第15話 イベントで役得するのは男子だけだと思ってた

「似合ってる! さすが私、眼力高い! さと君神々し過ぎ、めっちゃエロい!」

「さすがわたしのか、彼氏様……。お嬢様、監禁っていいですよね」

「ねー。こういうセクシーな旦那様ひとりで外歩かせたらメンヘラに寝取られちゃうわー」

「二人ともすっごい可愛い! この世に舞い降りた女神様みたいだ! ラノベ業界で最近ブームになってる何大美少女?ってレベルだ!」

「結愛は上下セットのブラウンチェックのカーディガンとミニスカ、中からチラッと見える純白色のブラウスと多少アンバランスとも取れるが俺の好みを充分理解した上であえて選んだと思しき白い長ストッキングの組み合わせが最高に可愛い。好みどストライクと言っていい!」

「嫁だぞー! あなたの好みなんてずっと前から熟知してるよ」

「美晴さんは普段から滲ませる仕事できるウーマンでも、最近よく身につけるようになったメイド服でもない、あえてギャルっぽい超短いミニスカにヘソがチラッと見えるタンクトップ、それらをバランスよく調整してくれる萌え袖のカーディガンまで。さすが俺の彼女だよ」

「重い発言は重々承知ですけど、彼女ですから……ね」

普段の凛とした雰囲気はどこへやら、いたずらっぽいが一途なギャルを具現化したようなあざといセリフを披露する。

正直どっちも可愛すぎる。

ぶっちゃけ押し倒したいくらいだ。

本能に突き動かされて褒めぬいたのだ。

ひとつは性欲。男なら誰もが持つ自然の摂理で、

もうひとつは……。

「お礼に私もちゃんと言うわー。あえて私のバカみたいなリクエストに答えてくれるために執事服選んだ? 嬉しくて濡れる―! 程よい身長をマッチして張り付き、エロを増幅させた白いワイシャツにこれまた脱ぐ回数を伸ばす意図だろうけど、逆にゴシック感を滲ませる役目を果たす蝶のネクタイ、全体を引き締めあげて執事バージョンのさと君っていうレアで最高のご馳走の決め手となったロングテールコート。最高よ? 旦那様ってほんっっと、嫁がわかってらっしゃる♪」

おかしいぞ。

結愛の目線から先ほどよりましたぎらつきを増した。

一歩後ずさりすると、いつの間にか後ろに立っていた美晴さんにつかまされた。

「ありがと美晴さん」

「智様、わたしからも一言申し上げてよろしいでしょうか?」

「えっ?」

ありえないくらい強い力でつかまされて、耳元で囁かれた。

支えるためじゃなく逃がさないためだったのか。

美晴さんもまた結愛に負けないぎらついた視線を向けて口を開いた。

「お嬢様が言ったことは全面的に同意いたします。しかしわたしは不格好に結ばれた蝶のネクタイにめぐりあげられたシャツの首元と、張り付くか否か曖昧なズボンこそ正義かと。シャツの首元は“自分のためだけに馴染みのない服に袖を通してくれたことからの慈しみ”を、そこから除く首筋のラインは大変エロく、そそられます。またズボンの話をしましたがこれは妄想が刺激される一品でございます! 自分で破ける? 破けられない? 脱ぐ瞬間弾けて困った顔するかも? など、大変よろしくないです。 至急わたしと一緒に来ていただかないと大変な目に遭うかもしれません!」

美晴さんが言い終えた途端、二人は熱い握手を交わした。

男同士エロスを語り合った直後の心からする握手。

あれ、女同士でもやるんだ。

初めて見たわ。マジで生まれて初めて。

「貞操逆転世界ってもしかしたら俺の周り限定で起こされてたりしないか?」

「違いますよ?」

「そんな世界だったらあなた太陽が何なのか忘れてたはずだよー」

そりゃそっか。

執事服一本で既にオオカミの群れに囲まれた子羊の気持ちがたやすく想像できる。

チョロいけどやたらヤンデレがうじうじいそうな世界、小説で楽しむだけで充分だ。

「じゃ、全員着替えてるし始めちゃいますかー」

「わーいぱちぱちぱちー」

「楽しみですね、うふふっ」

「うふふでキャラ付けないで美晴さん」

「そこいちゃつかなーい」

いつもなら殺すとツッコミが飛び出そうな場面も軽くあしらうだけで済ませる結愛。

三人で賭け事なんてなかなかやる機会がないからなぁ。

楽しみなんだろう。三人でこうやってデートできるのが。

「では第一回、脱衣をかけたボリカを始めたいと思いまーす」

「一回ごとに最下位の人は一枚脱いでいただくことになっておりますー」

「えっと、脱ぐ同時にさと君に愛のこもったキスを捧げてもらうというルールが追加したいんですけど、いかがでしょう?」

「はい、聞いたのは最低限のモラルでございます。女性陣が負けたら一枚脱ぐと同時にさと君にハグ、さと君が負けたら脱衣とキスとします。では参りましょうー!」

「うぉい」

「いいでしょー。キスしてから数日立ってよね?」

「そりゃそうだけど」

「あのメンヘラクソアマの上書きが早くしたくて溜まりませんのでお嬢様と二人で決めました。智様、お覚悟を」

こいつら目が本気すぎる。

でも結愛に触発されて思い出した。

俺もあいつとのキスの感触は忘れたいと。いや、思い出したくもないって思っている。

でも脱がされたら後が怖いから絶対負けられないぞ……!

「アイテムにいたしましょう」

「美晴って賭博とか毛嫌いしてなかったっけ?」

「はい。運より自分次第なのが好みですが、こういうのでは運に左右されるのも一興ですので」

「勝負つっても三人で遊んでるんだし、みんなで楽しみたいよな。俺は賛成」

「私もね」

「では参りましょう」

賭け事って言っても脱衣とキス賭けただけ。

一列に座って目を血走らせるガチ勝負の情景が浮かびやすいが、俺たちはその例外に含まれるらしい。

ソファに腰かけて座る俺の膝に頭を乗せ寝転ぶ結愛。

隣にちょこんと座り込み、肩にそっと頭を乗せる美晴さん。

巨乳が膝に当たって集中が……!っていうやつにもいつの間にか慣れていて気にならない。

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