第6話 強制ルート突入
「お願いします……」
くっころみたいな表情してるけど、どういうことだろう?
「それってなに?」
「さっき“ハーレム計画はなし”って言ってたじゃない?」
「だな。そもそもハーレムでもなかったわ」
どちらかと言えばRPGでたまーに配布される経験値ポーション狩りに近い。
「名付けたのお母様だから、まあそれはさておき」
「?」
「私一人であなたを幸せにする自身は充分あるけど、一人では限界がいつか必ず訪れるの。それが原因で別れるとか死んでも嫌だしね。 よって、身近であり、あなたを慕っている人をサポーターに入れるつもりだったー」
「ダンジョンの攻略理論みたいだな」
「せいかーい。だからねー? ぶっちゃけ三人で夫婦やろうって話―。書類上は私が嫁席貰うけど、恋人席は留守だよね? そこは美晴に渡すって話」
簡単でしょ? 言いたげな彼女より先に反論を口にする。
「待て待て待て! さすがに三人はモラル的なあれがな」
「今まで脳みそ疑う場面なんて、キリがないよ? 今更普通ぶらない、受け入れる♪」
「わたしとも、その、末永くよろしくお願いいたします。智様!」
悩殺のつもりで着つけたメイド服の話題はいずこへという話だ。
それを身につけた本人はいつもの結愛を任せる時の毅然とした態度などどこにも伺えない。
自分の気持ちを伝えるだけで精いっぱいな、なりふり構わずの裸の彼女がそこにいた。
言い訳もできないしツッコミも追いつかない。てかことごとく跳ね除けられた。
モラルぶっ壊れた燃える爆速列車如く生きてきた俺だけど、唯一の、いや二人だけの乗客は自分より遥かにぶっ壊れてたなんて想像つくか?
獲物をロックオンしましたと言わんばかりの眼差しと、荒くなっていく呼吸が室内を満たす。
ゲームだったら絶対ステータスにやべー文字が並べられているだろう。
「そういうわけだから」
「覚悟してください。智様」
「タンマ! メイド服の話は? ハーレム計画頓挫くだりまだ終わってないだろ!? 一旦落ち着こう?」
二人とも両手をワキワキさせながらじりじりとこちらに近づいてきている。
なんて湾曲した表現はぶっちゃけいらないだろ? いつの間にかベットにのしかかってきやがった。力入んないし拘束されてて逃げられない!
「明日までは襲わないよー。でも逃がさなーい。観念なさい?」
「メイド服でメロメロにしてあわよくばを想定してましたが、これはこれで悪くありません。観念してください、智様♪」
最後の足掻きで腕を上げようとしたものの、鎖に阻まれ最後まで上げ切れず【ジャラン】と、無機質な鉄の音だけが響くだけで。
「いただきます」
「いただきまーす」
後から思い返してみれば、きっとこの鎖の音が最後の分岐点を意味していたと思う。
その日から俺、宇別智の監禁生活が幕を開けた。
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