第19話 十兵衛、治療の後再び夜の街へ。(※性的描写アリ)

ラギや皆に気を遣われながら、やっと街まで帰ってきた。


急げばその日のうちに帰れたが、半ば無理やりに途中で野宿したので翌日の昼前に着いた。


聞けば城門は夜の間は完全に封鎖されるとのことで、仕方ない事じゃが。




足には全く問題がなかったので走れば十分に間に合う、と思ったのじゃがなあ。


セリンにはキツく止められ、ペトラは呆れながらもやはり止めてくる。




ラギに至っては途中から明らかに涙声になってきおったので、言う通りにした。


わしに爺様を重ねておるのか知らぬが、なんとも心配性じゃな。




その後も食事を食べさせられるわ、就寝時には刺さった地竜の棘がこれ以上食い込まぬように簡易的なハンモックまでこしらえてくれたわい。


気分はすっかり介護老人じゃ。


前の世界でもなかった体験じゃのう。






とまあ、そんなこんなでやっとヴィグランデの街に帰還したというわけじゃ。




「腹が減ったのう、どこかで昼飯を・・・」




「ダメ!先二治療院、行ク!!」




「わかったわい・・・すまんのう」




ちなみに治療院とは、魔法ギルドが運営している病院のようなものじゃ。


手練れの回復・治療魔法使いたちが常駐しており、それなりに値は張るが即死以外はだいたい治るという触れ込みらしい。


・・・以前エルフの若造を叩き斬った時に、そんなことを聞いた気がする。




わしの様相を見て驚いた門番に心配されながら、城門をくぐる。




「おう、そうじゃ・・・あの地竜はこれからどうなるんじゃ?」




「カードにわたくし達の討伐記録はしっかり記憶されていますし、竜は国が買い上げてくれますわ」




ふと気になったので聞くと、そのような答えが返ってきた。




「竜、死ンデモ魔力多イ、獣、食ワナイ、安心」




「それに竜ってのは全身素材の塊だからな、討伐報酬と買い取り金額がうめえんだぜ!」




にしし、とペトラが歯を剝きだして笑う。


ほほう、それは重畳。




「わしの治療費は払えそうじゃなあ」




「何を言っていますのジュウベエ、あなたの治療費はわたくしが持ちますわ」




なんと、それは・・・




「こう言うといやらしいですが、わたくしお金には不自由しておりませんの。研究成果に報奨金は出ますし、それに魔法を使えればいくらでも稼げますの」




伊達に長生きはしておらぬ、というわけじゃな。


純粋に探究心で日々を生きておるというわけじゃ。


ふむ、こういう浮世離れしたところはエルフのイメージ通りじゃが・・・




「むむぅ・・・なにか、おばあ様扱いしてませんこと?」




「まさか、こんな美人の婆様がおるかよ」




「あらぁ~!もう!ジュウベエは口が上手いですわねぇ~!」




歩きながらクネクネと体を揺らすセリンである。


器用なことよな。






「あらぁ、ラギちゃんじゃなぁい!」




門をくぐってしばし後、魔法ギルドを目指す我々に声をかけてくる人影がある。


よく知った声じゃ。




「ライネ!!」




休みか休憩か、いつもの制服ではなく私服でこちらへ歩いてくる。




「随分早いお帰りねぇ、空振りだったのぉ?」




「違ウ、色々アッテ、一時撤退」




「ようライネじゃねえか、元気そうだな」




「ペトラも、相変わらず露出が多いわねぇ」




おや、ペトラとも知り合いか。


まあギルドの職員じゃし、当たり前かの。




「・・・あらぁ?エルフさんもいるのに、ジュウベーがいないわねぇ。別行動?」




不思議そうにライネが言う。


・・・ああそうか、今のわし包帯お化けじゃものな。


ここは人も多いし、気付かぬのじゃろう。




「ジュウベ、コレ」




ラギがわしを指差す。


コレとはなんじゃコレとは。




「おう、わしじゃよライネ」




「えっ・・・」




声を掛けると、ライネはわしを見開いた眼でじろじろと見てくる。


頭のてっぺんからつま先まで3往復ほどしたじゃろうか。


そりゃあ、びっくりするじゃろうよ。






「き、き、キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」






ライネは突如として悲鳴を上げ、わしに駆け寄ってくる。


なんじゃいきなり。




「なっなん・・・なんなん・・・!」




涙目でわしの体をまさぐるライネ。


くすぐったいのう。




「ジュウベー!どうしたのよぉ!?ああっひ、ひどい傷!!早く治療院に行かないとぉ!!」




ここにも心配性がおったわ。


こんなところで大声を出したもんじゃから注目されとる。


ううむ、気持ちは大変ありがたいが気まずいのう。








「これは・・・地竜の魔法ですね?」




「うむ、急所は外れておるぞ」




「いやそうですが・・・全身の傷に貫通痕多数・・・よく歩いて帰れましたね?」




「痛みは無視できる、出血もさほど酷くはないしの」




棘を抜き、傷口を焼いて消毒することもできた。


ラギがもうギャンギャン泣きながら止めるので、さすがにやめておいたがのう。




「傭兵の皆様は我慢強いんですねえ・・・とにかく、まずは棘の除去から始めます」




「うむ、頼むぞお嬢ちゃん」




魔法ギルドの近隣。


そこにある治療院の診察室で、困り顔の若いエルフの娘から問診を受けておる。


いや、若い・・・のか?


どうもエルフの年齢はわからぬわい。




室内にはセリンたちに、何故かライネまでおる。


あの後当然のように付いて来た。


まあ別にいいんじゃがな・・・




どうにもこの喋り方と中身のせいで、いわゆる『おじいちゃんっ子』というタイプには過剰に心配される気がするのう。


中身も喋り方も変えられぬから、しかたないのじゃが。




この前、ふと思い立って普通の若者言葉でキトゥン嬢に話しかけてみた。


信じられないものを見る目で見られ、尻尾がぶわわと膨らんでおったわ。


あれ以来喋り方を変える気はない。






「棘の除去、始めます・・・」




エルフが寝台に横たえられたわしの上に杖をかざして何事か唱える。


すると、体に埋まっていた棘が自動的に抜けていった。


麻酔のような魔法も使ったのか、全く痛みはない。


まあ、返しが付いておるので血は出るが。


それも空間に溶けるように消えていく。




「うええ・・・見てるだけでいてぇ・・・」




なら何故ここにおるペトラよ。




「上半身は終わりましたので、申し訳ありませんが下半身のお着物を・・・」




ぬ、そうであった。


さすがに袴越しでは無理か。


寝台から下り、帯を解く。


・・・おっと。




「・・・お主ら、わしの裸が見たいんじゃったら好きにせいよ」




そう言いながら袴をストンと地面に落とす。


途端にバタバタと退散していく仲間たち。




「おお~いい体だなあジュウベエ」




「・・・お主も中々のもんじゃよ」




「へっへへ、そうだろぉ?」




ペトラだけは普通の顔をして座っておる。


変わっておるのう。


こ奴の中身は男のようなもんじゃの、うん。




「わあ・・・変わった下着ですね、お国の物ですか?」




褌を見て、エルフが問いかけてくる。


・・・こやつも中々面白い奴じゃのう。






「はい、傷の治療も終わりましたよ」




一息つきながら杖を下すエルフ。


おお、これは凄い。


各所の傷が綺麗に塞がっておる。


ひきつれや違和感もないのう・・・


魔法というものは、まっこと便利なものじゃな。




「世話になったの」




ふう、ようやっと上着が着れるわい。




着付けをし、腰に大小を差すとようやく人心地ついた。


やはりこれが一番落ち着くのう。


洋服よりも和服じゃ。




「お召し物も変わってますねぇ・・・綺麗な布地・・・」




襦袢を見てエルフがうっとりとした顔をする。


ただの変態かと思うたが、服飾に興味があるのかのう・・・




「あれ?そういえば穴が開いていませんでしたか・・・?」




「さてのう・・・それでは失礼する。また機会があればよろしくの、お嬢ちゃん」




「あっはい!お大事に~!」




祝福の作用で服が直ることをすっかり忘れておった!


このままじゃといつぼろが出るかわからぬ。


そそくさと退散することにした。








「それでは、3日後にまたここで」




「うむ、ではの」




「あいよ~」




「ワカッタ」




魔法ギルドまで戻り、一旦解散という事になった。


地竜についての報告と、地竜含め各種討伐素材の集計。


それらの清算に3日ほどかかるということじゃった。




それまでは好きにしろ、というわけじゃな。




「急な連絡をするかもしれませんので、特にジュウベエは街から出てはいけませんわよ~」




「ジュウベ!養生!スル!!」




「わかった、わかったわい・・・」




今回の件でラギも専属契約を結ぶことになったようで、セリンとラギは傭兵ギルドに連れ立って行った。


まあのう、有能じゃしな、ラギ。




・・・しかしわし、そんなに危なっかしいかの?


ううむ、心配され過ぎるのも困りものじゃな・・・




「あたいは疲れたからとりあえず食って寝るわ、じゃあなジュウベエ、明日あたりギルドで飲もうぜ~」




大あくびをしながらペトラも去っていく。




わしも、とりあえず腹ごしらえをするとしようか。


ラギがお粥のようなものしか食わせてくれなかったしのう。


とにかく腹が減った。


適当な飯屋を見つけて食うとするか。




「お主も行くかライネ、奢るぞ」




「行く行く、行くわぁ~」




丁度いいところにライネがおったので、いい店を紹介してもらうとしようか。


この前約束したしの。






「・・・で、もう最悪だったのよぉ~」




「ふむ(うまいなこれは、何の肉じゃろう)」




「胸とかお尻ばぁっかり見てくるしぃ~」




「なるほど(出汁がよく出ておるの、高いだけはある)」




「ちょっとぉ、ジュウベー聞いてるぅ?」




「お主は見目麗しいからのう、つい見てしまうのでわしも気をつけねばな(しかし、醤油・・・醤油が恋しいのう)」




「あらもう・・・ジュウベーはいいのよぉ、なんていうか視線がね、ジメっとしてないからぁ」




ライネに紹介された店で、愚痴を聞きながら値の張る料理を食っている。


受付嬢というのは、存外にストレスが溜まるものらしい。


傭兵という者たちは、良かれ悪かれ頭があまりよろしくないしのう。


教育水準が低いゆえ、仕方がないが。




・・・うまい、この世界の料理人もなかなかやるもんじゃの。


じゃが、やはり魔物の関係で流通が難しいのか新鮮なものは少ないのう。


魚が食いたいもんじゃ。


調べたところ一番近い港までは馬車で4日ほどかかるそうな。


今度護衛依頼でも受けるかのう・・・








昼食後、仕事に戻ると言うライネと別れた。


さて、これからどうするかのう・・・


鍛冶屋に行く用事もないし、かといってすぐにアリオ殿の屋敷に戻るというのも・・・


ふむ、そういえばわしはこの街のことをまだ隅々までは知らんのう。


少し散策するか。


夜になったら屋敷へ戻ろう。








「あらぁ、また来てくれたのねぇジュウベエさん」




「美人の約束は断れんからのう・・・少しばかり早いが、もう開いておるのか?」




店先のミリィ嬢が、怪しい笑みを浮かべてわしを見てくる。


夕日が反射する蜘蛛脚がなんとも艶めかしい・・・




適当に散策し、屋敷へ戻るつもりが気が付けば黒糸館に来ておった。


来ようと思っても最近忙しかったしのう・・・


・・・まあ、街に戻ったことは屋敷には伝えておらんからいいじゃろう。




「うふふ、ウチはいつでも開いてるのよ・・・いい男にはねぇ。さぁ入って入ってぇ」




嬉しいことを言ってくれる。


煽て文句でも美人に言われれば何でも許すわい。






「ジュウベエさまぁ!飲んで飲んでっ!」




「元気そうじゃのう、リーノ」




「はいっ!もうバンバン稼いでやるんだからっ!」




いつぞやのリーノ(ミリィに、自分も含め嬢はいらぬと言われた)が、元気に酒を勧めてくる。


すっかり元気を取り戻したようで何よりじゃ。




「今日はお仕事の帰りですか?」




「む、そうじゃな。荒野の方までちいとのう」




左隣に座っておる、巻き角のビーストが聞いてくる。


右隣はリーノじゃ。


今はわししか客がおらんので両手に華じゃな。


うむ、リーノもこの娘も素晴らしいものを持っておるのう。




「何と戦ったんですか?それとも護衛ですか?」




「む・・・ゴブリンと、首狩りウサギと・・・それから地竜じゃな」




「地竜!!ジュウベエさまって強いんですねえ!!」




「荒野に出たんですか、地竜が・・・怖いなあ」




リーノは目を輝かせ、巻き角は小さく震えた。




「なあに、仲間のおかげで楽な相手じゃったわ。国に報告するとか言うておったから、大丈夫じゃろうて」




ここの城壁が地竜の攻撃に破られるとは思えんしのう。


確かにあ奴はなかなか強かったが、防御を固めた兵士にかかればそれほど脅威でもあるまい。


城壁には馬鹿でかい弓の化け物も備え付けられておるしのう。




「私ぃ、強い男の人って好きだなあ・・・」




リーノが体を寄せ、潤んだ瞳で見上げてくる。


尻尾が生き物のように、わしの腕に巻き付いて撫でてくる。


おいおい、まだ夕方じゃぞ。




「どうしたリーノ、もう酔ったのか?」




「ジュウベエさまぁ・・・私、『上』に行きたいです・・・駄目ですか?」






『上』とは前にも言うた通り、男女が『仲良く』する寝室がいくつもある。






「ふむ・・・まだ2度しか会っておらぬが、わしでよいのか?」




「うん・・・私、ジュウベエさまがいい!」




・・・ここまで言われて、帰るわけにもいくまいよ。


恥をかかすわけにはいかんな。






この店は他の娼館と違い、娼婦から誘われねば『そういう』関係にはなれぬ。


無理やり関係を結ぼうとすれば、即座に出入り禁止となる。


見える範囲にはおらぬが、潜んでいる凄腕の用心棒によって叩きだされる、らしい。


前にダイドラに聞いた。




さらにもう一つ。


ミリィ嬢は随分やり手らしく、色々な方面に顔が利く。


ここから出禁になった者は、いつの間にか町からも消える、らしい。


これはゴドが言うておった。






安心して女性が稼げる、というわけじゃな。


なるほどいい店じゃ。


わしとしても、元気のない女を抱くのは趣味ではないしのう。




「(・・・おぬしら、ついてきたら許さぬぞ)」




『ちぇー』『はーい』『ぷらいばしー!』




これで良し。






巻き角に囃し立てられながら、らせん状の階段を連れ立って吹き抜けの2階へ上がり、部屋に入る。


ふむ、電化製品がない以外は前の世界でも馴染みの空間じゃのう。


まあ、男女のアレコレがそうそう変わるものでもないじゃろうし。




「すまぬが、この国でのこういう場所は初めてでな、色々教えてくれ、リーノ」




「はいっ!お任せください!まずはこちらで服を脱いで、あの、お嫌でなければ私が背中を・・・」




「嫌なものか、頼むぞ」




服を脱ぎ、お互い生まれたままの姿になる。


ほう・・・ビーストの裸はこうなっておるのか。




「ちょっとぉ、見すぎですよぉ!」




ふむふむ、毛皮が美しい。


人間とは少し違うが、全く問題ではないな。


いける。




「でも、ジュウベエさま、すっごい体・・・」




やけにぎらついた目でわしを凝視するリーノ。


そのまま正面から急に抱き着いてきおった。


胸に当たる感覚が素晴らしい。




「ぬお、おいおい落ち着け、背中は流さんでもいいのか?」




「私・・・綺麗にしてますから、ジュウベエさまが嫌じゃなければ・・・このまま・・・」




「ふむ・・・先に言っておくぞリーノ」




「ひゃんっ!」




リーノを抱き上げ、横抱きにしてベッドへ運ぶ。


そのままぽすんと投げ落とした。




「すまぬが、大分ご無沙汰でのう・・・やり過ぎるかもしれん」




「・・・あぅ、す、すっごい・・・あのあの、ど、どうぞお好きなように・・・♡」




リーノがベッドの上で寝転んだまま腹をわしに見せ、誘う。


・・・許可は出たな。




さすれば。




田宮十兵衛・・・参る!!






勢いよく扉を開けると、目の前の廊下にミリィがおった。


助かった!




「おお、ちょうどよいところに、ミリィ!」




「あらぁ?どうなさったのジュウベエさん・・・リーノになにかご不満でもぉ?」




何やら不機嫌じゃが、気にしている場合ではない。




「済まぬ!リーノが気をやってしもうた、まったく起きぬのじゃ!」




「・・・はぁ?」




「何分ご無沙汰だったゆえ、その・・・加減が・・・誓って暴力なぞは振るっておらぬ!とにかく医者を呼んでくれ!!」




「噓でしょ・・・人族が、ビーストを?と、とにかく私が確認するわ、ジュウベエさんは着替えて下に行ってて!」








いかんいかん・・・いかんのう。


とりあえず1階の適当なソファーに腰を下ろし、先程の巻き角から酒をついで貰う。




「あの・・・きっと大丈夫ですよ、リーノちゃん丈夫ですから」




「うぐぐ・・・わしとしたことがなんと情けない・・・学生の頃を思い出す・・・」




「ガクセイ?」




度の強い酒をグビリと飲む。


大丈夫じゃろうか、リーノは。




「あ、メイラじゃん、今日は早いねー」




出勤してきたであろう、艶めかしい青肌の娼婦が声をかけてくる。


この巻き角、メイラというのか。




「あ、前に来た傭兵さんじゃん、どったの?なんか落ち込んでるけど」




「うん、あのね、リーノの相方だったんだけど・・・その、失神させちゃったんだって」




「・・・はぁあ?え、傭兵さん人族だよね?オーガじゃないよね?」




ぬ、この青肌隣に座りよった。


やけに密着してくるが、今はとてもそんな気分ではないわい。




「ね、ね、傭兵さん、ちょっと私の目、見てくれるぅ?」




「だ、駄目だよラクロちゃん魅了しちゃ!」




「ちーがうちがう、ちょっと『精力オド』調べるだけだってえ・・・魅了使ったらママに追い出されるもん」




「・・・何かわからぬが、害がないなら好きにせい」




もうどうでもいいわい。


飲みすぎたかのう。




「んでは失礼して・・・」




横を向くと、青肌・・・ラクロというたか。


ほう、こ奴は3つ目か。


額の目が薄青く発光して綺麗じゃな。




「お、おお?おおおおおお!?マジ!?すっごぉ・・・」




急にラクロが頬を染めるなり、わしの腕を抱える。


なんじゃ、いきなり。




「ね!ね!傭兵さん!!上行こ!上!!今すぐ行こ!!!」




「ちょっと!ラクロちゃん!!」




「やーだー!このオドすっごいのお!リーノ失神させたのも納得なのお!!私も味見するのお!!」




中々に剛力じゃし強引じゃな、こ奴。


何なのかわからんが、もう今日はそんな気分では・・・






「ジュウベエさまぁ!!」




「ぐもう!?」






急に視界が真っ暗に!?


なんじゃこの・・・この匂いはリーノか。


急に飛びつくからびっくりしたわい。


2階から飛び降りてきよったのか。




「ひゃあああ!リーノちゃん服着て服!!あああユーキちゃん扉閉めてぇ!!!」




メイラが叫ぶ声と、ばたりと扉が閉まる音。


感触がいいと思ったら丸裸か、リーノ。


幸せな感触を堪能しつつ、体を離す。




「よかった・・・気が付いたかリーノ、体は・・・」




「くううぅ~~~ん!!」




リーノがわしの胸に顔をごしごしと擦り付けてくる。


まるで犬のようじゃ。


息まで荒い。




「ど、どうしたんじゃ、おい、リーノ」




「2回戦ですっ!2回戦しましょ!ジュウベエさまぁ!!」




・・・なんじゃと?




「すっごいの・・・あんなすっごいの初めてだったんですぅ!ごめんなさい失神しちゃって!次は頑張りますからっ!!」




「わぁ~い!わったしもまっざる~ぅ!!」




「ま、待て待てお主らちょっと待ておい待たぬか」




リーノとラクロ、2人がかりでもう一度2階へ連れていかれる。


その途中でミリィに会ったが、顔を赤くして目を逸らされた。




「・・・ごゆっくりぃ、ジュウベエさぁん」




ぐぬぬ・・・ここまで来たら覚悟を決めるとするか。


2対1とは・・・相手にとって不足なし!!






据え膳食わぬは男の恥・・・田宮十兵衛、再び参る!!






・・・金、足りるかのう。





『ぜつりんだ』『けだものだ』『あねさまに、おしえたげよっと』

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