第6話 さぁ、お仕置きの時間だ。バター犬編

「むぎゅぎゅ!?」


「お食事中だったか。気にせず食べてていいぞ」


 ミジュはやたらと広い場所で豪奢なテーブルに着き、シリアルを食べていた。


「むぐむぐごくん! ぶはぁ! あんたなんでまた来たのよぉ!」


「会いたかったから。今日中にもう一度会いに来ると言っただろ」


 観測者は辺りを見渡してみたが、ミジュ以外にイリスレインの姿は見当たらない。


 ここはミジュ専用の食堂なのだろう。絵画が飾られた壁にビロードのシンクのカーテンが舞台の幕のように垂れ下がっている。窓がないのはここが地下だからだろう。


 毛並みの良い絨毯に、暖炉も用意されており、ミジュの下着一枚の姿を見ていると、部屋が暖かいからこれで大丈夫! と言い張って風邪をひく幼女に思えてきた。


「あんた今なんか失礼なこと考えていなかったぁ?」


「いや、それより、こんなに豪勢な食卓の上に乗っかるのがシリアルだけとは寂しいな。ミジュは好きな料理はないのか?」


 ミジュは牛乳に浸っているシリアルを口に放り込むとそっぽを向く。


「むぐむぐ……ごくん。ふん、あたしから情報を得ようとしても無駄よ。懐柔しようとしてもそれも無駄ねぇ、あんたに振る尻尾は持ち合わせていないのキャハハハ!」


「尻尾か。似合いそうだな」


 ビクッとミジュの肩が跳ね上がる。


「あ、あんた、また変なこと考えていないでしょうねぇ?」


 ミジュはきょろきょろと辺りを見渡した。触手の生物が這いよって気やしないかと警戒しているようだ。


「そういえば、今朝のお仕置きがまだだったな」


「さっきしたじゃないのよぉ!!」


「あれは情操教育をこれから始めるという挨拶だ。今日の分のお仕置きはまだしていない」


 嫌な予感がしたのかミジュは椅子から降りて逃げようとした。しかし、


「わん!」

「ぎゃあ!」


 ミジュは尻もちをついて椅子から転げ落ちた。


 目の前には黒と紫のまだら模様の大型犬が寝そべっておりミジュを見てわふわふ言いながら湿った鼻でミジュの匂いを嗅いでいた。


「へ、へあ? なんでワンちゃんがいるのよぉ?」


 可愛らしい姿にちょっと警戒心も解かれたらしい。ミジュは興味深そうに大型犬を眺めていた。


「召喚したんだよ。犬は好きか? グールだけど、もっといるぞ」


 絨毯の上に魔方陣がいくつも描かれていく。


 光を放ちながら魔方陣の上に登場したのはもふもふとした小型犬から中型犬まで五匹の犬たちだった。


「わ、ワンちゃん……!」


 ミジュは目を輝かせてテーブルの下を這いずって広い絨毯の場所まで出てくると、若干ダーク色が強い犬を抱き上げてぺろりと舐められて喜んでいた。


「きゃは! くすぐったい!」


「どうだミジュ、無垢な瞳たちは愛らしいだろう」


 犬と戯れるミジュは生返事を返す。


「ええ、そうねぇ、うわぁ、もっこもこ!」


「お花を見つめるミジュの無垢な瞳も最高だった。幼女とはこうあるべきだと思ったものだ」


 ちょっとした過去の記憶を熱く語る観測者の足元ではひときわ大きく輝く魔方陣が描かれていく。


「……愛を失ったばかりの無垢な子供たちの前で見せていい光景ではなかったよな」


 ズシャアアアアアアアアアアアアアアアッン!!


 水しぶきを上げながら登場したのは先ほどの触手怪獣だった。


「ぎにゃあああああああああああああ!!!」


 ミジュは腕と足と腰を掴まれて、またしても拘束された。


「さぁ、お仕置きの時間だ」


「いやあああああああ! あたし何も悪くないもおおん!!」


 観測者が手に持っているのはビーフシチューなどをすくう銀製のおたまである。


 触手によって大股開きで空中に固定されたミジュは何をされるのかと恐怖で青ざめていた。


「ただの犬だと思ったか。愛らしい幼女だな。こいつらはバター犬だよ」


「ば、バター犬? なんでバター?」


 それはだなぁ、と言いながらおたまの中で溶かされたバターをたっぷりとミジュの胸からお腹までかけていく。


「や、やだ、ぬるぬるしてるぅ!」


 だが、それで終わるはずがなかった。合計六匹の犬たちは一斉にミジュの体に滴るバターを舐めとるため襲い掛かる。


「いやあああああああああ!! やめやめ! ぎゃあははははははははあ! やらやら舌がくすぐったいよぉ! やあああああああん! おへそ舐めちゃらめええええええ!!」


「ミジュが美味しくなるように、たっぷりと、おっぱいの先っちょがぷっくりするまでバターをかけような」


「ひやあああああああ!! だめだめそんなとこ舐めちゃらあめえええええ!! うええええええええええん!! 絆創膏はがれちゃうよぉおおおお! あああああん! びちょびちょだめええええ!!」


 観測者はバターをミジュの体に追加しながら犬の舌がぺろぺろと柔肌を蹂躙していく姿を眺めていた。


 ミジュの気にしていた絆創膏だが、中央はぷっくりと膨れ上がり、噛めば美味しそうなほど硬くなっているが、かろうじて剥がれてはいない。

 執拗にびちゃびちゃと舐められてミジュは腰をガクガクと痙攣させているが、涙目でも犬には怒れないらしい。


「おっぱいばかりでは物足りないよな。パンツにもたっぷりと、太ももまで味付けしてやる」


「みぎゃああああああああああ!! いやいやいやあああん! そこ舐めちゃらあああめえええええええ!! ひあああああん!! 太ももくしゅぐっちゃい!! べろべろやだぁ!!」


 パンツに染み込むバターまで舐めとろうと、執拗に肉厚の舌で上下にこすられるミジュはたまらず顔を真っ赤にして震えた。


「だめだめだめだめ!! 倫理の神にキレられてよおお!! ひいいん! もうやだやだ!」


「ミジュ、そろそろごめんなさいを言わないと、人生初の絶頂は、犬だぞ」


「ぎゃああああああああ!! 黒歴史過ぎる!! 待って待ってまちゅのよおおお!!」


「ごめんなさいをしないなら追加でかけようかな」


 おたまを目の前で振る観測者を睨みつけたいミジュだったが、大粒の涙がこぼれた。


「ごめんあしゃあああああいいいい!! ごべんなじゃい! ごめんなしゃい!! ワンちゃんどかしてよおおおお!! びえええええええええん!!」


 くるりとミジュの体は反転して、空中で四つん這いのような格好になった。


「にゃ、にゃに!?」


「無垢な瞳の前で情操教育に悪い光景を見せた罰だ」


 とろおりと、溶かされたバターはミジュのお尻に垂れた。


 Tバックを穿いているものだから、ミジュのお尻の頬っぺたは丸出しである。


「あにゃああああああああ!!! おしり! おしりはだめ! お尻舐めちゃダメええええ!! うわああああああん! ごめんなしゃいしたのにいいいい!!」


 さらに観測者の手には凶悪なものが握られていた。


 根元がとがったシリコン製のふわふわ尻尾である。


「ミジュ、溶かしたバターでとろみをつけて、ケツの穴にぶち込んでやろうか」


 サッと青ざめたミジュは全力で叫んだ。


「おゆるしくだしゃあああああい!! 申し訳ありましぇんでしたあああああ!!! もう子供たちの前でぐちゃぐちゃしないです! 絶対しないです! ごめんなしゃい! ごめんなしゃい! ごべんなばあああいいい!! びええええええん! 尻尾やだあああああ!!」


 くにくにと尻尾を動かす観測者は、肩を落として残念そうにしていた。


「仕方ないな。尻尾は次回にしよう」


 煙のように召喚獣は消えていく。べちょべちょのミジュは絨毯の上に転がった。


「みぎゃ!」


 観測者はしゃがみこむとミジュの頭を優しく撫でる。


「悪い子にはお仕置きだ。でも、ちゃんとごめんなさいが言える子にはご褒美だ」

「ふえ?」


 観測者は今朝ミジュが愛おしそうに触っていた白い花の花束をミジュの前に出現させた。


「もうちょっと栄養の付くもの食べないとだめだぞ」


 エネルギーは笑顔を作り出す、そういう観測者の口調は柔らかなものだった。


 明日も来るよ、また勝手に約束を取り付けると観測者は意識を本体に戻して消える。


 食堂に残されたミジュは鼻水をすすって涙を拭った。


 そして、花束を抱えると、小さな声でなによぉ、と呟き、愛おしそうに花束に顔をうずめるのだった。



☆☆☆

ここまで読んでくださりありがとうございます!

あと一話で一章は終わりです。本作は五章構成になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

また今作は長編コンテストに参加しております。


少しでも面白いと思ってくれたら♡や☆で応援してくださると嬉しいです!

よろしくお願いします(*´ω`*)

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