第11話 ダンジョンでBL同人誌が落ちていても気にするな。本来そんなもんダンジョンにあるはずないんだ・後編

「ご主人、ほらボクがトラップにかかった先、少し明るくなっているのだ! あそこにきっと北の魔王のお宝があるに違いないのだ! これはボクがわざとトラップにかかったことで扉が開かれたと言っても良いのだ! お宝は全部ご主人の物なのだ! その代わりこの名誉ある負傷と評価されるべきボクの行いに褒めて、よしよしして、あの味付けの肉をたくさん食べさせてもらってもお釣りがくるのだ!」

 

 …………馬鹿だろこいつ。いや、あえて罠にかかったことにしているあたりが少しさかしいな。

 腹立つわ。

 

 俺たちは光が漏れているところに向かう。

 そこは祭壇らしい、それも何か手入れが行き届いている。掃除をされ、何かを食べて片付けた跡、そしてボロボロだが武器もある。

 

 なにこれ? なにここって思って俺はその光景を見つめているとアステマが武器を拾って、捨てて話し出した。


「これ、ゴブリンの使っている物ね。確か北の魔王はゴブリンを僕として使っていたと聞くわ。ゴブリンとエルフの少年の組み合わせは神が作り出した芸術だとか言ってて、意味わからないけどね。そもそも魔王なんて大それた存在の考えがわかる魔物なんていないと思うけど、よくしてもらったゴブリン達がその恩を今も覚えていて掃除しに来てるのかしら? これ、魔王の書物ね」

「えっ? なになに……エルフ少年✖️探鉱のゴブリン3……これ」

「ファイアーボール!」


 アステマとガルンが中を見ようとしたので俺はあと三回しか使えない魔法の一回を使ってその書物を燃やした。それは魔王の所有物だった為、価値が高いからもったいないとアステマにブーブー言われたが……

 

 これさ……あれじゃんか……腐った女子が描いたりしてるやつ。

 BL同人誌じゃんかぁ!


 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 さて、発狂しかけた俺だったが、魔王の宝物庫にいるという事を思い出してテンションが持ち直す。


「まぁ、荒らされた後かもしれないけど、何かないか探してみるか、アステマ、ガルンよろしく」


 そして俺たちは魔王の宝物庫の探索が開始された。広さで言えば三十畳程だろか? 確かに豪華なレリーフとかがそれっぽい。

 しかし、何もお宝じみたものは見当たらない。三人であちこちと見て回ったが、もはや荒らされた後だったか、少しがっかりしたが、この場所の報告でもお金になるかもしれない。

 うん、明らかに主張している棺を無視していたのだが……


「ふふん、なかなかやるじゃないガルン。こんな場所を見つけたのはガルンのお手柄ね。さすがはこの私とパーティーを組んでいるだけあるわ。この棺、魔王の遺産じゃない?」

「あっはっは! ボクはお手柄なのだぁ! でもアステマのこの凄い魔法があったから全速力で走り回ることができたのだ! きっとコポルトガールのボクとグレーターデーモンのアステマに恐れをなしてここにいた魔物達は逃げ出したに違いないのだっ! ご主人が魔法を温存してここまでこれたのもボクとアステマの力あってのことなのだ! そして、この棺桶みたいな大きな箱はきっとご馳走や北の魔王の財宝がいっぱい入っているのだ! これを持ち帰ればご主人は大金持ちでボクはたくさん褒められて美味しいものがたくさん食べられるに違いないのだ! さぁ開けよう」

「いやぁ……あのさ……絶対これ開けたらダメなやつだって! ゲームとかだとこれレイドボス戦始まるやつじゃん……なんなのお前達、死にたいの? 魔王の宝物庫守ってるモンスターとか洒落にならんだろ……あとくだらない事に魔法を二回も使ったよ?」

「何? 今更主はビビっているの? ここまできたんだから開けない方が変よ! それにこれを本来守っているのがガーディアンじゃないの?」

「そうなのだ! ご主人、人間はそうやっていつも気弱な態度だからダメなのだ! きっと凄い物が入っているのだ」

「二人とも、大人はね? 危ない橋を渡らないの。無謀な事に勇気とか言って飛び込む少年ハートは俺にはもうないんだよ」


 さぁ、帰ろう! というやり切った男の表情を作ったのも束の間。

 アステマと、ガルン。

 棺を開けやがった。


「ガイスト機関再起動。ブルーティシュBリネージュL高炉エネルギー充填開始。充填完了。各関節部、魔法呪印動作正常。主上、反応確認。北の魔王……認証エラー。魔王なる称号。ワールドブレイカー確認。主上情報更新」

 

 俺達の前で、ぶつぶつと何かを言いながら、棺より起き上がってきた高身長のイケメン女子が俺をじっと見つめる。

 

 ほら、アステマとガルンがビビってる超やばい系のモンスターじゃねぇの?

 

「主上、北の魔王により生み出されし、錬金術の奥義にて秘技の結晶。魔法と魔法遺物により存在証明された擬似生命。ゴーレム。ここに来迎降臨。なんなりとご命令を。ありとあらゆる命令パターンに対応。ヴァージョンアップパックによりその汎用性は無限。北の魔王すらも殺してのけた我、参上」

 

 うっわ、やっベー、こいつゴーレムなんだろうな? 自分でゴーレムって言ってるし、それ以上に一眼でこいつが馬鹿だという事がわかる。

 

 身長は高くて175? いや、俺より少し大きいから180近くくらいありそうだな。そして桃色の髪に切長の瞳。俺でも正直息を飲むくらいのイケメン女子だ。

 こいつが白馬に乗って貴族の服でも着てようものなら姫騎士だろう。

 嫉妬すら虚しくなるイケメン女子。

 しかし、こいつを作った奴が相当な馬鹿なのか、もう関わりたくないくらい馬鹿オーラが出ている。

 残念なイケメンキャラのつもりか?

 ポンコツロボットキャラってまぁ使い古されてきたアレだし、当然俺のストライクゾーンでもない。


 俺はどうすればこいつが再び深い眠りについてくれるかを考えていた。そして思い出した事があったので聞いてみた。


「北の魔王を殺したんだって?」

「状況、北の魔王。シズネ・クロガネは最上級クリエイトスキルの取得。そして妄想と具現化の魔法をクリエイト。BL高炉の創造、そして我を生み出した際、シズネ・クロガネは我を夢の詰まったゴーレムとして構築した際、失敗確率0.00007%の大外れを引いて一つだけ妄想通りにならなかった。受けも責めもできる愛玩青年型ゴーレムではなく、少女型ゴーレムになった。我を使い、美形男子の魔物と絡ませようとした北の魔王の夢は潰えて、列車砲台・福音の起動装置と共に我を封じ、彼女はショック死した」

 

 ははーん。

 凄いどうでもいい話だった。

 そしてこいつやっぱり馬鹿が作った馬鹿だ。あと列車砲台とか言うのは危なそうなのでとりあえず無視しておこう。


 こんなヤバい奴を街に連れて行くわけにはいかない。ここは魔王の宝物庫じゃない。BL脳の魔王。多分、元々地球にいた腐女子の成れの果てが作った世界一存在価値のないゴーレム。その処分場だ


 一刻も早く再び休眠に入ってもらおう。


「ええっと、お前に命令をする」

「我、なんでも可!」

「じゃあ、再び棺桶に入って時が来るまで眠ろうか?」

「御意! 休眠モードに入る」

 

  きたこれ! 

  俺はこの厄介なゴーレムが素直にいうことを聞いてくれた事で、選別に、カバンからバナナを一本取り出すとお供えした。 

  

 そう。忘れてましたわ……ポケットに入っているスマホ。

 その異世界生活アプリが起動した。

 

 “猫々様より、ギフト・完熟バナナが特殊ゴーレムに与えられ、特殊ゴーレムはは犬神猫々様の仲間になり、クラスチェンジが実行されます。自立成長型特殊ゴーレムににクラスチェンジ。危険度計測不明。レベルは擬似生命の為1のままです“

 

 そして、ガバッと棺桶から目覚める特殊ゴーレムは目覚める。


「マスター、我、時が来たりと判断。再起動したれり、起動コードはメス・停止コードはエメス。さぁ、マスター命令を!」

 

 当然停止コード。

 

「エメス!」

 

 “ニックネーム。エメスを設定。そして決定。自立成長型特殊ゴーレムへの名付けに成功。自立成長型特殊ゴーレムのクラスチェンジが実行されます。完成形特殊ゴーレム。魔導機人にクラスチェンジ。危険度計測不明。レベルは擬似生命の為レベル1のままです“

 

 

 こいつ、はかりやがった……俺を騙して、勝手に仲間になって勝手に進化しやがった。

 怖ぇ! 未来からきたサイボーグかよ……


 そう、俺の三人目の仲間、というかまたしても恐るべき足手纏いがついてくることになった。

 

 異世界、こっわ……

 そして気がつくと、ここいらの手入れをしていたゴブリンの群れが俺にひざまづいて面倒だったので虚の森に行ってもらった事は後々思い出すことになる。

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