第24話 光りの正騎士

 四隅に太い柱が立つと、そこにへこみが刻まれる。細い柱にはとつが刻まれた。


 二人は軽々と柱を組み立てていく。剣で斬っただけでピッタリサイズになっているのは何故なのだろうか? 大工の神の祝福でも受けているのかな?


 もう気付けば新居は壁が出来ている。あとは床を張って、部屋を作って、屋根を掛ければ、とりあえずは家の形になるんじゃなかろうか。配管とかもないしね。でもいつかトイレは……トイレはなんとかしたい……。ちなみに今は超高温で焼却処分しているよ。


 少し浮かされた壁に囲まれた、建てかけの家の中に入ってみる。玄関の前に階段も作らないとだよね……。家を建てるって大変なんだなぁ。


 それにしても壁の隙間から見えるのは空だし、向こうは断崖絶壁なんだよね? 大丈夫?


「床はワックスとかかけないとだめかな?」


「長持ちさせたいならそうするべきだろうね。外壁はトレントだし大丈夫だろうけど、屋根と床はその辺の木だし。瓦は買って来るべきだろうね」


「そのままの木って腐らないんですか?」


「ちょっと炙っとけば大丈夫だよ。ここにはその道のプロもいるしね」


「任せてよ!」


 人間チェンソーと人間バーナーが製材している間に、僕は川で魚でも獲って来ようか……。


 それから3日後には床が張られ、梁が通され、屋根が掛けられていた。僕は労災が起きないか心配したが、そんな工事が1週間も続くと、もう瓦張りと内装を残してほぼ家は完成していた。




 今日はイリスさんは朝から買い出しに行っていて、ペシアさんはお仕事があるそうで、こちらには来ていなかった。


 僕は畑の手入れをしていた。腐葉土がいいって何かで見たことがあったから、山の林になってるところからウキ太に運んでもらって畑に撒いた。そしてモグ次とモグ造がそれを攪拌した。


 すると見知らぬ芽が大量に出てきた。そりゃそうか、その辺の土だもんね……。その副産物として枝やら草が畑の脇に山積みになっている。そのうち焼いてもらわねば。


 結局畑をイリスさんに熱してもらって中の種やら芽を除いてもらうことになった。


 そしてついに! うねに苗を植えるのだ!


 ウキ太と二人で紫色のナスっぽいトマトの苗を植える。これから暑くなるみたいだし、ナスでもトマトでも楽しみだ。


 次に根菜みたいに生える瓜の苗を植える。大根でも瓜でもいいよもう!


 最後は僕の故郷でもお馴染みの苦いほうれん草だ。……ないよりマシ!


 無事に植え終わり、水を撒く。大きくなれよ! 巨人がレトルトハンバーグを渡す姿が僕の脳裏に浮かんだ。


 そういえばあの鳥もミンチやつくねにすればおいしくなるかもしれないな……。今日はそれを試してみようか、と僕が予定を立てていると、後ろから声を掛けられた。


「おい、坊主! この死体はお前のものか? ここで何をしている!」


 僕に誰何する男の声が聞こえた。すわ巨人か!? と僕が振り返ると、そこにはバケツみたいなヘルムを被ったフルプレートアーマーの男が居た。


「ウキ太は僕の相棒で、畑仕事ですが……」


「死霊術師のガキか……。汚らわしい……」


 いきなり罵倒されたんですけど!? これだから中年のおっさんは嫌いなんだよ……。


「あ、あの……どちら様ですか?」


「我こそはランダイン王国が正騎士マッシモ=セルボ! 人呼んで、ランダインの光り! ここに住まう、第8王妃イリアケス=イーリオス嬢を迎えに参った!」


 だ、だせぇ名乗り……。しかも老いぼれ馬鹿爺の国の田舎者いなかもんがうちのイリスさんを迎えに来たのかよ……。っていうか第8ってなんだよ!?


「なっ!? 我が王に対して余りに不敬! その命で償え!」


 やっべ……声に出てた!?


 キンと抜かれた両刃の白刃に昼下がりの陽光が反射した。

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