第46話 400%悪質タックル



「人の悲鳴が、絶望が、怒りが、憎しみが俺に力を与える」


 でっかい争いが起こり、マイナスエネルギーが満ち満ちているせいか体はセラピー、魔力はドバドバという凄まじい状態になっております。

 気分はスーパー銭湯を回遊している気分でございます。

 闇属性様様ですね。


『人の子よ。生きとし生きるものに危機が訪れています。魂の契約を結びます』


 なんか光の塊みたいなの──おそらくこの鎧についている精霊みたいなのが干渉をかけてきています。

 鎧の仕様が俺用に変更されていくのがなぜかわかります。

 とりま『障壁』と『光速化』をかけるといきなり200%悪質タックルの倍はありそうなスピードまで加速し始めました。

 速すぎてソニックブームのようなものが起きているのか、鎧が視界に入ると思うと爆発して消えていきます。

 なんかよくわかりませんが絶好調なので極大魔法もばら撒きまくって進みたいと思います。


 ──


『聖騎士達の導きにより、『預言』に基づいた聖戦を行わねばならぬ。切り捨てさせてもらうぞ下郎ども』


『ギルドから報奨金が出るってことだからな。すまねえな』


 豚野郎親衛隊──モブ娘ことメイベル達は聖騎士、国王の呼びかけで現れた王都内の貴族達や報奨金目当ての傭兵、魔族の戦艦による急襲を受け状況は最悪と言ってもよかった。

 普通ならば絶望するところではあるが、彼女達はこの必死の状況でも絶望していなかった。


「絶望の中でもスラン様が示してくださった光が私を導いて下さる」


 かつて絶望的な状況でスランに救われた記憶があったからだ。

 絶望的な状況でも人にはそれを打つ破る力があるとスランが教えてくれていたからだった。

 打ち破れるとわかっているのならばここでやらなければいけない最適解は明確だった。

 勇気と確固たる意志を持って絶望を打ち破るのみ。


 裂帛の気合いを込めて押し寄せる鎧の波に向けて、伝来の鎧である『珠玉』で立ち向かう。

 他の親衛隊員も同じ意気のようでそれに続いていく、数の利も質の利も押し寄せる鎧の方が上だったが、皆怯んではいなかった。

 圧倒的な戦力差があったが奇跡的にそのまま押し潰されずに耐えた。


『ええい! しぶとい! 道理も弁えん愚か者どもが!』


 業を煮やしたのか、聖騎士達が味方を巻き込みつつ魔法を乱射し始めた。

 メイベルの鎧も被弾し、左腕が飛ばされると続いて胴体に魔法がぶつかり地を転がっていく。

 各部から警告が表示され、自身も額から血を流していたがメイベルは立ち上がる。


「せめて長距離兵器を破壊するまでは。スラン様のお力に」


『死んだ人間にまだ忠義を持つとは阿呆め! そんなに恋しければ主人の元に行かせてやろう間抜けが!』


 聖騎士の声が響き、メイベルにトドメが刺されるかと思われた瞬間、黄金の輝きがその場に居た全員の視界を奪った。


『何だ?』『目が!目があああ!』


「あの光は……」


 人々の危機に現れ、光明をもたらすもの。

 あり方がスランに似ていた。

 スランの姿を光に見てとると教会の元から極光が放たれ、ぶつかるがまるで光を避けるように放射状に散っていく。

 ドス黒い絶望にも塗りつぶされない光。


「スラン様」


 あの光をスランだと同定すると光が争いを始めた鎧の尽くを破壊し、軌跡となって向かってくるのが見えた。

 メイベルは気づくと周りの鎧が全てが破壊され、自分が優しい光の中に包まれていると感じた。


「あなた様こそが私たちの光……」


 スランの存在を感じ、安堵すると魔力と力が抜けていき、メイベルは意識を手放した。


 ──


「これほどまでに愚かとは」


 現王──自身の父が国民を地獄に突き落とす様を見てシアは絶望する。

 国民全てに戦えと王命を出すなど。

 たとえ何かの干渉があったとしても絶対にしてはならないことだ。

 王からの命令を無視することは、お家取り潰しや最悪極刑にもつながる。

 だからこうして現王が直接命令を出したことは国民自身やその家族を人質にとることと同じことなのだ。

 国民はたとえ国の滅びに繋がると分かっていても従わざるを得ない。


「魔族がまだ潤沢に残ってるこの状態で総力戦など行えば、勝ったとしても国として立ち行かなくなるというのに。何ということを」


 一人の愚王によって王国が崩壊することが決定した。

「まさか自分の不利益になることはしないだろう」と甘く見積もっていた自分の落ち度だった。

 だがここからもはやどうすることもできるわけもない。

 唯一撤回できる現王はもはや考える脳さえ持たず、こちらの言葉に耳を貸すはずがないのだから。


「こんなことで王国が。民が」


 シアが絶望に頽れそうになると黄金の光が目を焼いた。


「王の色が世界に溢れて……。何が?」


 突然の輝きに驚くと教会から放たれた極光が黄金の光の前に頭を垂れる姿が見えた。

 王たる者の姿を体現しているような光だった。


「スラン?」


 なぜか死んだはずのスランの姿が脳裏に浮かぶと、王たる色をした光は人族魔族の全ての鎧を打ち壊しつつも、バリアで保護するという慈愛の心を見せ始めた。

 その姿は人の悪を包み込めるほどの優しさと強さを兼ね備えた『真の王』の姿を体現していた。


「スラン貴方こそが『真の王』だったのですね」


 シアがそう確信すると圧倒的な強さによって一瞬にして争いを行う王国と魔族の全軍を滅ぼした『真の王』は再び飛んできた極光を放射状に拡散して跳ね返し、王城を木っ端微塵に破壊すると、そのまま極光の出所である大聖堂に突進──400%悪質タックルをして救聖砲ごと大聖堂をバラバラに弾け飛ばした。


  ───


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