第41話 思い出が進んでいるころ、月のフクロウは

「嫌ですよ! もう絶対嫌ですよ! どうせ観測者しゃんはアニマたちを裸体にして見捨てるつもりですう!!」


 巨大グール捕縛作戦も既に四回目。この短時間で過去に三回も触手に蹂躙される様を観測者にスルーされて、都合よく生餌扱いされた月のフクロウメンバーはさすがにご立腹だった。


「手早く助けるために、なにも見ず、なにも聞かずにいるんだ」


 正論っぽく言ったつもりだった。実際、彼女たちが観測者のことを単なる指導者、あるいは関わりたくない相手と認識していたら、観測者の行動も咎められなかったはずだ。


 しかし、実際には月のフクロウのメンバーは全員、観測者に好意を寄せており、観測者もその気持ち自体には気付いている。


 だからこそ、彼女たちは眦を吊り上げて牙を見せるのだ。


「そういうことではありませんのよ、観測者さん」


「サオリの言うとおりだぜ。あたいたちは辱めを受けている事態に腹を立ててんだ」


 あえて無駄に終わらせたいこちらの事情を加味してくれないものかと観測者は嘆息する。


「素早く助けてほしいのも本音だから、魔弾は撃っててもいいんだけどさ」


「我々のセクシーショットを見て頂き、観測者の生の反応という割に合う褒美を頂きたい」


 触手に犯されている姿をぜひ見てほしいと懇願する女子たちは月のフクロウメンバーくらいだろう。


 まぁだから他の部隊に任せられない、いや、月のフクロウにしか任せることが出来ない任務だ。


 正常な精神でトラウマになられても困る。しかし、この変態ども、いやトラブルにおいては耐性のある彼女たちならばどんな不測の事態も問題ない。


「……わかった。今回はお前たちの様子にも気を配ろう」


 渋々そう返事をすると、月のフクロウのメンバーは無言で武器を手に持ち、輸送機へ乗り込んだ。


 深く息を吐いた観測者は心の中でミジュに謝る。月のフクロウのメンバーは忘れているのかもしれないが、観測者はミジュと喧嘩別れしてしまっている。


 このまま生き別れるつもりは毛頭ないが、こんなことしている場合ではない。


 しかし、グールを集めるためには彼女たちの協力が必要不可欠。


 背に腹は代えられないと観測者は諦めて今回の目的地へと向かった。


 深い森の渓谷で山を穿ちエリアを分断するほど巨大な滝に擬態化していたグールと交戦中。


 過去最速で月のフクロウメンバーはグールの魔力を三分の一まで減らした。


 それまでは流れ落ちる水でしかなかった滝が透明な触手を動かして乙女たちの手足を拘束していく。


「きゃああん♡」

「キタキタァ!!」

「いやああん♡」

「よ、よし!」

「観測者しゃああああん♪ 捕まっちゃいましたぁ♡」


 状況は理解している。悲鳴ではなくピンクな声を上げて捕まった月のフクロウメンバーの姿が一望できる地上から上空に目掛けて魔弾をぶっ放す。


 これだけ巨大であればどこに撃とうがグールに当たる。


 そして淫獣となっているグールは勝手に捕らえた月のフクロウメンバーを魔弾から守るだろう。


 観測者は外からはその表情がうかがえない目深にかぶったフードと長く伸ばした前髪の奥で瞳を閉じた。


「きゃああああ!」


 脳内に再生されるのはミジュの声だ。ここは記憶の中の観測者の部屋だった。


 ミジュは素顔を隠すことを嫌がるので、部屋で二人きりの時はドゼとしてフードもマスクも外している。


 そして今は胡坐をかいた膝の上にミジュを腹ばいにして乗せていた。


「どうしてお仕置きの体勢なのよぉ!」


「違うよミジュ。二人でちゃんとエッチができるように、ミジュの体を少しずつ慣らしていこうと思うんだ」


 一応、理由には納得できるのか、むぅ、とうめくミジュだったが、パンツに手を伸ばすと慌てた。


「待って待って! そ、そんな、下着を脱ぐのは早すぎじゃないのぉ!」


 普段、ランジェリー一枚で世界中を飛び回っているのに、Tバックのパンティーにどれほどの防御力があるというのか。


「俺のところからはミジュのお尻しか見えないよ」


「そ、それはそうだけどぉ……」


 するするとパンティーを脱がしていくと、ミジュは太ももをこすり合わせてもじもじと落ち着かない様子だった。


「んじゃ、スパンキングから始めるか」


「思考がサイコパス過ぎるのよ!! そんなところから始めるエッチってなによぉ!?」


 観測者は心底わからないというように首を傾げた。


「ミジュの性感帯は隅々まで調べた。お尻ぺんぺんが一番善がってた」


「よがってない!! あんたあたしにお仕置きしながら何を調べてんのよ!」


 しかし、実践してみればわかるというように観測者は素手でミジュのプルンともちもちしたお尻をパシンッ! と叩いた。


「きゃう!」


「ん? ちょっと違うか」


 今度は素手がお尻に張り付くようにパチンッ! と叩いた。


「きゃあん!」


「うん、こっちだな」


 いい反応を確かめると今度はお尻と足の付け根のギリギリを何度も叩いていく。


「きゃああん! やぁ、やめ、やにゃ、ひあああん!」


「ん、そろそろ体も温まって来ただろ」


 叩きつける手の向きを変えた。中指がちょうど足の隙間に入り込むように調節してパチンッ! とお尻が跳ねるように叩きつける。


「ぴゃう!」


「ここ好き?」


 ミジュの顔は真っ赤だった。その表情こそ答えのようなものなので観測者は気を良くして何度も何度もスパンキング行為を繰り返す。


「ひぐ! やぁ! しょこらめだもん! らめなの! ぴゃああん! やぁあっ」


「ミジュ、足が痙攣してきてる。もうイキそうなんだろ」


「びやああああ! こんなのやぁああ! もっとふちゅうの! ふちゅうの! ひああああん!」


 観測者は真面目な顔で真面目に話す。


「普通のやり方なんて拷問だろ。ミジュにそんな退屈な思いをさせられないよ」


「みゃあああん! 気遣いおかしいぃいい!! ひぐっイクっやぁっああああああん!!」


 足の小指までピンと伸ばしてミジュはぐったりと観測者の膝の上に全体重を放り出した。


「愛してるよミジュ。可愛い、ぴくぴくしてて可愛い、お尻真っ赤で可愛いなぁ」


 大変満足した観測者は悦に浸る。


 ドゴンッ! 自分で放った魔弾が滝の裏側まで貫通した音で我に返った。


 ライフルを地面に投げ出して片手を掲げる。グールの体内で禍々しく光る因子を拳を握って捕まえた。


「任務完了」


 グールの因子を操り、あられもない姿の月のフクロウメンバーを解放した。


 彼女たちの表情は晴れやかだった。


「見たかおい、ぜってぇ膨らんでたよな」

「間違いありません! やりましたね!」

「うひひ、観測者に見られちゃったぁ♡」

「……レイナ、たまにぶっ壊れるよね」

「ふふん♪ ミジュさんにできてアニマにできないことなどありませんよ!」


 観測者は心の中で謝った。やむ負えない事態とはいえ、大切な恋人をおかずに使ってごめんなさい、と。

 喧嘩中なのに浸ってごめんなさい。謝るので帰ってきてくださいと懇願するのだった。




☆☆☆

メインヒロインなのに出て来た途端、エロい妄想されています笑


次回からシリアスが続くから許してね(*´ω`*)


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