第37話 カジノを破壊する豚野郎


 はい、起きました。

 朝の光まぶしすぎてをしてから、外に出たいと思います。

 割と熟睡してたせいでもう昼過ぎですが、このだだ広い島でイクスを見つけろなど無理な事な上、聖騎士がローゼリンデをガードして逼迫した状況でもないので、とりあえずイクス捜索はロロナのところに行く片手間くらいでいいでしょう。

 こんな見るからに南国の島と言った場所でアクセクするのも馬鹿馬鹿しいですし。

 シチューエーションて大事ですからね。

 こんなゆったりとした状況で急ぐとしたらソーラーな大量破壊兵器とか、クソデカ人工物が大気圏から突入して来た時だけです。

 そんなもんこのゲームでは終盤に魔族と教会がお互いに密かに開発していた都市を一発で灰にできる長距離兵器──救聖砲しかないので大丈夫でしょう。

 魔族が開発完了するのは終盤で、教会が実は『預言』に記されてたからあらかじめ作ってたんですよするのも魔族側から撃たれる直前ですし。

 教会側が作成完了した時期は知りませんけど、たとえもう完成しててもあの人たちが今打つ必要性がありませんからね。

 ちなみにこれで王都(教会)と魔王城が灰になってパーティーに加えてなかったヒロインが死に、それから緊急脱出したブキギレ魔王とラストバトルに突入して教会の悪事があれやこれやと判明したりします。

 まだ終盤なんでだいぶ余裕ありますけど、今のうちに王都の外にセーフハウスとか用意した方がいいかもしれませんね。

 ここから戻ったらちょっといい物件ないか、探してみましょうかね。


 あ、ロロナのイベント発生場所であるカジノが見えて来ました。

 さてロロナがロロナ本人なのか、はたまた空気仮面なのかどうか確かめに行きましょうか。


 カジノの中に入るとよくありげなスロットとか、クソデカビンゴマシンとか、立ち並び奥の方にはジャバザハットみたいな魔族とバニーを着せられて茶を注いでいるロロナの姿が見えました。

 カジノ設備には異常はないんですが中の人がすごいことになっています。

 なんでしょうかこれは。

 明らかに借金のカタに働かされているようにしか見えません。

 本来のロロナのイベントはロロナがギャンブルしたいということでイクスから資金提供してロロナがギャンブルするというものです。

 負け続けるものの最終的に大勝ちしてロロナに提供した金額の十倍になって戻ってきて、負けても自分を信じてくれたということでロロナが更にイクスへの想いを募らせるというのがこのイベントなのですが、目の前の光景はそんな甘い光景ではなく、世知辛い社会の闇でしかありません。


「なんだこれは?」


「ああ、カジノで遊ぼうと思ったらお金なくてさ。ここお金貸してくれるて言うから借金して遊んでたら負けちゃって今ここで働かされてるんだよ。勝て倍にして返すからさ、お金貸してくれない?」


 ギャンブル漫画の最底辺の人間のようなことを言いながらロロナが金をせびってくる。

 これはファラスぽくないというか、ロロナそのものですね。

 目の前にいるのは確定ロロナです。

 この娘が勝つと知らなければ絶対貸しませんが勝つとわかっているし、好感度上げたらパパかママか呼び方がどっちかわからないですが、親御さんの弱点とかゲロってくれるかもしれないので、貸しましょう。

 まあ合計で五回負けるので、それまでは掛け値の最低額しか貸しませんが。


「わかった。受け取れ」


「お、ありがと」


「グハハハ! 金をドブに落としたな! クズに金を貸しても戻ってくるのは無よ! どうやら人族には物を考える頭がないらしい! オーナーであるワシに全財産貢ぐがいい!」


 お金を貸したたらジャバことカジノオーナーにディスられました。

 俺には特に非はないので理不尽感が拭えません。

 どうせ碌でもない施設ですし、最後の大勝ちで俺のお小遣い全ベットして、カジノを潰してしまいましょうか。


「27番! 出ろ! 出ろ! 出ろ!」


 ゲームと同じようにビンゴルーレットからどの番号の振られた玉が出てくるか予想する賭けでロロナは27番に一点掛け全額ベッドするとガラガラとルーレットが周り、52番と書かれた玉が出てきました。


「あ〜惜しい。もうちょっとだったのに。ごめんラスイチだから」


「ほい」


「ありがと! 次は勝つ!」


 典型的なギャンブル依存症の人間の姿を見せられているので若干不安になって来ましたね。

 一応この賭け倍率の高い一点賭けじゃなくて、倍率が低くなってくる代わりに最大三つまで候補を決められるんですが、最初から一点掛けフルベッドです。

 ロロナの辞書にリスク管理という言葉は存在しないようです。

 仮面被ってセコセコリスク管理しているファラスを見習ってもらいたいですね。

 まあ最終的に勝つので大丈夫でしょうが。

 今最初の含めて二回負けたので後二回負ければ、大勝ちの時到来です。


「負けた……次は当たる!」


「また負けた……次は!」


 はい、順調に負けたのでついに運命の時が来ました。

 ロロナも完全に目がキマッており、準備万端です。


「ほほほ! 愚かなことよ! 金は来るところにしか来んのだ! ワシのようなもののところしかな!」


 オーナーも大負けする前のフリのようなことを言っておりこちらも準備万端です。

 さてお小遣い全ブッパの時間です。


「ロロナ、貴様に全てを賭ける」


「金貨袋丸ごと!? いいのこれ! じゃあ27番!」


 俺が金貨袋を渡すとロロナは全て27番に賭け、オーナーが笑い始めた。


「グホホホ! 持たざる物が夢を見よって! さて全財産はどれほどのものかの! し、白金貨!? もしや貴様ワシよりもっている人間だと言うのか! 勝たれたらワシのカジノがやられる!! ル、ルーレットを止め──」


 途中で俺の金貨袋の中身を見て、勝たれると破産することを悟ったオーナーが止めようとしますが、もう時すでに遅しで言葉の途中で27番が出ました。


「勝った! え、ちょ!」


「おのれ! こんなものイカサマだ! 優良経営を心掛けるワシになんということを! 娘を殺されたくなければここで自害しろ卑劣漢が!!」


 そのままオーナーからロロナ経由で俺にお金が来て、バイバイできるかと思ったら、オーナーが発狂してロロナを人質に取り始めました。

 反射で『風衝撃』でロロナごとオーナをぶっ飛ばすと、ロロナだけ『飛行』で浮かせて保護します。


「グアああああああ!」


 オーナーはそのままビンゴルーレットをぶつかって破壊すると気絶しました。

 咄嗟にフルオートでやったのでやってしまいましたね。

 周りはカジノオーナーの身内ばかりなので容疑をでっち上げられて暴行容疑で捕まりかねん気がします。


「スラン様、さすがです! 卑劣漢を見事!」


 さて困りましたねと思っていると、なんか知らん人がゾロゾロとやって来ました。

 俺は認知していませんが豚野郎親衛隊の方々でしょうか。

 かなり規模がデカくなってるなと思ってましたがこんなところにも居たようです。


「この不届者は憲兵団に私が引き渡して来ます!」「スラン様が受け取るはずだった報酬の一部です! 残りは私が地獄の底まで追って吐き出させます!」


 親衛隊の方々はオーナーを縛り上げるとカジノの従業員エリアに不法侵入していき、金貨袋を持ってくる。

 中身を確認するとこのゲームの中で一番価値の高い貨幣である白金貨がジャラジャラ入っています。

 とりあえず持てる分だけとってきてくれたという感ぽいですね。

 ロロナが賭けて手に入れたものなので俺のものじゃないんですが、まあ後でロロナに渡しておきましょうか。

 元は悪の道の片棒を担いで人も多いので手際がいいですね。

 とりまなんか後は全部やってくれるみたいなんで彼らに全て任せましょう。


「スラン君! あたしに賭けてくれてありがと! 今のかっこよかったよ! ねえ、今からあたしの部屋に来ない?」


 ギャンブルにボロ勝ちして、借金解消どころか億万長者になってロロナがご満悦のようで部屋に誘ってきます。

 タイマンで話をする好感度は今回ので確保できたみたいです。

 親御さんの話を聞くためについて行きましょうか。



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