第36話 聖女ストーカー救世主



 エーデはアクティヴィティをして孤島を満喫していた。

 併設された温泉施設で汗を流し、心も体もスッキリしたり宿泊施設に戻るかと思うといかにもチャラい男たち四人組が前方からこちらに向けて歩いてきた。

 なんだか嫌な予感がしつつ男たちとすれ違おうとすると、前に立ち塞がり通せんぼしてきた。


「フー!」「君可愛いね!」「俺たちここに住んでんだけど君観光できた人だよね!」「俺たちがいいとこ連れててあげるよ!」


 あからさまなナンパだった。


「間に合ってます! それに今から帰るところですし!」


 エーデがキッパリ断って、行こうとすると男の一人から手を掴まれた。


「ちょっとだけでいいからさ!」「さきちょだけでも!」「俺たちイケメンじゃん!」「頼むよ〜!」


 エロゲのチャラ男の決まり文句を言いながらしつこく絡んでくる男たちにエーデもカチンと来て、姉御肌の性分が疼き始めた。

「一発ここは懲らしめて、また他の人に迷惑をかける前に正道に戻してあげないと!」と怒りによって増幅された使命感を元に魔法を使おうと思うと穴あきグローブを付けた手に一人のチャラ男の肩が掴まれるのが見えた。


「その手を離せ」


「「「「うあああああああ!」」」」


 穴あきグローブの男の声が聞こえると思うと、男が手に持っていた太刀を納刀したまま振い、四人のチャラ男が叩きのめされた。


「ありがとうございます!」


 一瞬の出来事に驚きつつも助けられたことを悟ったエーデは礼を言うと、目の前の男がよく見知った人間であることに気づいた。

 サングラスをつけて目は見えないが赤髪にこの顔立ち間違いない。


「イクス……?」


「ローゼリンデはどこにいる?」


 問いかけるとイクスは憎悪の籠もった声でエーデにローゼリンデの場所を尋ねてきた。

 サングラス下からチラリと殺気を帯びた目が見え、反射で答えそうになる口をエーデは無理矢理塞ぐ。

 ローゼリンデに対して明確な害意を持った目。

 仔細はわからないが本能的に答えてはいけないことがわかった。


「答える気がないのか。ならいい」


「おい、何油売ってるんだ! 離れるな!」


 イクスは少し離れた場所にいる魔族三人組に声をかけられるとそのまま去っていた。


「ローゼリンデに伝えなきゃ」


 教会の正式な聖騎士となったイクスがなぜ魔族と一緒にいるのかわからないが、ローゼリンデに危険が迫っていることは確か。

 エーデはローゼリンデの泊まっている宿泊施設へ走って向かった。


 ──


 イクスが報告義務を反故にし、独断で動いていたことがわかりました。

 ローゼリンデ経由でシアに届いた情報からするに「ローゼリンデがー」と言っていて三人の魔族──おそらく四天王と徒党を組んでいたと言うことなので、、魔王からのお仕事で四天王と一緒に殺しに来たついでに裏切りスラッシュ村燃やしの怨恨でローゼリンデに復讐しようとしているかまたその両方が考えられます。

 シアの推測では聖女を引き込もうとしているこちらの方針に納得できずに暴走して今回の事態になった可能性が高いらしいです。

 シアはイクスに手を噛まれるんじゃないかと思ってましたが、案の定にそうなりました。

 シアが直接呼び掛ければ奴隷契約を結んでいるイクスに言うことを聞かせられると言うことで、シアが来るまでにボコって捕まえて下さいとのことです。

 今身の危険が迫っているかもしれないと言うことで聖騎士にローゼリンデは軟禁されているので大丈夫かと思うんですが、生真面目に謝らねばとか思ってイクスとバティングしないか心配です。

 イクスは一度こうと思ったら人の言葉とか聞かないタイプの人間ですから、会えば必ずローゼリンデに危害加えそうな感じですしね。

 もう夜更けで夜の街に繰り出して、イクスをハンティングするには遅い時間なので明日頑張りましょう。

 さあ100万ドルの夜景を見ながら夢の世界へ。

 zzzzzz……。


 ──


「ファラス様、お伝えしたいことが」


『何だ、ローデン? 定時報告を寄越した後に?』


「元救世主を含めた魔王の四天王がこちらに来て聖女を探しているようです」


『ほう、それは困った。そういえば最近救世主を使った拠点に対する襲撃でこちらに来るはずだった開発中の兵器と錬成炉のパーツが魔族側に流出していたからな。救世主と聖女の力を合わせて使用する長距離兵器──『救聖砲』を作っていたことがバレたか、もしくは凍結解除した『人造救世主錬成炉』の存在が気取られて救世主たちが増えて戦力が増強する前に知り得る範囲の救世主と聖女を始末しようとしているかといったところか。パーツを集めただけでは何もできんと思っていたが、まさかこの状況での最善手を打って来るとはな。『預言』の成就にはあまりにも邪魔すぎる存在だな。今の魔王は。『預言』では終盤に使うことになっているが、魔王の居城に『救聖砲』を放ち、魔王には死んでもらうしかあるまい』


「英断と存じます。ファラス様。人類を救済する『預言』の成就の障害にしかならぬ魔王など存在価値がありません。しかし、『救聖砲』には聖女と新しい救世主であるルージュの力が必要となりますが……」


『ああ、当てがあるから二人をこちらに寄越してもらう必要はない。二人には引き続きそちらにいてもらってくれ』


「承知しました。聖女を生き餌にし、必要のなくなった元救世主含めた四天王を私とルージュで討ちたいと思います」


『ああ、頼んだぞ。大変なことだとは思うがこと終わった後、無害で融通が効く新しい魔王の擁立と新四天王の確保は別の者に当たらせる。後のことは気にせずここを正念場と思って頑張ってくれ』


「は! 死力を尽くしたいと思います!」


  ────


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