第38話 豚野郎危機一髪



 宿泊施設と言っても、俺のところのようなクソデカ高層ホテルのような感じではなく、でっかい宿屋のような感じです。

 学園の大半の生徒はこっちに泊まるのが普通なのでしょう。


「今日はありがとね」


「気にしなくていい。お前に貸した分の金は回収したし、お前が賭けて勝っただけだしな。それよりもこれを受け取れ」


 ロロナの部屋に案内されたので忘れないうちに先ほどもらった金貨袋を渡します。


「ああいいよ。これ。別にお金が欲しくてギャンブルしてるわけじゃないし。大金を賭けるヒリつく感じが好きなだけだから」


 ロロナが金貨袋をそのままリバースしてくれました。

 金が目的じゃなくてがギャンブル自体が目的とはガチ目のギャンブラーの方なんですね。

 まあ丸々くれるというのなら貰っときましょう。

 あのカジノなんかオーナー逮捕されそうだし、ロロナの借金もチャラになってそうですしね。


「それよりもさあ、なんかあたしにして欲しいことない?」


 ラッキーですねと思っているとロロナが耳元で甘い声音で囁いて来ました。

 パパ活の匂いがします。

 そういえばこの人俺にくれるのはいいですが現在所持金ゼロですからね。

 ギャンブラーとしての意地として賭けで手に入れた神聖な金は受け取れないけど、金は必要なのでとりまパパ活といったところでしょうか。

 体が万全ならゴーしてもよろしかったですが、この体魔法抜きで動くと死を覚悟するレベルでクソしんどくなるのでできないんですよね。

 それに代わりに聞いておきたいことがありますし。


「貴様のことが知りたい」


「あたしのこと? ふーん。 あたしの何が知りたいの?」


 豚野郎の口調って相変わらずデーモン閣下みたいだなと思いながら尋ねるとロロナが首に手を回してきてそう返してくる。

 何が知りたいっていかにも怪しい親御さんのことですよ。

 なんかあからさまな弱点とかないんですか、実は生命維持装置をつけてて、それがないと生きられないとか。

 部屋の奥の斧に触れたら、マグマにドボンして倒せるとか。

 前地味にギリギリだったのでできれば直接対決せずにサラッと確実に始末したいんですよね。

 俺は元の世界では一般人なので危険に晒されたくないですし。


「全部といいたいところだが、それでは漠然としすぎて答えづらいか。当たり障りのない家族とかからはどうだ?」


「焦らすね。あたしん家は変わってるから冷めちゃうかもしれないけど知りたいならしょうがないな。ウチはパパって呼べって言ってくる変わり者の姉ちゃんが一人だけ。仕事しながらずっと世話焼いてくれてるんだ」


 はいヘイコラして聞いたら、ファラスっぽいのが出て来ました。

 ご本人から言ったこととプロフィールが若干違いますが奴は嘘つきだし、どうでもいいところなのでそれはいいです。

 早く俺に生命維持装置的な楽に突ける弱点を教えてください。

 直接聞きたいですけど怪しまれてチクられるのが危険なのでいけませんね。

 もどかしいです。


「変わっているものこそ魅力的に見えるものだ。私のように特別じゃない人間からしたらな。それにしても姉上は変わっているな。パパとは。そっちの気がありそうだがこう言うことも教えてもらったのか?」


「プ! なわけないじゃん。あたしの情報網からだよこれは。うちの姉ちゃん多分やったこともないと思うよ。性格に難があるし、忙しいし」


「面倒を見てくれる姉って言うことはもう年的にとっくの昔に一度は結婚してるんはずだろ。そんなことあり得るのか?」


「ああ姉ちゃんあたしとは同い年で双子みたいなもんだから。まだ結婚には少し早いくらいだよ」


 どうでもいいところで矛盾が生じて弱点になかなか漕ぎ着けないすね。

 いやどう言うことなんですか。

 0歳で同じ赤ん坊の面倒見てたことですか?

 スーパーベービーすぎるだろあのおっさん。

 赤ん坊の時からあのわざとらしい態度とってそうですね。

 いやあ一番かわいい時期にそれはきついですよ。

 そんな赤ん坊、赤ちゃんポストにダンクシュート不可避ですよ。

 いや常識に考えれば今現在面倒見てくれてるだけで、昔は違ったってことですかね。


「ああ、面倒を見てたって言うのは最近になっててことか。それまではどうしてたんだ?」


「いや生まれた時から姉ちゃんは完璧だったから。ずっと面倒見てきてくれたよ」


 はい、ファラススーパーベービー確定です。

 どうやら赤ん坊の頃に赤ちゃんポストにダンクシュートされたようです。

 ファラスに悲しき過去ありですね。

 そんなヘビーなことになっていたら美少女に正当進化せずに、育成失敗虚言癖空気仮面おじさんになってしまうことも納得です。

 最近の子の生育環境はイレギュラーすぎておじさんついていけませんね。

 これがジェネレーションギャップってやつなんでしょうか。

 とりま周辺情報が喧しすぎて、普通の子でも名前覚えるのが手一杯気味な俺の手には追えません。

 少し強引ですが、このままだと脳がパンクするので弱点そのまま聞きに行きたいと思います。


「あー、そうなのかー。それだけ完璧だと貴様の助けとかいる弱点はない感じか?」


「助けのいる弱点はないねえ。性格なら堅物とか根に持つとかあるけど」


 はい、空気仮面の弱点は悲しき過去だけのようです。

 バトってる途中に赤ちゃんポストダンクシュートマンと言って精神的揺さぶりをかけたいと思います。


「あ、やっぱり話したら冷めてるじゃん! もー! ちょっとー!」


 あ、ちょっと! 同意なしに股間を握るのをやめなさい!

 同意なしの性行為はレ……あ! あ! あ!

 まずいです集中が途切れて魔法が途切れてます!

 性的な方じゃない方で昇天してしまいます!


 俺がくそしんどくなってきて死を覚悟すると警報のサイレンが聞こえてきて、ロロナの動きが死ぬ一歩手前で止まりました。

 危ねえ、このアマ……。

 姉妹揃って碌なもんじゃねえ。


「あ、なんか鎧戦ってるし! 危な! 急いで避難しよスラン君!」


 何が鎧危ないですか、あなたが一番危ないですよ。

 まさかイクスが暴走して九死に一生を得るとは人生わからんもんです。

 とりま有事の時は戦えで、シアからイクス捕獲しろなので『東雲』の元にゴーです。


「私は行かねばならん。貴様は避難しておけ」


 窓から飛び出して、密輸港に向かいます。



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