第12話 やはり労働をして対価を得ると言うのは人間らしい生活だと思うけど、見合わないよね

 北の魔王の宝物庫を冒険者ギルドに報告したらまさかの10000ガルドの報酬が入った。

 

 要するにやや小金持になった俺なのだが、もう一つ面白いことを知った。

 ガルンにアステマにエメス。こいつら三人というべきか、三匹と仲間になった事で四人パーティー以上のリーダー、要するに俺はユニオン結成権が発生したらしい。アプリが反応しなかったのは、地域によって条件が違うかららしい。その内このアプリは俺が改修しようと思う。まぁそのユニオンだが、要するにサークル、ギルド、レギオンなどのギルマス権限の事で、メンバーが多ければ多い程色々特典が増えるらしい。

 

 ユニオンを結成すると、俺はユニオンスキルが使える様になる。

 またこれがユニオンの大きさによってユニオンレベルが変わるので、俺のレベルとは関係がない。ようやくこの世界の理が分かってきた。はっきり言って魔物に比べてひ弱な人間が強力な魔物を倒せるのはこのユニオンスキルである。

 有名な冒険者ユニオンや、王国騎士団みたいな連中も巨大ユニオン。

 ユニオンは各地域の土地神的な奴の加護らしいのだが、ユニオンスキルによって伝説系の力を得る事で脅威的な魔物と人間がやりあえるってなもんよ。


 そして俺は当然ユニオンを結成。四人パーティーでのユニオンスキルポイントは大して無いはずだったのが、俺に関しては何故か五十人以上のユニオン分のスキルポイントが付与された。これは、俺のチートではなく、後あと意味を知る事になるのだが……全体回復、全体強化等のユニオンスキル。本来であれば上級職じゃなければ使えないような魔法が行使できる。これは同じパーティー、およびユニオンのメンツから魔法を少しずつ力を借りる、そして土地神的な奴の加護

 今回のダンジョン攻略でレベルが一つ上がった俺の魔法回数は四回と変わらないが、ユニオンスキルはなんと十回も使えるのだ。

 要するに、俺は個人で必要なスキルをほぼ全て商人系スキルに振ることができる。うまくユニオンを増やす事で必要な補助スキルを取得。

 3人とも超、馬鹿だが体力、魔法力、バイタリティに関しては人外のそれを持った労働力がいるわけだ。こいつらに戦闘を任せてその補助をする頭を使う部分は俺が行う

 ようやく俺のこの世界でのロードマップが見えてきた。最終的には自動化なのだ。

 あらゆることを自動化したいのである。

 そう、CEOになるならオフィス、拠点が必要と考えるのはフリーランサーだった俺の小さな憧れだったのかもしれない。実際どんな事業を行うのかはおいおい考えるとして今日は前々からの約束があるのだ。

 

 俺が冒険者、および商人見習いになれたのは武器屋のオッサンに件の斧のオークション出品とその手数料支払いの約束があるからだ。

 そう、あの呪いの斧である。捨てても戻ってくるオーソドックスなホラーアイテム。今のところ俺が具合が悪くなったりはしていないのが救いか……

 正直、三馬鹿トリオをオークションに連れて行くのは激しく嫌なのだが、小遣いを渡して放置する方がより怖い。

 

 三人は冒険者目線では普通なのかもしれないが、他同族モンスターと同じ服装をしているので、近くの服屋で制服を仕立ててもらった。街にいる際はこれに袖を通させよう。

 動きやすく、派手すぎないが流行に左右されない形状。ウェイターみたいな制服をベースにガルンは短パンタイプ、アステマは本人の希望でミニスカート、エメスはパンツスタイル。

 デザインは同じなので、とりあえず従業員はこの路線で行くか……本人たちもそれなりに気に入っているようなのでこの静かなうちにさっさと終わらせたい。

 三人には餌というかご褒美を渡している。

 ガルンは牛肉のしぐれ煮、アステマはゼリー状飲料、エメスはバナナを二房渡している。 


 むしゃむしゃとそれらを食べて黙っている。

 ……何気に俺の持ってきた食べ物は今回で使い切ることになる。

 一万ガルド、そして斧を売った際の金額が安くてもその十倍は行くだろう。

 それを資本に食べ物の供給を考えようと思う。衣食住にコストをかけなくていい環境の組み立てが今後の流れだろう。

 俺は正直食べ物はそこまで気にしないが住む場所は確保したい。

「マオマオさん、競売にかけるその斧をあちらに運んでおくよ」

 

 武器屋の親父は今回のオークションの大目玉であるあの呪いの斧を見せびらかすようにステージに運び込む

 


「あ、主! 聞いてないわよ! どうしてヘカトンケイルを売りに出すのよ! 私が主の仲間になったのはヘカトンケイルを手に入れる為なんだからっ!

 あぁ、そういえばそんな話をしていたなと思う。

 しかしだ。こいつは忘れているんじゃないだろうか? 一度、そのヘカトンケイルとやらを持ち帰ってどうなったのかを……

 きっと馬鹿だろうから、抱きしめて眠りについたんだろう。そして目が覚めるとヘカトンケイルとやらは無くなっていて、念のために俺のところにきたらそこにあった。

 ここにいる大勢のオークショニアを騙すわけだから俺は耳打ちした。

「アステマさん、この斧。勝手に持って行っても結局俺のところに戻ってくるようになってるでしょ? この世界、拾得物に関しての取り決めがないので、拾った奴の物になるみたいですよ。だからダンジョンの宝物勝手にパクれるんだよ」

 

 日本じゃ考えられないお話ですは……まぁ日本以外はトレジャーハンターが仕事になるらしいけど……

 

「あぁ、そうだったわ! 主。本当に考えていることが魔王そのものじゃない! 愚かな人間たちの泣きっ面が浮かぶようね」

「まぁ……静かにな……俺たちは静かに笑顔で、ヘカトンケイル様が高額落札されることを待ってさっさと帰るんだ」

 

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