第3話 上司もエロい系お姉さま
上空から見ると鉄製の高い壁に囲まれた円形の一大都市が施設の場所だ。
高層ビルが建ち並んでいるように見えるが、すべて魔導ミサイル搭載の攻勢シェルターである。
居住区はすべて地下にある。イリスレインたちが人工の太陽を作り出すことも出来るので、地下の施設といっても、庭や公園などは野外の昼間と同じように明るい。
輸送機は攻勢シェルターの網目を縫うように隠されたヘリポートへと着陸させた。
高速移動するエレベーターは横にも婉曲にも動く。それぞれエレベーターで行きたい階層の行きたいエリアを指定して、エレベーターを乗り継いで移動していた。
施設に戻った観測者は上司の部屋へ向かった。
エレベーターを降りると赤茶色の落ち着いた色合いの廊下を中央の柱に沿って回るように進んでいく。
木製の扉には銀のプレートで中央ホールと書かれていた。
扉の横の指紋認証で扉を開けると、ホールというだけあってコンサートホールのように広い場所が現れる。
奥の巨大なスクリーンに向かって半円の円卓が置かれていた。
真っ白な壁と壁に備え付けられたスクリーン。
スクリーンでは情報がマルチタスクで展開されている。
円卓で優雅に紅茶のカップを持ち上げて、観測者を待っていたのは白衣を着た藍色のロングヘアーのイリスレイン、神崎イノリだ。
施設では通称、議長と呼ばれている。
「今回もお手柄だったようだね、観測者」
イノリはイリスレインの中でもお姉さんタイプだ。見た目の年齢は二十代前半。
黒いシャツと黒のタイトスカートがよく似合っている。おっぱいはGカップ。
組まれた足にはベージュのストッキングを穿いており、引き締まった足をより美しく見せていた。
切れ長の瞳と口許のほくろがエロいと月のフクロウのメンバーはイノリを評する。
「任務中にイレギュラーな事態が発生。戦争孤児を見つけたのは国連も同時だったようだ」
「知っているよ。だから君を急がせた。君のところのチームならこの程度やり遂げると信じていたからね」
観測者は軽く頭を振った。過剰に期待されても困ると告げる。
「月のフクロウはまだ予備部隊だ。成長を待つ必要がある」
「実戦経験ほど成長につながる教材もないだろう」
イノリの言うことも一理ある。ひとまず観測者は言葉を収めた。
「イリス教会にも情報が漏れていたか、あるいは戦場のフェアリーテイルの単独行動か。判断は議長に任せるが、国連の聖騎士団を駆逐したのは狂咲ミジュだ」
イノリは心底驚いたようで紅茶のカップからリップの光る唇を離すと、呆けた顔を見せた。
「君たち、よく生きて帰ってこれたな」
「中和剤を撃ち込んだ。逃げてきただけだ」
感心したようにイノリは頷く。
「そうか。他には?」
「報告は以上だ」
観測者の報告を聞き終えたイノリは円卓の上に用意していた青いファイルを観測者に渡した。
「教会に不穏な動きがあるらしい。リリンのマナを大量に集めているとか。連中はまたデカい戦争を引き起こすつもりかもしれん。なるべく教会には近付くな。我々の目的はあくまでも仲介人だ」
観測者は特に返事もせずにファイルの内容を読み込んでいく。
やがてファイルを閉じるとイノリに返した。
「了解した。月のフクロウのメンバーには適切な成長を促す」
「まぁ、お勉強も大事なんだがね。君はもうちょっと彼女たちと打ち解けたらどうだ? 【冷淡なドゼ】」
「俺の名前に余計な修飾語を付けないでくれ。そうでなくても名前で呼ばれるのは好きじゃない。他に用が無いなら任務を遂行する」
やれやれ、というオーバーなリアクションとイノリの大げさなため息を置き去りにして観測者はホールから立ち去った。
そこまでして急ぐ観測者は可及的速やかに任務を遂行する真面目な教官かと思いきや、真っ直ぐ自室に戻って目を閉じていた。
ようやく見つけた天使に会いに行くために。
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