礼はする」




『いいえ、この程度、お気になさらず』




不意に後方に気配を感じて振り返ると、サグの遺体を取り囲むように多くの精霊がおった。


なんじゃ、いったい。




『さかえよ』『さかえよ』『のちのよで』『さかえよ』




口々に精霊が言う。


いつもと違って、何やら荘厳な雰囲気じゃ。




『かつえぬように』『いたまぬように』『なげかぬように』『わかれぬように』




そのうちに精霊どもの体が発光し、それに呼応するかのようにサグの体から『何か』が抜け出るのが見えた。






『『『いとしきものよ、やすらかにあれ』』』






精霊どもの放つ光が七色に輝きながら伸びていく。


まるで、天に向かって伸びる柱のような光じゃ。




村のあちこちから『何か』がそれに沿って天に昇るのが見える。


・・・魂か、あれは。


なんと、美しいものか。


なんと、悲しいものか。




ぼうっと見ていると、サグから出た『何か』は天に昇らずにそのまま精霊と共におる。




『まってるって』『ここで』『かえってくるのをまってるって』




精霊がわしに向かって言う。




「すぐに・・・すぐに戻ってきてやるわい、待っとれよ・・・待っとれよ、坊主」




わしは後ろを向き、軽く手を上げるとそう答えた。


胸がつかえて、それ以上は言葉にならなんだ。


はは、若返ると心がすぐ動いて困るわい。






「セリン、ペトラ、ラギ、お主らはここでアリオ殿を守ってくれ」




「嫌!ジュウベト行ク!!」




「水臭ぇぜ、ジュウベエ!あたいも頭に来てんだからよ!!」




興奮する2人の肩に手を置く。




「いかん、もしかしたらここに入れ違いで盗賊が来るやもしれん・・・わしらは護衛じゃ、アリオ殿の安全を第一に考えねばならぬ」




「・・・でしたら、ジュウベエもそうでなくって?」




セリンの問いに答える。




「わしはサグから依頼を受けたからのう・・・死人との約定を破るわけにはいかぬよ」




短剣を掲げて言う。


この約定は、なんとしても果たさねばならぬ。


なんとしてもじゃ。




「デモ、デモ、盗賊、多イ!」




「そうだよジュウベエ!足跡から見て、奴ら最低でも20人はいやがるぞ!!」




ふむ、まあそれくらいはおるじゃろうなあ。




・・・だが、それがどうした。




「よいよい、それくらいわしが軽く皆殺しにしてくれるわい」




これは驕りではなく確信じゃ。


あんな手合いに、わしが負けるわけがない。




負けて、やらぬわい。




「のう、頼むわい。デュルケンに着いたら奢ってやるから許せ・・・のう?」




「デモ・・・」




「わしが、あんな外道に負けると・・・思っておるのか?」




そう言うと、2人は少し体を震わせて静かになった。




「・・・腹が破けるまで食ってやっからな」




「・・・右ニ同ジ」




「おう、それじゃあ頼むぞ」




そうと決まれば急がねば。


奴らが勝利の余韻に酔っておるうちに。




「ジュウベエ様、くれぐれもお気をつけてください!」




「ご無理は、なさらぬように」




アゼルとアリオ殿が、そろって頭を下げてくる。


我儘に付き合ってもらって済まんのう・・・




「・・・もし死んだら、死霊術でコキ使ってやりますわよ!」




「お、おう」




セリンよ・・・お主とんでもないことを言うのう。


死霊術が何かはわからぬが、ろくでもないことになりそうじゃ。




「半日経っても戻らぬ時は、領軍でもなんでも好きに呼べい・・・ではの、ちょっくらゴミ掃除に行ってくるわい」




仲間たちにそう告げ、編み笠を預けて海岸の方へ歩き出した。






「なんつう、おっかねえ面だよ、ジュウベエ・・・なんだ、あの目は」




「ジュウベ、ドラゴンガ笑ッタミタイ、ダッタ・・・」






『あそこです、あの洞穴です』




『あねさま』の指示で歩くことしばし。


目の前にぽっかり穴を開けた洞穴が見える。


かなり深そうじゃな。




入り口の両脇には、槍を持った男が2人。


見張りじゃろうな。




『あの、ジュウベエ様、助勢の方は・・・』




「いらぬ。この程度、わしだけで十分じゃわい」




心配そうにつぶやく声に返し、刀に手を添えて歩き出す。






「なんだてめえ」「失せな」




わしの姿を視認すると、見張りが口々に吐き捨てる。




「いやなに、少し親分さんに耳寄りな情報があってのう」




軽く答えながら、すたすたと近付き。


間合いに、入った。




「なにい!?ガセだったら許さねぇz」




まず右の門番の首を撥ね。




「・・・は?」




呆けたような左の門番の首も撥ねた。


・・・ふむ、冴えておるのう、技が。




時間差をつけて首が地面に落ち、湿った音を立てる。


首を失ったまま突っ立っておる体を蹴り倒し、洞穴に足を踏み入れる。




先程のサグの末期が目に浮かんだ。


あの目が、涙が。


必死に握ってきた手の感覚が。






わしら戦士は死んでも構わぬ。


なぜなら、戦いを生業とするからじゃ。


殺すものは、殺されることもある。


・・・簡単なことじゃ。




じゃがあいつは、サグは。


村の住人は。


戦いの中で死ぬ命ではなかったハズじゃ。


大地に根を張り、末永く穏やかに生きていくハズじゃった。




じゃがあいつらの命は刈り取られた。


逃げる相手を殺せる者どもに。


戦えぬ者を嬉々として手にかける外道に。




そいつがわしには、どうにも我慢がならぬ。




足を踏み出す度に、臓腑から炎のような怒りが湧く。


背中を押すように、前から引くように。


わしの体を、懐かしい憤怒の感情が満たしている。


・・・若返って初めてじゃな、これほど腹が立つのは。




「あん?誰だお前」




洞穴の暗がりから、怪訝な顔の盗賊が顔を出す。




「名乗りはせぬ。名も聞かぬ」




「っが・・・あ・・・?」




首を脇差で薙ぐ。


盗賊は呆けた顔のまま絶命した。




「――ただ、その薄汚れた命だけを寄越せ」




わしは、そのまま洞穴の奥へ向かって歩き出した。

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