第20話 世間で言う脳が壊れる感覚……あれ、悪くないかも……
「っふぁー!」
「おはようさと君」
「おはようございます。智様」
「おはよー」
全身を包み込む気だるさから無理矢理逃れようと腹部に力をグッと入れたら痛みによってベットに再び沈んだ。
その光景を見て苦笑する結愛と美晴さん。
「コーヒー淹れてきました。エスプレッソでよろしかったですか?」
「サンキュー」
「さと君ってさー甘いの苦手なんだよねー」
「苦手ではないぞ厳密には」
液体。特にコーヒーが甘いのに納得してないだけだと付け加えて、コーヒーを一口。
いい香りだ。
コーヒーはこれがたまんない。
脳全体にカフェインが叩き込まれる感覚に合わさって鼻腔を抜けるほのかな香りの調和は言うまでもない。
ふー。
一息ついたところで、あれやっちゃいますか。
「朝っぱらからどうした? ついぞ俺にエロ同人まがいなことしに来たか? 上等だ。だが忘れるな、肉体をいくら蹂躙されたところで、心は屈したりしないってことを」
「裸で言うセリフじゃなーい。刺激しないで? もう優しくできそうにないかも」
「その、まずは服を着ていただけますか? 血痕染み付いたシーツもその、洗濯したい……です」
ムラっとした顔の結愛と徐々に赤みを帯びていく美晴さん。
体調が万全ではなかったため&逃がさないためのだったらしき手錠は既に解かれている。
そういえば今日、レナ先輩来るんじゃなかったっけ?
「そういえば、今何時?」
シートを回収していく美晴さんと入れ替わる形で立ち上がった俺の元へ服を持ってきて結愛が着せてくれている。
「12時30分くらい?」
予想外すぎる返事が返ってきて唖然とする。
「レナ先輩来てないのか?」
「2時間くらい前に着いたよー? ねぼすけやろーになった」
「2時間も放置してた? 先輩ちなみに今なにしてる?」
「えとねえーさと君」
「ん?」
チュッ。
「おまっ!?」
「はわっ」
「わ・す・れ・も・の」
「レナ先輩には自慢するためだけに後ろに隠れて貰ってたのだー!」
「ふ、二人が結婚したのってその、本当だったの?!」
目をくるくるさせて慌てふためき始めたレナ先輩を目が合う。
合ってしまった。
見られてしまった。
「せ、先輩これは!」
「ごまかしたら」
承知しなーい。と耳元に囁かれた。
今ので完全に目が覚めた。
風穴はもう勘弁だ。
「これは……嫁と彼女との翌日でございます」
「もう私も美晴も初めて捧げましたー! どう? さと君奪われて悔しい? 涙出そ?」
「すごく、悔しいけど、なんだろう。脳が壊れそうで涙出てきそうなのに妙なコウフンが……」
「さと君さ、この女なんなのー? 無敵すぎるけど」
「正直知らなかった。レナ先輩がNTR肯定派だったなんて」
付き合ってた当時、俺が浮気したことがきっかで結愛や美晴さん、美愛さんと接点が持つこととなって、ハーレム計画にまでたどり着いた。
やたら怒らず、冷静なままだったのはこういう趣味があったからなのだろうか。
ちなみに俺も結愛も否定派である。
どこに魅力があるかさっぱりだ。痛いだけじゃん。
「ち、違うよ? 未来を約束したものとしておおらかな女神のような心で……」
「最近の女神って悪巧みの挙句殺される役か、嫉妬に目が眩んで自滅するパターン多いって知ってる? 先輩」
「嘘、そんなの流行ってるの?」
「まぁ、中には他の女とわざと寝かせるパターンもあるらしーよ」
「わたし女神は向いてないかも」
「さっき布団見て顔赤らめてたの誰かなー?」
「で、でも初めてはわたしが貰ったから勝ちだよ!」
「ぶっ殺すわよ」
「喧嘩売ってきたのそっちじゃんー怖いさとし君―!」
「さと君に尻尾振るのやめなさい泥棒ネコ!」
掴みかかるふりだけの辺り、ガチでキレてるわけではないようで一安心だ。
先輩が結愛に辿り着いた時なんてそりゃもうひどかった。
刀取り出した時はマジで生きた心地しなかった。
美愛さんは冷静だったけど美晴さんも射抜いて殺しそうな目つきになってたっけ。
「待たせてしまってごめん」
バタバタと部屋を走り回る先輩に軽く謝罪の一言。
「ううん、いいよ。ぐっすり眠れた?」
平然とこちらへ逃げて来てはそんなねぎらいを口にする。
相変わらず母性愛の権化だなー。
「いつもぐっすりしすぎなくらいだ」
「さっき着替える時。ね、お腹に包帯巻かれてたのがチラッと見えたけど、今回の嫁とか彼女とかと関係あるんだよね?」
「ああ」
「皆様こちらへ。お茶の用意が整いました。そちらで説明させていただいてもよろしいでしょうか」
「オーケー。移動しよう先輩」
「行くわよ」
「……お願いします」
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