第4話 さぁ、お仕置きの時間だ。①触手編
「キャハハハハハ! 粉々に弾け飛びなさい!」
観測者が目を開けると海上の大型駆逐艦の上で狂咲ミジュが粉雪の舞う白髪ツインテールを揺らしながら重力魔法で船体を押し潰し、爆発させていた。
ミジュの後ろを陣取った観測者はミジュと同じく空中に浮かびながら、戦場でおとぎ話を紡いでいく天使の姿を見つめていた。
「撃て! 撃て!」
「化け物を撃ち落とせ!」
国連の船員たちは重機関銃やガトリングガンを持ち出してミジュの体を狙う。
しかし、ひらりひらりと蝶のように舞うミジュに弾丸は当たらない。
この世界で唯一イリスの遺伝子とリリンの因子を持つ第三世代。それが狂咲ミジュだ。
「あーらあら、あたしに当てられるとか本気で願っちゃってるのぉ? アッハハハハハ!」
二十基の大砲からレーザーガンが撃ち込まれる。爆炎と煙にまみれた船内は崩れた箇所から浸水しており、敗北は目に見えていた。
「キャッハハハハハ! 早く逃げないと溺れちゃうよぉ」
ミジュは指先を天に掲げる。指先の先端に巨大なマグマの球体が出来上がっていた。
「蒸発させてあげるわ! 感謝しなさい!」
小さな太陽と言えるほどの熱量を持った火炎魔法が船体に撃ち込まれた。瞬間──
ドゴオオオオオオオオオオオオオオッン!!!!
熱は一瞬で膨れ上がり、船体を溶かすと大爆発を起こす。海の上には火の粉が落ちていき、崩れた木片と炭となった肉体の片りんが降り注いだ。
「あーあー、つまんない。せっかく大きなおもちゃだと思ったのにぃ」
一瞬で大型駆逐艦を沈め、乗組員を全員血と灰に変えた天使はようやく観測者の方へ振り返った。
「あんた、空飛べたのねぇ」
「この姿のときだけだよ。ミジュ、会いたかった」
気持ち悪いものを見た、という感じでミジュは引きつった笑みを見せた。
「うふふ、あたしも会いたかったわよぉ、おバカさん。不意打ち狙って逃げたくせに、のこのこ帰って来るなんてよっぽど脳みそをシェイクされたいのねぇ」
「ごめんな、不意打ちを狙ったわけじゃなかったんだ。だけど、俺の部隊が起こした行動の責任は俺にある。あんなところに放置してすまなかった。風邪ひかなかったか?」
寒気を感じたのかミジュは体を抱きかかえるようにして身をよじった。
「あんたなに? 観測者よね? そのマスクの中ってもしかしてもうぐちゃぐちゃなの?」
「俺はイリスレインのところにはどこにだって行けるんだ。精神体で。本体は別の場所で眠っているよ。世界中で俺を観測するから観測者というコードネームが付けられた」
本当なのかしら、と疑うミジュは躊躇うことなく観測者に向けてレールガンを放った。
しかし、観測者の体に当たることなく光線は観測者の体を透けて遠くまで飛んでいく。
「一応、本当なのね。なによ、殺せないってこと? むっかつく、何しに来たのよ!」
「会いたかっただけだよ。朝、ミジュの笑っている姿に目を奪われた。ミジュが花に触れたとき、恋に落ちたんだ。ミジュを愛したい。ずっと、いつまでもそばに居たい」
「はああああああああああああ!?」
さすがに驚いたようでミジュは目をぱちくりさせながら口をポカンと開けていた。
しかし、やがて我に返ったようで、いつもの吊り目を流すような眼差しでミジュは笑う。
「ふうん、あんた見る目はあるのね。あたしみたいな最高の女に惚れるなんて幸せ者よぉ」
「そうだな、俺は幸せだ。きっともっと幸せになる」
「あたしが欲しくてたまらないのね、そうでしょぉ?」
「もちろんだ。ミジュが欲しい。ミジュのすべてが欲しい」
くふふ、と含み笑いを漏らすミジュは真っ白いギザギザの歯を見せながら笑った。
「だったらあんたのところのイリスレインを全員寄越しなさい。そうしたら、あんたのこともたっぷり可愛がってあげるわ」
「ああ、もちろん、ミジュにはたっぷりとお仕置きが必要だ」
「ん?」
そのとき、ミジュの背後からばっしゃああああんっと水しぶきが上がり、巨大なタコの怪獣のようなものが現れた。
「なにこいつ!?」
ミジュが振り返ったときにはいくつも伸びた触手がミジュの体に巻き付いて拘束していた。
「なによこれぇ! ぬるぬるするぅ!」
「触手だよ。ミジュはこういうの好きだろ」
「どこ情報よ! あたしは初対面よ!」
観測者は触手についてよく知っている。ミジュの足や腕や首に絡みつく触手に触れることは出来ないが透明な手でよしよしと撫でた。
「ミジュと愛し合うにはミジュの情操教育は必須。愛を知らなきゃ愛し合えない。俺がたっぷり悪い子のミジュをお仕置きして良い子のミジュに育ててやるからな」
「何言って! もう殺す! って、へにゃ!? ひあああああ!!」
触手はようやく仕事ですか、みたいな感じでミジュの太ももに絡みつき、膝の裏から足の付け根までぬるぬるとした触手で這いまわった。
「ひあああああん! やぁだぁ! これやだぁ!」
「俺はイリスの因子もリリンの因子も操れるんだ。こういう海上生物は国連も教会も手に負えなくて不法投棄したグールだよ。可哀想だから、ミジュが遊んであげような」
ぬるぬるの触手が今度はミジュの裸足の裏をれろれろおぬちょぬちょと這いずりまわっていく。
「いやあああああ! ひゃああはははははは! やらやらくすぐったい! やめれ、やああああああああああん!」
「ちなみに幼女にこんなことして大丈夫なのか、とか天の声が聞こえたかもしれないけど、何も問題ないよ。イリスレインは全員、妖精だから」
「へええあへへへ? よ、ようせ、妖精ひゃあああああ!!」
「そう、妖精。人類じゃないよ。新世代とか呼ばれているのは人類が思っていたより妖精の姿が大きかったからじゃないかな。妖精っていうのはみんなどんな姿をしていても大人なんだ」
じゅるるるとローションのような唾液を滴らせる触手はミジュのへその周りにも這いずりまわった。
「ひあああああん! うそらもん! うそちゅき! ひえあへへへへ! もうらめ! らめ! やめて! やめ! んああああはああはあはあはあああ! くちゅぐったああい!」
「倫理に抵触しない程度にいたぶってあげるよ。ああそうだ、耳の穴とかミジュは好きかな」
「ひぐっ!?」
観測者の意のままに操られた触手は細いぬるぬるをミジュの耳の形に添うようにれろれろぐちょぐちょと丁寧に中まで這いずりまわる。
「みぎゃああああああああ!! みみ! 耳らめ! 耳の中! 穴はだめ! 中ダメ! 中はいやあああああ! あああああん! もう舐めるのやあらあ!」
「中で触手の唾液をいっぱい出してあげようか」
「ぴぎゅ!?」
観測者の刺激されまくっていた性欲をここで一気に解放するかのように、ご丁寧に触手の唾液をエーテル魔力で体温まで温めていく。
「ほら、ごめんなさいは?」
「いやああ! いわない! ぜったい言わない!」
「じゃあ、中であっついのドピュドピュ出してもらおうな」
「やら! やらやらやら」
涙を浮かべて首を振るミジュは態度だけはごめんなさい許してくださいと懇願していた。
しかし、細い触手は耳の中で震えると、一気に唾液を放出する。
「いああああああああああああああああん!!! あ、ああ、中、なか、あっついのだしちゃらめえええええええ!!」
ガクガクとミジュは体を痙攣させてよだれを垂らした。
「ごめんなさいって言わないと、次は脇の下をねちょねちょと這いずりまわって、今度はミジュの可愛いおへその中にあつううい唾液をたっぷりと注いでやろう」
「ひあ、そんあ、うそ」
もはやろれつの回っていないミジュに見せつけるように、ミジュの目の前で親指ほどの大きさの触手がとろとろの唾液をたっぷりと垂れ流した。
「も、や、やだ、」
「じゃあ、許してくださいって良い子に言えるか?」
目に大粒の涙を浮かべるミジュはギザギザの歯を見せて顔を真っ赤に叫んだ。
「言うもんかあああ!!」
「よし、やってしまえ」
「ぴぎゃあああああああああああああああ!! ごめんなさあああああいいいい!!」
脇の下をくすぐられたらミジュは秒で落ちていた。
「ミジュのおへそは小さいからなぁ。中までたっぷりと注ぎ込めるかなぁ」
先端が細い触手がミジュのへそをつんつんとつつく。
「ゆった! ごめんなしゃいゆった! ひあははははははひああああはははははは! やらやらやらやら! どうじでやめてぐれないのぉおおお!! いやあああああああああん!!」
未だ脇の下ではぬるぬるした触手が這いずりまわっていた。
「まぁいいか。内臓まであっついミルクを注げばミジュも良い子になるよな」
むくむくとミジュの目の前で触手がうごめいて唾液を体温の温度まで温めていく。
「いやああああああ!! ごめんなさい! ごめんなじゃい! もうしません! ゆるじでぐだじゃい! ああああああああああああああん!!! ごべんなさあああああい!!」
しゅるしゅると触手は動きを止めて、ミジュの体を支えるだけになった。
観測者は触れられない透明な手でミジュの頭をよしよしと撫でる。
「良い子だ。ちゃんと言えたな」
「ひっぐ、いっぐ、うん」
泣き過ぎてミジュの目は赤く腫れ、吊り目も垂れ下がっていた。
「ミジュを愛しているよ。ミジュはどんな男が好き?」
「ひっぐ、うぅ、いじめ、なくて、いっぐ、すぐ、おとなしく、ぐす、死ぬやつ」
「ちょっとだけ改善されてて良い子だぞ。俺は教育には自信があるんだ。三年も指導者をやっていたからな」
鼻水を垂らして泣きじゃくるミジュは何かを言いたそうだったが、すべて泣き声に変わっていた。
「また来るよ、今日中でも会いに来る。約束だ」
勝手に約束を取り付ける観測者に一言モノ申したいとミジュが鼻をすすった。
「あ、あんた、教会が作り出そうとしている第四世代の秘密を探りに来たんでしょうけど、無駄よ! あんたの弱小チームじゃ教会の深部までたどり着けない! 絶対にひははは……はぁはぁはぁ」
高笑いで力尽きたミジュはその場で気を失った。
観測者は第四世代とはなんの話なのかよくわからずに、愛おしいミジュのつむじにキスを落とす。
「ミジュ、俺は君の幸せに笑う姿が見たい。それだけだ」
囁きを残すと意識を自室へと戻していった。
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