第12話 母親(マジ)にされたわ♪
「さと君ごめん……わたくしが無力なばかりに……ごめん、ごめん、なさい……」
「申し訳ございません智様……嫁にランクアップできないばかりか、こうして危険にさらしながらも助けられない無力なわたしをどうかお許しください」
悲壮感ある雰囲気だけなら逆NTRモノを彷彿させる。
「なんか……うん、そこまで言うとさすがに美愛さんが可哀そうだからやめてあげて?」
「んもうっ、心配してくれたの? できた息子好きー! なにか欲しいものあるー? あ、監禁解錠はできないの、ごめんねー」
そこは娘に同意だから―と、穏やかな声で怖い補足を入れる。
帰宅して即時、買ってきたものは美晴さんに片付けを命令。
でっかい居間に置かれている品質高いソファの上、膝枕されて頭を撫でられている成人男性という可愛げのない絵面。
現実は残酷というかなんというか。ね?
執行人は彼女とか仲のいい女友達ではなく、自称嫁の母親であり、美晴さん直属の社長。
社長はまぁ、表の顔だ。
要するにヤクザの組長である。
「それで? 私とさと君の愛の巣にどうして急に押しかけて来たのかしら?」
「息子が刺されたって聞いて心配しない親いるー?」
「まだ結婚してないから息子にはなってないはずだけど?」
「婚姻届け、市役所に勝手に出したの知ってるからー」
「……チッ、目ざとい母親ね」
「え?」
待って、ネタじゃなかったか?
マジで嫁持ちになってたの?
「抜け駆けは禁止ってあれだけ言ってたのに、わたしのワンチャン逆転ポイントが……」
「彼女の座は譲ったわよ? 文句は受け付けないわ」
跪いて世界に絶望したポーズの美晴さんにトドメを刺してる結愛の構図。
いつも通りのツボポイントだけど、ワードがバグってて笑えねぇ。
なんだよ、結婚されてたって。
「彼女の座譲ったってどこの世界の情緒だよ」
「諦めてね智君、わたしの͡娘はその……重々承知かなって思ってるけど、頭はいいけど中身がちょっと……ね」
「ぶっ壊した本人が言うセリフじゃないわ。母親でもさすがにぶつわよ?」
「反抗期遅すぎない? わかった! わかったから! 銃はしまって。せめて日本刀にして!」
魂のツッコミも、シャレにならない母娘ギャグにもみ消されてしまう。
まぁ、自分の親に実弾込めた銃を向けるやつではないはずだ。
おばさんのワードがいちいちインパクト強すぎて困る。せめて日本刀って日本語になってなくない?
しかも怖がっているのは口調だけ。慈しむ眼差しをこっちに向けたまま頭を撫でられ続けている。
身分や仕事柄がもろに出る親子なりのコミュニケーションのはずが、見るたび俺の常識が終わるという結果にしか繋がらない。
「それにね、そろそろ離れて貰えるかしら? 人の旦那様を長時間拘束する親は嫌われるわよ?」
「膝枕して十分程度しかたってませーん。よって受け付けませんー」
「おばさん、あのさ」
「お母さん」
「へ?」
「お母さん♪」
「お、お母さん……」
「よくできましたー。いやーついに智君にお母さんって呼ばせる日が来たのねー! 夢が叶ったわ。ご褒美にお腹も撫でてあげましょー」
「っ!?」
「美愛さま!」
「お母様!」
「ここね。よく生き残ってくれたわ」
「で、ここからが本題だけど」
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