第21話 柱の立たない彼女
僕とペシアさんは相談した結果、イリスさんに熱で穴を開けてもらって、そこに木を突き刺すことで柱を建てることに決めた。
それなら木も乾燥させないといけない。ここはイリス大先生にお願いしよう。
「じゃあ私は木を斬っておくから。あそこの丸太積んであるところに集めればいいんだろ?」
「それで大丈夫だと思います。僕は川原で魚でも獲って来ますね」
それから僕はウキ太を連れて川へと
相変わらずデカい風呂岩が鎮座している川原をウキ太と二人で歩くと、前に石で作った小さなダムに2匹魚が捕まっている。
「幸先いいなぁ」
ウキ太に捕まえてもらい、その場で絞めてしまう。内臓を抜いてそのダムの中に捨てる。これでまた臭いに誘われて魚が来る……かもしれない。沈める篭みたいな罠があったらいいんだけどな。
ウキ太にそれを小屋に持って行ってもらい、僕は座り込んでぼーっと川を眺めていた。すると懐かしさを覚えた。
ああ、村でも川でよくワームを獲ったりしてたな。ここにも居るんだろうか?
立ち上がり手頃な石をひっくり返すと……でけぇ!
そこにはやはりリバーワームがいた。
太さ1センチメートル、長さは10センチメートルほどだろうか。僕の住んでいた村のワームは細い3センチメートルほどの大きさだったから、ここのはかなり太く長い。
小さいワームほど、うじゃうじゃといるわけじゃないけど、ポツポツとその太いワームは見つかる。
これって一般的には食材なのかな? 持って帰るか……?
帰って来る時にウキ太に
届いたそれにワームをポイポイと放り込んでいく。べ、別に食べたいわけじゃないんだからね! ……本当にもう食べたくない。
笊いっぱいのワームをお土産に小屋に戻ろうとすると、空を白い軍服が飛んでいくのが見えた。
昼過ぎなのにもう帰って来たんだ。今日は帰りが早いんだなぁ……と
前髪がチリチリになっただけで済んでよかったよ……。
熱でやられたワームちゃんたちに死霊術をかけて、川原に逃がしておいた。そのまま捨てるのも申し訳なくって……。
イリスさんが作業に参加すると、それからは早かった。
大量に積み上げられた木材をすごい勢いで乾燥させるイリスさん。人間重機さんがそれを岩場の近くに移動させる。
だがここで問題が起こった岩場に柱を建てるための穴を開けようとイリスさんが熱したところ、そこは溶岩になったのだ。そりゃそうだ!
意外といけるんじゃない? と丸太を突っ込んでみたところ、燃えた。そりゃそうだ!
三人でぐつぐつと沸き立つ赤い地面を囲んで途方に暮れた。
「どうやってここに柱建てよっか……」
途方に暮れるイリスさんにペシアさんがピッと指を2本立てた。
「心当たりがある。2本でどうだい?」
「別にお礼はするつもりだったけど、何かあるの?」
「ふふ、四隅だけでいいなら2、3日で用意できるよ。楽しみに待っててくれ」
僕の目の前で隠語を交えた取引がされている。変な薬ではなさそうだけど……。というかこの世界に取り締まる法律があるのかは謎だ。
そう言えばここ、どこの領地でもないんだっけ? やりたい放題じゃん!
どっかに気持ちよくなれる草とか生えてないかな? それを栽培、精製して……。
「ペシア、ちょっと見てみて? キミが2本だとか言うから、リフォロくんが何か良からぬこと考えてる顔してるよ?」
「私のせいかい!? ……少年は聖国勇者の前で悪いことを考えるのかい?」
ニコリと僕に向かって微笑むペシアさん。あ、これ摘発されるやつだ。
後で聞いた話だけど、ペシアさんの趣味は呪われた武具集めだった。先ほどの会話はその本数を言っていたようだ。なんか呪いを解くのがくじ感覚で楽しいらしい。それでいいのか聖国勇者。
「ば、晩御飯のこと考えてただけですよ?」
「今日は何にしようねぇ」
イリスさんが腕を組むと、むぎゅっとなるのがいいんですよね。僕が笑顔でそれを見て頷く。あまり見ていると、ペシアさんの顔が曇るからほどほどにしておこう。
「そういえば、あの
「そんなのありましたね」
寸胴に骨と一緒に入れられたままのドラゴンの脂の存在を思い出すイリスさん。
それで鳥肉揚げたらおいしくなるんじゃないか? でも唐揚げって下味いるんじゃない?
とりあえず油として使ってみるか……。それと
「じゃあ私は今日は帰ることにするよ。……じゃあ、3日後にまた来るよ」
「食べていかないんだ? わかったよ。気を付けて帰るんだよ」
「ありがとうございました。ペシアさん」
「……じゃあ、またな」
「お気をつけて」
渋い顔をしながらペシアさんが帰って行った。ペシアさんも飛べる系の人かと思ったら飛べないらしい。でもなぜか二段ジャンプはできていた。
木々を飛び越えるように二段ジャンプで消えていくペシアさんの後ろ姿を見送る。異世界ってすごい。壁抜けとかできそう。
「じゃあ煮込もうか!」
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