第17話 氷女にキレる…
魔王と勇者が僕の目の前に居る。
その事実に驚く前に、僕は素早くイリスさんの膝の上に座らされてた。……なぜ?
「そんな顔してもだめだよ。リフォロくんったら目を離すとすぐこれなんだから」
「僕はただお客さんをおもてなししたかっただけで……」
「だめだよ?」
いつも明るく暖かいイリスさんが冷たい雰囲気で、僕を抱き締める。 振り返って顔を見てみると、目が据わっていて、スンッ……ってなってた。
僕は家主には逆らえないんだ。ごめんね、りっちゃんとペシアさん。
「……はい。あ、あのイリスさん、そちらは?」
「何? もう違う女の話?」
「イ、イリス姉さん? ……はじめまして、イリアケス=スティーリアよ。イリアケス=イーリオスの双子の妹。よろしくね」
青イリスさんことスティーリアさんが隣の席から僕に笑いかける。
イリスさんと同じ顔をしているのに、どこか静かで落ち着いたな印象があるのは髪色のせいだろうか? それとも彼女の性格によるものだろうか?
それにしてもイリアケスが苗字だったのか……。驚愕の新事実だ。
「よろしくお願いします。リフォロです」
イリスさんに抱き締められたまま、僕はスティーリアさんに挨拶する。頭の後ろが柔らかい。しかもこのまま会話が進行するらしい。大変ありがたいです。
「それで魔王様は何しに来たの?」
「そろそろ闘審会の競技内容を決める時期です。ですので前回勝者に伺いに来ました」
「もうそんな季節なんだね。……何にしようか? また皆で戦う?」
僕を抱き締めたまま、ゆらゆらと体を揺らして悩んでいる様子のイリスさん。
闘審会って言うのが例の主導権を賭けた戦いのことかな? 世界の趨勢を決定する相談をしているのが、山小屋で行われているお茶会っていうもなんとも言えないが……。
ちなみにイリスさんが帰って来てからお茶を淹れてくれたので、現在皆の前に置かれているカップには紅茶が入っている。
「そうですね。無難な選択です」
「ふふっ……楽しみだね。次は負けないよ」
りっちゃんは眼鏡を直しながら頷き。ペシアさんは本当に楽しみにしているのが伝わってくる。この人たち戦闘狂かな?
「あれ? それじゃあペシアは何しに来たの?」
「濾過器と小麦を届けるって言ってただろ? それに大工が要るって言ってたじゃないか。私は父親が大工でね。簡単な家くらいなら建てられるよ」
腕を組んでドヤ顔しているペシアさん。勇者とか救世主みたいな人は大工に縁があるのだろうか? 馬小屋で産まれたりしてないよね?
それからスティーリアさんとペシアさんは泊まることになった。りっちゃんは家を建てる時は見に来ると言い残して、帰って行った。流石に魔王様は忙しいらしい。
「今日はお土産があるんだよ! ちょっと外に行こっか」
「私の濾過機も外で出そう」
何やらイリスさんとペシアさんの二人はウキウキと外へ出て行った。僕が後を追おうとすると、残されていたスティーリアさんが僕をじっと見つめている。……持てる男は辛いなぁ!
「ねぇ、リフォロくんって今いくつなの?」
「今年で10歳です」
「……本当に?」
ひんやりとした空気がスティーリアさんから流れて来る。……ほ、本当ですし? 嘘は吐いていませんし?
「か、数え歳ですけど……」
「ふぅん……。姉さんは私のものだから」
えっ? うん。 ………………は?
「……たかが一緒に産まれたくらいで偉そうにしないでくれます?」
「はぁっ!?」
僕らは無言で小屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。