第9話 さぁ、お仕置きの時間だ。お尻ぺんぺん編

「もっと派手に、もっと優雅に、もっと楽しませなさいアハハハハ!」


 ここは国連が利用している鉱山だった。


 狂咲ミジュは山そのものを崩そうというのか、上空から強烈な魔法を雨嵐と降り注いでいる。


 鉱山の中では連続的に地震が起こっているだろう。中には生き埋めになった作業員もいるかもしれない。


 観測者はミジュの後ろから彼女の一挙手一投足までつぶさに観察していた。


 洞穴の中からグールと国連の意思に賛同しているイリスレインが現れた。


「やめなさい狂咲ミジュ! 鉄は戦争の道具だけに使うわけじゃないのよ!」


 ピンクのショートヘアーを揺らすBカップの姫騎士だった。


「ふぅん、このあたしにお説教するつもりぃ?」


「あなたも教会も狂っているわ! 人々の平和な営みまで破壊するのはやめなさい!」


 確かに鉄は生活用品としても多く使われている。この鉱山を失うと国連に身を寄せている一般人の生活も脅かされるだろう。


 ミジュは白目の多い瞳で姫騎士を見下すと真っ白なギザギザの歯を見せて笑った。


「あは☆ あんたのこと、あたし大っきらーい! 死んじゃえキャハハハハハ!」


「一斉にかかりなさい!」


 姫騎士の指示に従い翼の生えた犬など飛行タイプのグールが一斉にミジュに向かって牙を向けて襲い掛かった。


 バリバリバリバリバリバリドゴンッ!


 直後に響いたのは電流がスパークして爆発する轟音と白目をむいて地面に落ちていくグールの残骸が粉々に砕け散る乾いた音だった。


「なっ!?」


「もう終わりなのぉ? あなたはもっと遊べるわよねぇ?」


 ミジュの肩から黒いゴムのような流線が姫騎士に向かって伸ばされた。


「っくは!」


 気が付けば巨大な真っ黒い手に姫騎士は頭を掴まれ、宙づりにされていた。


「何発で死ぬか試してみようかぁキャハハハハハ!」


 ビリビリと空気まで振動するほどの電流が黒い帯を伝って姫騎士の体を焼いていく。


「ぎゃああああああああああああああああああっ!!」


「あはは下品な声だわぁ。聞くに耐えなーい☆」


 もう一度、ビリビリビリと目に見えるほどの紫電をスパークさせながら姫騎士の体は焼かれた。


 甲冑は砕け、中の服は下着までボロボロになっている。体中の裂傷から血も流れ出ている。


「も、やめ……」


「えーなぁに? 何か言ったぁ? ああそっかぁ、もう脳みそが沸騰するまでやめないで☆ アッハハハハハ!」


 片手を伸ばしてパチンとミジュが指先を弾くとバリバリバリバリとより強い電流が姫騎士の体に流れ込む。


「ぎゃあああああああああああああああががががあああああああああああああああああああああああああああああああゴゴごげえええええええええええええええええええがガガガ……」


 目から血を流し、泡を吹いて姫騎士は絶命した。


 姫騎士の頭を掴んでいた黒い帯は大きな幕となって姫騎士を包み込むとゴキボキゴリゴリと骨を砕いて握りつぶした。そのまま黒い球体はゴミのように地面に落下して捨てられた。


 くるっと後ろを振り返ったミジュは頬を膨らませて観測者の姿を見る。


「なによぉ! またあたしにお説教するつもり!」


 観測者は肩をすくめた。


「違うよミジュ。俺がミジュに与えているのは情操教育。鉱山を一つ大事にしなさいとか、そんなスケールの大きなものを引き合いに出したりしないよ」


 ミジュは足元を気にしている。砂山から触手が出てこないか警戒しているようだった。


「砂山にも触手はいるけど」


「いるんだ!?」


「粘土みたいなやつ。ぬるぬるでどろどろで気持ちいいよ」


「やだやだやだ!」


「良い子に話が聞けるなら今日はしないよ。よく言うだろ。飴と鞭」


 むすーっと鼻の穴を膨らませてまで不満な顔を見せるミジュも観測者から見れば天使だ。


「いい気になってるんでしょうけど、今のうちだけだからね観測者!」


 ビシッとミジュの人差し指が観測者に向けられる。


「お前も近いうちに皮をはいで生肉を引き裂いて生き血をすすってやるわ! アッハハハハハハハハハハはぎゃああああああああああ!!?」


 観測者に向けていた指先が反対方向に反っていた。観測者はゆっくりとミジュに近付くと触れない半透明な手でミジュの小さな手を両手で包んだ。


「しゃっき、ひぐ、いじめないって」


「人に指を向けてはいけません。わかったな」


「はい……」


 涙目のミジュは素直に指先を引っこめた。


「情操教育っていうのはミジュの小さな体に収まっている大切なものを、もっと大切にするために色んな事を知っていくお勉強なんだ」


「あたしの体? 大切なもの?」


 観測者はミジュの頭を撫でる。


「ミジュのすべてが大切だよ。そしてミジュの小さな手で触れられる小さな世界も大切にできる。お花とか」


「むぅ、もうその手には乗らないわ。不意打ちでしょ」


「だから昨日はごめんって。誤解だよ、俺は花と遊ばせてあげたかっただけなんだ」


 じとーっと下からねめつけるミジュはまだ信用していないらしい。


「もっとお話をしようか。俺たち分かり合えるよ。例えばほら、ミジュの好きなものは?」


 ちなみにレイナに同じような問いかけをされていた観測者だが、そんなもん記憶すらしていない。


 ミジュは指の痛みも収まったようで、つるペタな胸を張ると牙を見せて不敵に笑った。


「無様に抗う人間どもよ!」


「そうか、ミジュは人が好きなんだな」


 血管がブチ切れそうなほどミジュのこめかみに青筋が浮かんだ。


「減らず口がお好きなのかしら! 生憎あたしは口もきけない死体が好みよ!」


「良かった。俺は口下手だから、賑やかな方が好きだと言われてたら困ってたよ」


「困りなさいよおおおお!!」


 真っ赤な顔で怒るミジュを目に入れても痛くない天使のように観測者は見つめていた。


「はぁはぁ、はぁあ……んで、観測者、あんた何しに来たのよ」


「昨日約束しただろ。ミジュに会いに来たんだ」


 交わした覚えはないとミジュは牙をむく。


「まぁいいわ。あたしに会いにね。なんのために?」


「そりゃ最終的には俺のところに来てほしいと願っているよ」


 観測者の言葉を聞いたミジュは涙を浮かべて高笑いした。


「アッハハハハハ! 笑わせてくれるわ! リリンのマナを人工的に植え付けられた第二世代と違ってあたしは第三世代! この世で唯一の第三世代よ! 観測者が何をしようが悪は正義にならない!」


 ミジュの遺伝子には最初からリリンの因子が組み込まれている。それを知っていてもなお、観測者はミジュに手を伸ばした。


「良いんだよ、正義にこだわるつもりはない。ミジュが幸せならミジュの思う悪でいいんだ」


 だけど、と観測者はミジュの頭を再び撫でる。


「寂しいだろう。ミジュはいつも単騎でいるよな。まぁそれだけ強いと仲間を連れていてもミジュの邪魔にしかならないと思うけど、一人は寂しいよ。だからずっと俺がそばにいる」


 触れることは出来ないが、ミジュは観測者の手を思い切り振り払った。


「余計なお世話よ! この偽善者! あたしがイリスレインを惨殺しようが黙って見ていただけのくせに! なにが正義よ! あたしは寂しくない!」


「ああ、そういえば、人を拘束した上でなぶられることがどういうことなのか身をもって知らないとな」


 ざっぱああああああん、とミジュの背後から黒い帯が何本も生えた巨大なイカのような怪獣が砂山から現れた。


「ひにゃあああ!!?」


 あっけなく黒い帯に腕も足も腰も巻き付けられ拘束されたミジュは既に涙目だった。


「嘘つきー! 今日はしないって言った! ぬるぬるのどろどろはしないってゆったああ!」

「うんうん、大丈夫だ。ぬるぬるのどろどろはまたの機会にしよう。今回は同族を悲惨な方法で殺したことによる純粋なお仕置きだ」


 シュポンッと砂山から飛び出たのは吸い付きの良さそうなヒトデだった。


「むきゃあああ! どうして砂山にイカやヒトデがいるのよ!」


「それは教会や国連が手に負えないグールを野に帰れと言わんばかりに自然に不法投棄するからだと前回教えただろう」


 イカっぽい黒い帯がヒトデを装着した。ミジュは黒い帯によって体勢を変えられて半透明な観測者の膝の上に腹ばいに乗せられてお尻を突き出した姿勢で身構えることになった。


「な、なに、なにするの?」


「お尻ぺんぺんだよ」


「んな! なんであたしがひにゃうっ!」


 ぺちいいん! 適度に粘液を含んだヒトデがミジュのTバックしか穿いていない丸いお尻を叩いた。


 しかも、手で叩かれるのとはわけが違う。


 ぺちいいん! ぱちゅううん! ぱっちいいいん! ぺっちゅうううん!


「いやあああああ! ひあ! ああん! いたい! いたいのに!」


「うん? 痛いのに気持ちいい?」


 顔を真っ赤にするミジュは涙目で牙を見せて吠えた。


「ばっかじゃないの!! こんなの気持ちいいわけないでしょ!」


「そうか、じゃあ、お尻ぺんぺんは百回連続にしような」


「ひゃ!?」


 べちいいん! 粘着質でぬるぬるしたヒトデがミジュのお尻を引っ叩く。


 まん丸いお尻の頬っぺたから、突き出したお尻の間でもっこりとパンティーの紐をくわえ込んでいる肉の隙間までヒトデのぬるぬるな触手は引っ叩いていた。


「ひぐ! やあ! いぐ! ひくああああああああん! やらやら! お尻ぺんぺんやあらあ!」


「そんなに痛くないだろ。ヒトデさんは張り付きはいいけど、ぷよぷよな弾力だからな」


 べちゅううん! ぺちゅううん! ミジュのお尻のほっぺは赤く染まり、もっこりとした肉の合間もピンク色に色づいて来た。


「やあ! ひあ! いたくはない! けど! ひあああん! 痛い方がマシだもん!」


「どうして? 俺は百回もミジュに痛い思いはさせられないよ」


「ひぐっ! うぐ! うそちゅき! らめなとこ! らめなとこねらってうちゅもん!」


「ダメなところってどこだろう? ミジュはお尻にダメなところがあるの? どんなところ?」


「いわ! いわにゃい! いえにゃい! ひぐぅ! ひゃあああん! もうやあ! そこ叩いちゃらめええええええええ!!!」


 ぱっちいいいん! ミジュの叫びも空しく、ヒトデは観測者の意思に従い百回連続で叩くまで終わろうとしない。


「言わないとどこを叩いちゃダメなのかわからないな」


「やらやらやらあ! 言わないもん! みぎゅ! いぎゅ! もうやら! パンパンしちゃらめ! ひうううううん! もう、漏れちゃううううう!!」


 くすくすと笑う観測者は身動きの取れないミジュを愛おしそうに撫でた。


「ミジュは変態だなぁ。お尻ぺんぺんされてお漏らししちゃうのか」


「ちが! お尻じゃ! ひゃう! やあ! そこぺちぺちしないで! ああああああん! もうやらやらごめんなしゃああああいいい!!!」


 ついにミジュはごめんなさいをして泣きじゃくった。


「今度みんなにも見せてあげような。ミジュがお尻ぺんぺんされて、おしっこをぶしゃあああって大量にお漏らししながらイっちゃうところ」


「いやあああああああ!! ごめんなしゃい! ごめんなしゃい! もうしましぇん! 掴んでぶしゃああってしないです!! ゆるしてくだじゃああああい! びええええええええん!」


 しかし、今回の観測者は許すつもりもなかったようで、百回のお尻たたきが終わるまでミジュの謝罪をうんうんと聞き流していた。


 結局、観測者が言ったようにミジュは大量のお漏らしをしながら失神した。


「また来るよ、毎日会いに来るから、ミジュの幸せな笑顔が見られる日まで、約束だ」


 満足した観測者は自室に戻ると、ミジュの姿を思い浮かべながら原料を絞り出すのだった。


☆☆☆

コンテストのピックアップに載せてもらえて嬉しかったので、キャッチコピーに書いてある後半に少し触れるところまで今日は更新します!


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